第13章 ⑨ 触れられない心
第13章 ⑨ 触れられない心
「もちろん。忘れてませんよ!だから時間は有効活用してます!それと、今は任務中だからコードネーム、ジャンヌって呼んでね!あっと、宮田さんは‥コードネームはサマエルで!」
「わかりました。ではジャンヌ。成果報告を頂けますか?」
いや何がわかったんだ?いきなり言われて意味わかんないだろ!適応力高すぎる!しかもサマエル!普通の大人はそういうふざけたノリは回避するのが普通では?と指摘するべきところなのだろうが、ヒカルとセンス被ってたのが衝撃的だったこと。
宮田さんに突っ込むのはこの二日間から把握したパーソナリティーを考慮すると、不気味過ぎた。という二点の事由から突っ込みを入れることが出来なかった。
有り体に言うと、普通にビビりました。
腹の底で留めた声は、丘の上にでも行ってお空に飛ばすのが妥当なのだろうと自覚する。
「それならご安心を!情報ならもう手に入れちゃったもんね!」
得意げな顔で、煎餅の胡麻を頬につけるやつには説得力はない。色々と不満はあっても彼女の名誉の為にも何も言わず、頬の胡麻を取ってあげる。
すると思いのほか顔を赤らめては、俯いて恥じらいの表情を見せてくるのだから、こっちも調子が狂う。
「あ、ありがとう。ま、まあ、伝聞証拠ってやつだから、どこまで本当かはわからないけど、十分確度の高い情報だと思う。」
「ではまずそのお嬢様、いやジャンヌが得た情報からお聞かせ願いましょう。」
わざわざコードネームで言い直した宮田さんはボイスレコーダーとノートパソコンを取り出して、書紀も務めてくれるようだ。
「えっと。うちらが知ってる情報もあるけど、とりあえず全部話すね。まず村井のおばちゃんが婦人会で聞いた話によると、どうやら相田家はシングルマザーで、旦那さんは5年前くらい前に亡くなってるらしい。そしてそのお父さんが残した借金で生活が大変なこと。それもあってお母さんは水商売で働いているらしい。」
「何か凄いな。普通そんなんいきなり聞いてわかりそうもないけど。」
「うーんとね。それがどうやら結構有名な話らしいよ。何しろその借金を作った原因でね、お父さんは自殺しちゃったらしいの。」
「それは残念なことです。それで?お二人はその後こちらに引越しして来たと?」
「え?そうだよ!何で分かったの?」
「いえ、普通その様な事があってその家に留まる方が少ないと思いますので。」
「まあ、そっかぁ。まあでね、この町には1年前の四月に越してきたらしくて。でもその後も借金取りが追いかけてきて、それで色々噂話が広まっちゃった。ってことらしいよ。」
その話を聞くに益々重たい話だ。気軽に子供が首を突っ込んでいい案件ではないことは、この時点で既にハッキリしている。だからと言ってターゲットを今更変えるとかは、ないだろうなぁと思いつつも、「冷静に引き留める大人な宮田さん」に期待して視線を送ってみる。
だがしかし、あっさり見送られて不発に終わる。
「そ、それは大変だな。ちなみにお父さんの自殺の理由って?」
あーどうしてだろう。聞きたくないが、掘り下げてしまう。
「どうやら‥愛人ってやつ?かしら。おばちゃんは色恋沙汰で揉めて、慰謝料請求されてそれを闇金で返したから借金で首が回らなくなった。って言ってたけど。」
ああ、愛人で色恋沙汰‥って普通の不倫だろうが!そんなんで死なれてたまるか!ふざけるな!との怒りもあるが、それを言ったところで仕方の無いこと。一呼吸おいて冷静になる。
「で?それが苦になって旦那死んだと。おまけに新しい男はDV男で、二人とも人生はちゃめちゃってわけか?」
「そうみたい。林のおばちゃんが自治会で聞いた話によると、夜に怒号が聞こえるって一回警察も来てるらしいんだけど、それ以降は何もないから不思議は不思議って。最近じゃその男とも別れたんじゃ?なんて話してたけど。」
「そうならよいのですが。」
そうやって会話に入りつつ、パソコンの画面を見ながらキーボードを叩き続ける宮田さんは者凄い器用な人だ。
「んじゃどうするか?御守りの謎もあるから話は聞いた方がいいとは思うけど。」
「それはそうよ。本丸を攻めるための城攻めだもの。とりあえず、転校して来た同級生って体で直撃しようかと思うんだけど。サマエルとショーミーはどう思う?」
どう思うって聞くなら、ショーミーはダサいからやめた方がいいって思う。今からでも遅くない。ルシファーにしない?って思う。
「多分なんだが、その作戦に、コレを加えれば割といい線いくかも。」
内心の不満を抑えつつ、ここは本気の提案をする。あの教師に渡されたプリントを見せると、
ヒカルは、少しは見直してくれたようだ。
「え!凄いじゃん!これなら自然な感じで、お宅訪問できるし、サマエルが行政の人を演じてくれれば、百点満点だよ!」
サマエルが行政の人って‥リアルすぎて逆に断られるんじゃないかと心配だ。
それはともかく、久しぶりに自分に見せてくれたヒカルの本気の笑顔に自分は、密かにヤル気スイッチがオンになったことは極秘事項だ。
「それはいいのですが、早くしないと19時までに帰宅出来ません。ジャンヌ、ショーミー。早めの決断を。」
普通にコードネームになってるけど、何も違和感なく言える感じが本当凄い。
このショーミーだって宮田さんが言うと、本当にMI6の工作員あたりに実在しそうで、自信が出てくる。
「ならば、善は急げ。早くいきましょう!」
ヒカルがそう決めたのならそれに従わない部下はいない。自分は頷くと、宮田さんはパソコンを閉じて、移動する。
自分達もさっさと移動しようとするが、突如ヒカルが何かを思い出したように、声を出す。




