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第13章 ⑩ 触れられない心

第13章 ⑩ 触れられない心


「あ!買ってない!」


「え?何を?」


「煎餅。買うって約束してたから。」


「いや、通販とかあるでしょそこで買えば?」


「いや、ダメよ。彼女の家にお邪魔するのに手土産も無しに上がる気?」


ホント、妙な所には頭が回るのは不思議で仕方ない。その命を受けて宮田さんはヒカルの代わりに売店へと走り、煎餅購入しに行ってくれた。


宮田さんはその間にもハイヤーに連絡してくれたお陰で5分程で運転手さんも来てくれた。


まさに時は金なり!貴重な時間を無駄にしたくないのだろう。もはや宮田さんにとってみれば、


自分達に付き合う時間そのものこそが無駄と言って差し支えない。それが事実だ。


ちなみにその空白の五分の間に何があったのかと言うと、まず、外に縛り付けたマルを解放する。


すると案の定怒って自分に攻撃。自分は散々引っ掻き攻撃をくらい、手や顔に傷を負う羽目になった。


それでも怒りが収まらないマルをヒカルが持っていた猫のおやつをあげてご機嫌をとる始末であった。

そんな中で戻ってきた宮田さんには報復攻撃をしなかったのは今のマルの実力が関係しているだろう。つまり、今のマルでは敵わないと判断した結果だ。


乗り込んだハイヤーで買ってきてくれた煎餅を入れた紙袋を渡された自分は中身を覗く。


紙袋には全5種類の煎餅。村井のおばちゃんがくれたおまけの胡麻煎餅の影響を受け、6袋になった煎餅達がぎゅうぎゅう詰めになっては、上にはみ出ていた。


それを落とさないように気をつけて持っていると横から欲望の手が伸びてくる。


「おっと!何だよ?手土産なんだろ?ここでつまみ食いする気か?」


「チッ。バレたか。はぁーあ、3時のおやつまだなんだよね。どっか寄らない?」


ヒカルは足りないエネルギーを補給するべく近くの煎餅に手を出すなんて、余程お腹が空いてるのか。それとも食べ盛りなのかは不明だ。


そんなヒカルを注意してる自分も、さっきのお店でお昼を食べ損ねたため、こちらの胃がたまらずエネルギー補給警報を鳴らしてしまう。


「グゥー。」


「ええ?あれれ?ショウミーお腹すいてるの?本当は食べたいでしょ?」


「い、いや。まだお昼食べてないから。」


そこにヒカルが人差し指でチョン!と人の脇腹を攻撃してくる。


「ひぁ!や、やめてください。」


存外に出た可愛らしい声に味をしめたヒカルは脇腹への攻撃を仕掛けて、自分をくすぐり地獄へと誘う。もし死因に笑死があるなら、このような死に方になるだろう。


「ヒャハァハァハァ。」


と笑いで悶え苦しんでいると、


「ちょっと。お嬢様。少しお静かに。」


宮田さんから後部座席を瞥見することも無く注意が飛ぶ。


「えー。だったらどっか寄って!そうじゃないと、お腹ペコペコで、倒れちゃう。」


「それなら、そこの煎餅食べていいですよ。」


「え!本当に!だってさ、カケルも食べたら?本当はお腹空いてんでしょ?」


「ふぁあ、まあ。宮田さんが言うなら。」


するとヒカルは1番上にあった胡麻煎餅の袋を開き、中の包装から煎餅を取り出して食べようとすると、宮田さんがこちらを向いて話す。


「あ!言い忘れていましたが、車内は基本飲食禁止。なので、煎餅の一片でも落としたら罰金です。」


「ふぇ?」


齧り付いた煎餅を噛み切る前でよかった。危うく大量の破片が飛び散るところだった。


「罰金ですか?ちなみにそれはいくらほど?」


「100円ですね。」


なんだ100円なんだ。それなら普通に食べて少し落としたくらいなら、お構いなしって感じだ。それを聞いて安心して食べようとするヒカルにその一言は待ったをかけた。


「一回ではなく、一欠片100円です。私は細かいので、ミリ退位のかけらでも一つですので悪しからず。」


それを聞いたヒカルは齧った煎餅を口元から離す。しばらく唾液で一部湿潤となった煎餅を見つめた後、その煎餅を自分の口元に持ってくる。


「ショーミー食べていいよ。もったいないから。それとも舐めてふやかして食べると言う手もあるけど?」


愛しい煎餅を羨望と欲望の眼差しで見つめるヒカル。


自分はその提案にのりたいような、のれないような。食べたいのか、食べたくないのかを問われれば、どちらかと言うと食べたい。


お腹も空いているし、そのいわゆる間接‥も味わえる本来ならダブルで美味しいコンビネーションだ。


ここは、意を決して煎餅を食べるべきなのか?それとも貰うだけ貰っておくべきか?この場合舐めるのは流石にちょっと‥と逡巡していると黒い奴が動く。


「ホレ!頂き!」


ヒカルの手からマルが口で煎餅を奪い取ると、噛み砕こうとする。


「ほぉれがほこでシャンへわたねら、いだばこもへるそ!(俺がここで煎餅食べたらいっぱい溢れるぞ!)」


とマルは言っている。そもそも脳内にテレパシーで伝わるはずなのに、喋りづらいところまで表現されてくる感じの悪さは謎だ。


「待って早まってはダメよ。ミカエル。そのライスクラッカーには私の唾液と、あなたの唾液が付いた聖遺物。それを解き放てば、サマエルの怒りを買うわ!」


なんかコードネームで呼ぶとそれっぽい。


単に宮田さんに怒られるだけの事を世界壊れるくらいの勢いで話せてる凄さたるや。


しかも煎餅、いやライスクラッカーが聖遺物なってるのどういうことですか?誰か教えて!


「ほぉれはほおいがゆふせねえ!めなもとみせとやふ!(俺はこいつが許せねぇ!目にモノ見せてやる!)」


と言ったマルは煎餅を噛み砕くことが出来なかった。


歯にくっついた煎餅が見事お口にフィットしたため、噛み砕けなかったのだ。


「ほぉれをはすけ!(これを外せ!)」


と言っているマルはかなり面白く、ヒカルも大爆笑していた。もちろん写真に納めて動画も撮影しない訳はない。


フガフガ言ってるマルを放置するわけにもいかず、口に咥えた煎餅を外してやろうとするが、なかなか難しい。


「だめだな。煎餅割らないと無理だ。」


「ちょっと。それはダメ。溢れるじゃない。」


ヒカルの言う通り煎餅をここで割ると破片が飛んで大変なことになる。その結果マルはこのまま目的地までフガフガすることとなった。



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