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第27話 大切な文化

カエルムから1日目、一行は北にあるプロシェヴィルグに向け、岩山を歩いていた。


「はぁ…プロシェヴィルグまでの仲間なのかぁ…」


そう落胆しているドロガにクロスは励ました。


「ドロガ、離れても仲間さ!そう気に病むなよ。」


「そうだよ!プロジェヴィルグまでどれくらいかかると思ってんの!」


申し訳なさそうな顔をするフリンら3人にドロガは頼み込んだ。


「まだ、着いてきてもらうようなことにはいかねぇかな?」


「無理ぃ」


と軽く躱したフリンにマリナは笑いかけた。


「あの… 突然なのですが」


そう唐突に切り出したシエロに5人は耳を傾けた。


「私未だにドロガ様がシャドウイーターに剣を刺せた理由が分からないのですが…」


「そういや、そうだな。」


「えっ!シャドウイーターに物理攻撃を!?」


そう驚くマリナと絶句するフリンにシエロは語った。


「はい。物理攻撃が効かないシャドウイーターに剣を刺したのです。そしてシャドウイーターは苦痛に顔を歪めました。その上動きを止めたのです。」


「嘘みたいな話だな…」


「はい。私のような三級魔法使い太刀打ちできたのはそのおかげです。」


「すごいね…ドロガ。」


急に褒められたドロガは頬を赤らめた。


「そんなっ!褒めんなよ!恥ずかしいな!」


「しかし、シャドウイーターを刺すなんて離れ技、どうやったらできるんだよ?」


そう興味津々に聞いてくるフリンにドロガは答えた。


「いや、なんて言うか…こう…ハッてやってグサッと!」


「わかんねぇよ!!!」


そんな3人を横目にクロスとクルヴァは呆れていた。


「クルヴァ、うちの魔法使い足引っ張らなかったか?」


『そんなことない。むしろ彼女の活躍によって成した成功だ。』


「そうか。なら良かった。しかしあいつらあんなに盛り上がってるけどシャドウイーターってなんだ?」


『さぁ。僕も分からない。』


「とりあえず次の目的地はプロジェヴィルグだな」


『また、行列に並ぶようなことにならないといいが…』


「まぁ、あれはあれで楽しいじゃんか。」


『そうか』


3時間ほど歩いたところで今にも山から落ちそうな馬車をそしてそれを見て狼狽える男を見つけた。


「大丈夫ですか?大丈夫じゃないですよね。危険ですので下がってください!」


「あーしが魔法で持ち上げる!」


そう魔法をかけた次の瞬間、一人の人間が落ちたのを見た。


「あっ!」と声を上げた数秒後シエロがその人を抱えて浮遊してきた。


「助かったよ…ありがとう…この馬車は俺の全財産だったんだ。」


「このもうひとりの方は…」


「客だよ。」


彼に駆け寄ったシエロをクロスは止めた。


「だめだ。もう死んでる。馬車と岩山に挟まれて即死だ。」


それを見て、男は酷く落胆した。


「本当か…申し訳ないことをした…」


その場は急なゲリラ豪雨で濡らされた。


***


手頃な洞窟を見つけ雨宿りをした6人に男は言った。


「まぁ、なんだ、無料でいいから。乗れ。お礼だよ。」


「んな、無料なんて申し訳ねぇって!」


そうクロスが濁した。


「いいって。早く乗れ!俺の気が変わらないうちに乗れ!」


軽快な物言いにみなが笑いかけた。


「ほんと助かります!」


そして6人は馬車に乗ってまた、走り出した。


「おっさん、名前は?」


「オズゾーだ。あんたら名は?」


そう聞くオズゾーにドロガは全員の名を答えた。


「そうか。ドロガ…道か。いい名前だな。」


そしてオズゾーはドロガ達に目的地を聞いた。


「プロジェヴィルグさ!そこまで行けるか?」


「もちろんだ。行こう!ただ、プロシェヴィルグへ行く過程でポーコ市国を通らなくてはならない。あの国は領土の……」


一方クロスとフリンは今までの道のりを話していた。


「こう、乗合馬車に乗ると出会った頃を思い出すな。」


