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第19話 ヴィラキャンプ

パズブランカに到着した翌日、


「おい!フリン、クルヴァ借りるぜ〜」


そう陽気に言うクロスにフリンは半分呆れたようだった。


「はぁ…勝手にしろ。」


「よし!行こうぜ、ドロガ、クルヴァ!」


「おう!」


ため息をついたその瞬間瞬く間もなくマリナがシエロを連れてきた。


「フリン!シエロちゃん借りてくね」


「もう!だから勝手にしろ!」


1人になったフリンは、冒険者ギルドに足を進めた。


***


一方、ドロガ、クロス、クルヴァらは肉巻きおにぎりを見つけて食べていた。


「ここでも食えるのか〜!」


興奮気味のクロスにクルヴァはサラサラと書いた。


『まぁ、隣国だからな』


ひとくち食べたドロガは少ししてから話し始めた。


「まて。なんか味違うぞ!フロンティア境界のと味が違う!」


『まじかよ。』


「でも、ドロガの舌が馬鹿だったって可能性も…」


「ねぇよ!お前よりはいい舌持ってるぞ!」


不貞腐れるドロガをクロスは笑った。クルヴァは肩を揺らした。


「しかし、なんでもあるな。この街は。」


「あぁ、向こうに武器店があったぜ!クロスも気になるだろう?武器。」


クロスは少し止まって笑いかけて言った


「そうだな。ナイフくらい持っておいた方がいいかな。」


「クルヴァにも言われたんだろ?戦士に向いてるって。」


「あぁ。ドロガ、クルヴァ。武器選び教えてくれ。」


「おう!任せろ!」


『任せろ』


***


一方、マリナ、シエロらは魔法店に訪れていた。


「ねぇ!この魔法店は面白い魔導書やグッズがいっぱいあるらしいの!」


「面白そうですね!」


キィーっという音を出しながら扉を開けた。薄暗い店内にホビットの主人が顔を見せた。


「いらっしゃい。なにかお探しで?」


「ううん。もの見たさで。」


「そうですか、ではこちらなんてどうでしょうか?」


おもむろに店主が出してきた箱を開けるとそこには重厚な靴が入っていた。


「こちらは浮遊靴。履くと浮遊できますゆえ、時間短縮になるのです。」


「あー…あーしたち魔法使いで浮遊魔法使えるんだよね」


「あぁ、そうでしたか。でしたらこちらはどうでしょ。マジックトーチ」


「うわぁ綺麗!」


「綺麗ですね」


そこには青白く光る小さな松明があった。


「水でも消えぬ、ポケットに入れても消えず、しかし何をしても燃え移る事がない代物でございます。」


「これいいね。ロマンがある!」


「ロマン重視でしたらこちらなんてどうでしょう」


「なにこれ?」


「こちらは……」


***


6人は自然と宿に集まった。


「マリナ、そんなバッグ持ってたっけ?」


「ふふーん。いいでしょ!」


「かっけぇな!似合ってるぞ」


「あら、ありがと〜」


マリナは手をひらひらさせた。一方でシエロ、クルヴァ、フリン、クロス等はパズブランカでの体験談に話を展開していた。


「クルヴァ様はどうでしたか?」


『武器を見に行った。楽しかった。』


「そうですか!良かったです!」


「フリン様はどうでしたか?」


「俺はなギルドに行ってちょっとした情報到達だ。」


「助かります!ありがとうです!」


「なぁフリン。お前なんか、雰囲気変わった?」


唐突に言ったクロスにここぞとばかりに話し始めた。


「よく気づいたな!魔法香水アミュールミスト!かけると清潔感、自信、オーラが整う香水だ!魔法道具の露店で買ったんだぜ!」


「そうか。道理でいい香りなわけだ。」


「じゃあ、みんな。集まったな。」


唐突なフリンにみなが一瞬たじろいだ。


「なに?なんかすんの?」


そういうマリナと全員が首をかしげた


「あぁ。悪い報告とクソ悪い報告がある。」


その言葉に全員が息を飲んだ。


「まず悪い報告だが、パズブランカからドゥンケルハイトとの関係が絶たれていた。ドゥンケルハイトでクーデターが起きて治安がぶち壊れているらしい。当分ドゥンケルハイトへの扉は開くことは当分ないとのことだ。」


