第13章 ③ 触れられない心
第13章 ③ 触れられない心
「ふぅ。間に合った。」
「おお!帰宅部の割にいい足だ。そんなカケルにご褒美だ。スマホの写真フォルダ見てみ!」
「え?」
唐突な指図であったが、割とすんなり、それはもう言われるがままに、フォルダを開くと、見知らぬ人の顔写真と、個人情報がセットに撮影されている写真が大量投入されている。
これはさすがに気が引ける。どうやらマルは、夜の学校に忍び込んで生徒の個人情報を漁ってたわけだ。
「とりあえず、全校生徒分。いやぁ。生徒数多くてやばかった。400人超えとかだったからやばいよ。よくあの時間だけで、できたと褒めて欲しいね。」
いや、おそらく時間操作の賜物だろう。それにしたって、この量をよくもまぁ撮ったものだ。
てか個人情報どうこう言ってたのに、早速反故にしたらしい。
そもそもこんなのいつ送って来たのかと、メールやSNSをチェックするが送られた形跡がない。
「あれ?これどこにも写真添付されてないけど?」
「いや、カケ‥ショーミーのスマホで直接撮ったからな。」
「え?それって自分のスマホ持ち出してたってことか?」
「そうだけど。何か問題でも?昨日はやたら通知がうるさいから通知切っといたぞ!」
通りであれだけの通知がきていたのに気づかなかった訳だ。そもそもスマホがなかったのだから気づきようがない。
「あーもう。勝手に人のスマホ持ち出すなよ!てか、こんなの見つかったらこっちが逮捕されちゃうだろ!」
「え?大丈夫だろ。権力者に揉み消して貰えば。」
さも当たり前かの様に権力者の力を借りる前提で動いているらしい。恐ろしい世の中だ。持つべきは倫理観より権力者へのコネ、らしい。
「ネコとコネ」。反対から読んでも「ネコとコネ」。別に意味はない。何となく思いついただけです。
閑話休題。
「それは無理だろ。これからはもっと霊的な何かで周囲の人が気づかないように、とかないのか?」
「えー。そんなん面倒じゃん。そもそも写真撮るのだって霊力結構使ったんだからな?少しは大目に見てくれよ!」
空中でゴロゴロと仰向けになり駄々をこねるマル。霊体化しているので、この光景が自分にだけしか見えていない。故にあまりリアクションが取れないのをいいことに、ちょくちょくネコパンチとキックを当ててくる。
霊体化してるので触覚には感じないが、視覚で感じるので、不思議な感覚だ。
まあ、確かに2時間で済ますには相当な霊力で時間操作したに違いない。
案外鬱陶しいマルの動作を差し引いても、そこには感謝するべきだろう。よって仕方なく、今回はこれで不問とすることにした。
「わかった。それで?この写真と住所の個人情報を元に、調査すればいいんだな?」
「そ!俺は、昨日は周れなかった教室とか見るから、そっちはショーミーよろしく!」
マルは霊体化したまま、飛んで行ってしまった。
自分も飛んで行きたい所だが、ポケットから取り出す類いの便利な秘密道具…は無論ないので、徒歩で地道行く。
歩きスマホはよくないので、歩きに専念したいが、地図アプリ無しでは歩けず。
チラチラと、スマホ片手に確認しながら豊富士中学校に到着する。どうやら、今日はグランドでソフトボール部と、ソフトテニス部が部活をやっている。
ついでに、体育館をフェンス越しに一瞥するも、この季節では扉も閉め切っていて、中の様子まではわからないため断念する。
それにあまり熟覧しすぎて、通報されても敵わない。
まあ、そうなったらそうなったで、思春期特有の、恋焦がれた運命の相手を待っている。とでも言い訳をつけよう。
それなら警官だって、教師だってそれ以上は詮索しまい。
それでもこの手法が通用するのは高校生までが限界だろうし、それ以上の年齢では警察のご厄介になるのは間違いない。
結局無難な策として、周辺の公園でさっきの写真を見て目星をつけることとした。
相田さんと同じクラスの女子に絞って見ると、ソフトテニス部に同じクラスの人がいる。まずはその人狙いで、その他をどうするかが、悩ましい。
恐らく練習は午前で終わると思うので、それまでにもう何人か人選するか、これから多重影分身を覚えるかの二択だ。
どちらかと言えば今後を思えば、多重影分身は悪くない。
但し世界線の違いとチャクラ量の問題からその術式は無理そうなので、無難に人選に勤しむ。
本当に山勘としか言いようがないが、何となく体育館から聞こえた室内履と体育館の床面の擦れる音から、バスケ部であると予想し、バスケ部の人もピックアップしておく。
しかしだ、よくよく考えるとすんなりとこの人達に接触できたとして、この人達にかける第一声は何と声をかけるべきだろうか。よってそこで事案検討に入ることになった。