そう言うクロスにフリンは言った。


「あぁ。そうだな。あの時はまだ、お前たちとこんなに仲良くなるとは思わなかったよ。」


「そうだな。俺たちはこういう運命なのかもしれないな。」


「クロス、お前そんなこと言うタイプだっけ?」


「たまには浸りたい時もあるんだ。茶々を入れてくれるなよ。」


「そうか。悪かったな」


***


「さぁ、今日はここでキャンプとしよう。キャンプ道具は…」


そう言いかけたオズゾーにシエロは悦に浸った顔で「うちのヴィラキャンプを使いましょっ?」と言った。


「ヴィラキャンプ?」


そしてオズゾーは中に入って驚愕した。


「すげぇ!こんなテントの中がこんなに豪邸だとは!」


「まぁ豪邸と言っても1部屋ですが…」


「いや、すげぇさ!こんな魔法道具見たことねぇ。」


「値が張ったんだぜ?最高のテントだろう?」


『うちのシエロが見つけたんだ』


「お前たち、ありがとうな!最悪な野営になるところだった。」


その夜、ヴィラキャンプの前で火を焚いてるクロスに眠い目をこすりながらシエロが出てきた。


「何してるんですか…?こんな夜中に」


「見たらわかるだろ。マシュマロ焼いてんの。」


「私もご一緒していいですか?」


「あぁ。良いけどあげねぇぞ?」


くすりと笑ったシエロは語り始めた。


「ドロガ様とタッグを組んだ時、彼はシャドウイーターに恐れひとつなく飛び込んでいきました。私には到底できない勇敢な行動でした。」


「そうか。」


「正直最初は苦手だったんです。底抜けに明るい、私たちのパーティに居なかった存在だから。」


そして交錯する感情を抑えるかのように思い切り空気を吸ってまた話し始めた。


「私なんかを気にかけてくださる余裕を持った人だと気づきました。」


冷える夜にぱちぱちと音を出す焚き火とにマシュマロを溶かすクロスはシエロを見つめた。

ラン

「余裕は強さに直結します。彼の余裕は私がいちばん欲しいものなのです。」


「うちのリーダーをなんぱする気か?」


「いえ。フリン様と違ってそんなことはしないので安心してください。」


「ははっシエロがそんなこと言うとはな。」


「そんな笑うことないじゃないですか!」


「気分がいい。マシュマロ分けてやるよ。」


その時だった。


「このマシュマロ美味そうだな!焼いてみるか!」


そう叫んだのはマシュマロだった。


「なっ!なんだこれ!」


飛び出して走っていった


「え……マシュマロが逃げてった………」


「んなことあるかよ。」


「多分、話していた内容はクロス様が話しそうな口調でした。」


「なんだよ。俺の真似してるってことか?」


「えぇ、何か魔力が込められているのかも……」


「「「「「「「マシュマロが逃げてったー」」」」」」」


袋からマシュマロが一気に飛び出してきた。


「なんだこれ!」


「皆さん起こしますか!?」


「いや、大丈夫だ。おれたちで何とかしよう。」


「あれ?クロス様?一体どこに…」


***


翌朝…


「なんだ?こいつがクロス?」


「はい…魔力の籠ったマシュマロを食べてしまい、この有様で……」


そう言うシエロの手の上に乗っているのはリスに変えられたクロスだった。


「姿だけだ。いつも通りだと思ってくれ。」


そこにフリンが「いや、無理だろ」と突っ込んだ。


「でもこんな可愛いクロス初めてだね〜」


とクロスを撫でるマリナにクロスはあからさまに嫌な顔をした。


「さて。行こうか!」


みながオズゾーの馬車に乗って、また進んでいくのだった。


「次にここらの国の中に比べて小さな国がある。そこに一度寄ろう。」


「小さい?」


「あぁ。北方の方だと小さな国が沢山あるんだ。」


しばらく馬車を走らせ、岩山を抜けるとエルトライゼ高原の見晴らしのよさが際立ち、ポーコ市国は既にすぐそこだった。それは6人の心を踊らせた。


「ねぇ、ポーコ市国ってどういう国なの?」


疑問を呈するマリナにオズゾーは答えた。