ドロガは酷く落胆した。


「そしてクソ悪い報告だが、ここ、パズブランカはなぜか物価がクソ高ぇ。んな上に依頼をこなす際、ギルドに手続き代として銀貨が6枚も必要だということが判明した。」


「ぼったくりだな」


そう言ったドロガに頷いて話を続けた。


「つまりだ。ここで路銀がそこを着くのを待つかプロシェヴィルクに指針を向けるかだ。」


絶望したような顔をしたドロガにフリンは続けた。


「ここは大人しくプロシェヴィルクに向かうべきだとは思わないか?」


そこにマリナも、加勢した。


「そうだよ、回り道したら真っ直ぐ進むより早かったりするよ?」


10数秒目をつぶってドロガは考えた。そして自分なりに答えを出した。


「1週間だ。1週間経ってもドゥンケルハイトへの道がなかったら諦めてプロシェヴィルクに行く。」


「わかった。じゃあ俺たちも待つ。そしてプロシェヴィルククに行くとなったら一緒に行かせてくれ。」


「なんでだよ。元々この町でわかれる手筈だろ?」


遮るクロスにフリンはドロガら3人の目を見て言った


「お前たちはもう友達だ。一緒に行きたいと思うのはダメなことか?」


「歓迎だよ!!」


そういうドロガにクロスは露骨に嫌な顔をした。


「まぁ、それもあるし、簡単な話、お前ら金ないだろ?」


3人はうっと刺さってしまった。


「俺たちは小金持ち程度の金を持ってる。お前たちの金ではここを1週間も居られない。だから俺たちが支援したい。理由は先程とおなじ、友達だからだ。」


「助かるよ。俺も歓迎する」


そういうクロスにフリンは「現金なやつだな」と笑った。


***


そして1週間がたってフリン達は宿の下の酒場で話していた。


「ドゥンケルハイトへの門開かないみたいだ。新聞でもラテオとドゥンケルハイトの国交は悪化してるみたいでこの街も危ういかもしれない。」


「そっか。じゃあ、仕方ない。プロシェヴィルクへ行こう。」


なにか投げ出したかのようなドロガは顔をしかめた。


プロシェヴィルクはドゥンケルハイトのちょうど北西にある国で、最西部には海の上に立ったかのように街が海と一体化している情景がが美しく、西部は通称”ポートロイヤル”とも呼ばれる。しかし東側にはカルテルが蔓延り、ドゥンケルハイトとは、また別の危うさがあった。


