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第12章 ⑤ 旅は道連れ、情けをくれよ!

第12章 ⑤ 旅は道連れ、情けをくれよ!


「兵庫県。だね。」


遠い。家までが遠過ぎる。


この場合、ここから戻るには最寄りの稲荷神社を探すのがベストだが、不必要に持ってきた荷物のせいでそこまで移動する機動力もただ下りだ。


しかし現状ポジティブな要素があるとすれば、朱色の橋梁を渡れば、目の前にはきっちり久々知神社の石造の鳥居があり、奥に拝殿も見えていることだ。


この精度は間違い無くクグス神の転送術に関しては一流だと言える。気遣いは二流だが。


「とりあえず、参拝しておこうか?せっかく来たんだし。」


ヒカルの提案に同意した自分は、重いキャリーバックをひきずりながら鳥居をくぐり、参拝を済ませる。


ここはしっかりと神社の息子らしく、作法通りに行うと、境内を見て周る。といっても周るほどの敷地はないので、2、3分で終了する。


「てか、ここが久々知神社?その‥カケルの所の神社とあんまり変わんなくて落ち着くね!」


その‥という何かを思案したであろう間の後に心の中で発した言葉に対してここはお礼を言うべきか?それとも怒るべきなんだろうか?有名な神様を祀る神社が社務所もなく、常駐する神職もいない。


ようはお金もなくて、寂しいね。なのか、人が多すぎると落ち着かないが、ここは参拝客が少なく一人で黄昏れるにはもってこいだね。の方なのか?


自分はプラス思考なので、後者と捉える。


「それは確かに。ただならぬシンパシーを感じてるよ。」


そこに捜索願を出していた自分の携帯を携える奴の声がする。


「おい。残念な知らせだ。ここには摂末社に稲荷神社がない。しかも最寄り稲荷神社は徒歩2時間はかかる。9.7kmだそうだ。しかもバスも電車も遠いぞ。どうするか。」


霊体化したマルはそう言って自分のスマホを神術で浮遊させながら見せてくる。


「やっぱりマルが持ってたのか。」


スマホ本体に傷はなく、液晶画面もヒビが入っていない。それを見て安堵した自分は画面を注視する。


「ふむ、なるほど!なるほど!ってこんな所見られたらどうする!スマホが空中浮遊なんてヤバいだろうが!」


冷静に思い返すとここは精神世界ではなく、現実世界であることを思い出す。自分は慌てて浮遊するスマホをキャッチし、周囲を確認する。幸い周りには人っ子一人いない。これが幸いと言えるのかは、この後分かるが。


「ねえ。すぐに帰れないのはわかったからさ、宿を探した方がよくない?それに元々こんな大荷物で来たのは泊まる予定だったんでしょ?そしたら、まずは宿探しでしょ!」


「確かにな。元々離島で、一泊の予定だったんだが、クグス神の転移神術のお陰で泊まる予定が無くなったからな。ここいらで泊まれれば、良いが、普通の宿では保護者抜きでは泊めさせてくれないだろ。」


マルからここまで常識的な言葉が出てきて驚く。いつも保護者無しで、連れ回している誰かの言葉とは思えない。


未成年者略取誘拐っていう罪を誰かこの猫に教えてやってくれ。


あ、猫だから罪には問えないか。


しかしチャウチュール禁止命令くらいは出して貰わなくては、今後の高度知能動物の犯罪は抑止できない。真剣に法務省に投書しようかと悩ましいところだ。


「なら、民間のホテルとかじゃなくて、神社関係者の家に泊まらせて貰えないのか?ほら、マルの知り合いとかにそう言う人いないのか?」 


神社の関係者なら突然の来訪者にも、対応してくれそうな、位の高い神職が一人くらいはいそうだと、勝手に想像しただけだが。


「あ!そっか!兵庫でしょ。いるよ!泊まらせてくれる人!」


「ほう!ちなみにその人はどんな方で?」


「えーとね。誰に頼んでみる?県知事か、国会議員か。それともここの市長さんとか?私的にはここの市長とかよりも、隣の県になっちゃうけど、隣の市長さんならお会いした事あるから、頼みやすいかな。」


何と言うか。住む世界が違い過ぎる。普通はそんな人の連絡先知らないだろ。恐らく普通の中学生にそんな電話教えてくれないだろう。


「ちなみに、その方の電話番号はどうやって知ったんだ?」


「えっ?知らないけど、教えて貰えばいいじゃん。役所にかけて秘書さんに繋いで貰えば教えてくれると思うけど。」


おやおや、役所はいつから個人の電話取次をするようになったんだ?これは特権階級の横暴だ。


野党の皆さん!議会で取り上げるべき案件発生してますよ! 


「な、なるほど。賢いな。それってよくやってるのか?」


「一度だけしかやったことないけど、上手く行くと思うよ。おじいちゃんの名前を知らない人の方が少ないし。」


「さ、さすがだな。ヒカル様は。感服したよ。そしたら、宿る探しの方はヒカルに頼めるか?」


マルも権力に頼る事としたらしい。神使の力も権力者の孫の力に比べれば、大したことはないのかもしれない。



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