「極めて小さな国だ。何百年も前から塀に囲まれていて詳しくは分からんが平和な国だぜ。」


「塀に囲まれてるってけ向こう危ないんじゃないか?」


そつ問うクロスにフリンが答えた。


「囲まれているということは、それだけ大切に守られてきた文化があるということじゃないか?箱を開ける前のワクワク感がするな。まぁ、リスには多少危険だろうがな」


「ざけんなよ。」


クロスはフリンを蹴ったが、フリンはびくりともしなかった。


「蚊の方が痛いぜ?」


「お前後でほんとに殺すからな。」


「おぉ怖い怖い!」


「もう着くぞ!ポーコ市国」


「おお!早かったな!1日じゃねえか!」


「北方の方では国々が密集しているからな。南だとスッカスカだろう?」


***


小さな森に入った一行はバシャバシャバシャバシャという音に目を向けた。


「滝だぁ!」


「川だ!」


『水だ!』


テンションの上がったドロガとクロスとクルヴァは馬車を飛び降り、川に向かって走り出した。


「はぁ…ガキだな。ほんと」


そう呆れたフリンにマリナは笑った。


「フリン様!見てください!私の石を丸くする魔法で真ん丸な石を作りました!」


「あぁ。そうだな。すごいすごい」


そう軽く躱すフリンにマリナは食いついた。


「すごいじゃん!シエロちゃん!その魔法教えてよ!」


「はぁ……なんでこんなに馬鹿ばっかりなんだ……」


そうフリンは溜息をついた。 ひ


そこにフリンに一筋の水鉄砲が飛んできた。


「うおっ!テメェ何しやがる!」


「フリン!水浴びでもしようぜ!シエロが水を暖かくする魔法!かけてくれたんだ!」


「わーった。今行くよ…」


そう声を張ったフリンは上着を脱いで呟いた。


「ほんと馬鹿だよ………。でもいい仲間だ。」


そしてドロガはシエロに駆け寄った。


「石を️薄い丸にはできねぇのか?」


「できますよ!」


「お、ありがとう!」


ドロガが振りかぶって投げると4回バウンドした。


『だめだ。見ておけ』


今度はクルヴァが投げ入れた。


「すげぇ!6回かよ!やべえ!」


そしてドロガの肩に乗ったクロスは「くっそ……俺はもっとできるぞ!」と叫んだ。


「じゃぁ、やってみろよ。できないだろうけど〜」


『リスのクセに生意気だぞ』


そう煽るドロガとクルヴァにクロスは舌打ちした。


「戻ったらその首掻っ切ってやるからな。」


「おい、まだ俺がやってねぇぞ!」


そう出てきたフリンはシエロから石をもらい思い切り投げた。それはとんとんとんとん…と跳ねながら8回バウンドした。


「「「すげぇ!」」」


「本気を出せば、こんな芸当もできる。」


わいわいやる3人にクロスは不貞腐れた。


「なぁ、マリナ。俺が人間に戻った時までにあいつらを殺す魔法を教えてくれ。」


「そんなの無理だよ。」


そしてマリナなシエロに問いた。


「でもシエロは出会った時や戦闘の時、魔力察知にほとんどひっかからなかった。やっぱり抑えてたりする?」


「はい。抑え込むのは一級魔法使い以上のやる離れ技ですが、教えて貰ったのです。学窓に入る前の師匠に。」


「一級魔法使い!?あーしもアルタンもそんなすごいことしてたんだ…」


「ええ。ちなみに現在特級魔法使いは4人います。その中で、推薦を受けた特級魔法使いのひとりが次の次期大魔法使いになれるのです。」


「ちょっと待ってよ話に追いつけないよ!」


そう慌てふためくマリナにシエロは言った。


「まぁ、あれは感覚でどうにかするものなので、センスがあれば数年でできるようになりますよ。」


「そんなもんなの…?」


「えぇ。でもマリナ様は常に抑えていらしゃいますよね。それはセンスでは片付けられません。どうかしています。」


「そんな言い方ないでしょ!」


と笑うマリナにシエロもつられて笑った。


それらを見物していたオズゾーは「もうすぐ着くというのになぜ待てないのか。」と、ため息を着いた。



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