「プロシェヴィルク側への門は簡単に開けてもらえる。今すぐプロシェヴィルクへ出発しよう。」


「悪かったな大金使わしちまって」


そういうクロスにフリンは豆鉄砲を食らったような顔をして言った。


「お前そういうこと言うタイプじゃねぇだろ」


「開門!!!」


そう叫んだ衛兵の声を聞き、門はゆっくりと開いた。


「この国境沿いに1週間半歩いたところにプロシェヴィルクへ行き着きます。」


「あぁ、ありがとう」


そういうドロガに衛兵は笑いかけた。


「では、お気をつけて。」


***


一行はプロシェヴィルクへ到達するため国境沿いを進んでいくことになった。


「なぁ、クルヴァ。お前はなんでそんな強いんだ?」


唐突に聞いたクロスにクルヴァは一瞬たじろいだが紙にスラスラと書き始めた。


『負けるのが怖いからだ。』


「怖い?そりゃ弱いんじゃねぇか?」


『怖ければ怖いほど強くなれる』


「なんでだよ。」


『負けるのが怖い。仲間を失うのが怖い。そして自分が死ぬのが怖い。それが戦いの原動力になる。』


またページを破って紙にペンを走らせた。


『守るものがない奴のパンチよりも失うのが怖くてたまらない奴のパンチの方が、何倍も重くて鋭い。』


そして微笑みかけながら最後に破いた紙を見せた。


『そういう点では僕もお前も恵まれている。』


「はぁ、やっぱ強ぇやつの言うことは訳わかんねぇわ」


そう笑いながら言うクロスにクルヴァはため息を吐いた。


***


パズブランカから出発した日の夕方、一行は1時休憩することになった。


タバコを吸うクロスにシエロが近づいてきた。


「クロス様、先日のクルヴァ様との話、故意ではないのですが聞こえてしまいました。」


「ははっ、俺バカだったろう?」


「いえ。私たちでもクルヴァ様の言うことはたまに理解に苦しみます。」


「そうか。仲間でもそうなのか。」


ははっと笑いかけたクロスにシエロも微笑んだ。


「よーし!準備できたら出発するぞー!」


そう叫ぶフリンに、皆は気だるそうな返事をした。


「おきろーおきろー!」


ドロガはそう言って休憩で寝てしまったマリナをバシバシ叩いて起こした。


「あいつら行っちまうぞー。」


そういうドロガにマリナは面倒くさそうに答えた


「うるさいな…何時だと思ってんのー?」


「クロスも先に行っちまったんだよ」


頭を抑えながら起きたマリナは時計を見て落胆した。


「クロスは自分の荷物だけ持って行っちまったんだ。早く追いつかねぇと!」


「なにあいつ!さいてー!」


2人は彼らが残していった、魔法道具や、ゴミなどを集めた


「はぁ、クロスのやつなんで先いくかなぁ。ゴミもポイ捨てだし!誰が好んで掃除するかってんだれ」


不満を漏らすマリナにドロガも加勢した。


「あいつ、おれ止めたのに。」


「まじ!?止めて今これ!?ますますイカれてるわあいつ。」


「でもこの荷物マリナのカバンに入るか?」


「大丈夫!このカバンはね、どんなものでもほぼ無限にはいるの!」


「おお!すげえなそれ!」


「パズブランカの魔法店で買ったんだ〜。超高かったけど中古品だからってディスカウントしてくれたの!」


「でも重くないのか?」


「それが全然重くないの!ちょっとしたうさぎを持ってるみたい!」


「そりゃ風で吹き飛んじまいそうだな。」


「いや、ドロガくん。心配ご無用!このバッグ地面に置いたら重くなり手で持ち上げる時には軽くなる代物です」


「えぇ!いいなー!おれもほしい!くれよ!」


「だーめー魔法道具を入れるからね。」


「ちぇ。」


***


歩き始めて数時間後小さな森に入った時フリンがパタリと倒れてしまった。


「フリン様が倒れてしまったので一旦ここでキャンプをしまましょう!」


「フリンのやつだせえな」


そういうドロガにクロスは笑った。


「高原なのに森があんのな。」


「そりゃ、小さな森くらいちょこちょこあるだろ。」


5人に行き渡るような声でシエロは喋った。


「キャンプ道具はこちらで持っているのでそこで一晩過ごしましょう!」


「キャンプか…嫌だな…」

そういうシエロはクルヴァと黙々とテントを張った。


「では中へどうぞ!」


そう言われたドロガ、クロス、マリナは渋々入ったが次の瞬間その中に圧倒された。


「わぁ!!すげぇ!」


「どうなってんの!?」


「やべぇな。」


そこにはソファや机、絵画といった大広間が広がっていた。外と中を比べて入ったり出たりするドロガにシエロは笑いかけた。


「魔法道具ヴィラキャンプです!」


そう誇らしげに言ったシエロはもう既に中に入って楽しんでる3人を見てため息を着いた。


「やっぱ何回見ても圧巻だな…」


「起きたのですね。フリン様。」


「あぁ。クルヴァに運んでもらう訳にはいかんからな。」


「その際は私がフリン様を浮遊魔法で運ぶつもりでしたが。」


「お前、それ、毎回落とすやつじゃん。」


「そうですが…」


そこにドロガが大声で言った。


「おい!フリン達〜!早く入れよ、ここすげぇんだ!」


「知ってるわ!」


そう突っ込んだフリンはズカズカとヴィラキャンプに入っていった。


「頼むからなんも壊したり汚したりするなよ…?ヴィラキャンプは超高級品なんだからな。」


「そんなんどうやって買ったんだよ。」


そう言ったクロスにフリンは答えた。


「借金をしてな、ネペロの怪しい魔法店で買ったんだ。シエロがどうしても欲しいっつってな。」


「ははっ、あぁ見えて結構わがままなんだな」


「あぁ見えてってか、あいつ、お前らより年上だと思うぞ?」


「え?まじ?俺18だけど」


「あいつは22だ。」


「バリ年上じゃねぇか!」


「だよなぁ。俺も最初は16、7くらいだと思ってたぜ。」


「へぇ。だとしたら色々辻褄が合わねぇぞ?魔法学窓って何年なんだ?」


「6年だよ。年齢は問わず。身近に魔法を教えてくれる人がいないやつが金払って魔法を習う場所だ。でも借金して入って返せずに押し倒して中退とかザラにあるな。 」


「じゃあ、話が合うか…」


「お前も司祭の勉強どうしたんだよ。」


「ガキの頃にな。男でひとりで育ててくれた親父が教会でも医者でも治せない病気になったんだ。


フリンは重い話に構えた。


「その時に余命わずかで俺に司祭のあれこれを叩き込んだんだ。その後も色々あって何年も監禁されてたんだがその時もずっと司祭の本を読んでた。でも俺は助祭のまま旅に出たんだ。」


「え、お前司祭じゃねぇってことか?」


「あぁ。でもそこらの司祭よりは数倍有能だけどな。」


「あははっ言うな〜。ますますお前が欲しいよ。クロス。」


「俺は行かねぇって」


***


一方、その他4人は紅茶を飲みながら話に花を咲かせていた。


「クルヴァって本当はイケメンっぽいよね 」


「確かに。それは思った。」


「布の向こう側見たいよね。」


そういうドロガとマリナにたじろいだクルヴァを見てシエロは割に入った。


「だめです!クルヴァ様の顔の下半分は私たちでも見た事ないんです!」


「え!?ないの!?」


驚きを隠せないドロガとマリナにくらい表情で言った。


「えぇ。クルヴァ様が酷い目に合わされていた事は知っているでしょう?その時にはもう布を巻かされていたのです。クルヴァ様も、見せたくないようで。」


「そっか。じゃあ無理やり見るのはだめね。」


「イケメンだと思うんだけどな……」


『そんなことないぞ。あまり僕に期待しないでくれ』


「ごめんって」


そう笑いかけるドロガにクルヴァは不貞腐れたような目をした。


空はもうとっくにオレンジ色に染まっていた。


「そんなことより!みなさんで1杯やりませんか?」


全体に行き渡るようにシエロは声を張った。


「そうしよう!」


そうクロスの一声で全員が賛成の意を示した。

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