第11章 ④ マルのお仕事 Ⅱ
第11章 ④ マルのお仕事 Ⅱ
「それは確かにまずいかもな。まあ、熱心な信者が多いから、一人分くらい取り損ねても納得するでしょ。ウチの方がカツカツなのに、取り上げるほど、向こうさんも落ちぶれてないだろうし。」
「なぁに?何かヤバい抗争でもやってんの?丁度昨日ゴットファーザー見たとこなんだけど、やっぱりボスは真っ先に狙われるのよね。」
真面目な話にズレた視点から参加する妖精に食傷気味の小倉。
「そんなマフィア映画の抗争と同じ次元なら、黒猫の主は真っ先に撃たれるみたいですが?」
「あらあら、それは大変だな。ウチの神様は拳銃よりは拳派なんだよね。なんなら天下一武闘会で争ってもいいくらい。あ!もし参加するなら、緑色に触覚生やしてから参加するように。って言っておいてくれる?そしたら神様だって一目でわかるから。ウチの神様も天津飯のコスならギリいける気がするから!」
「そんなこと言えるなら、ここにいませんよ。相手をなんだと思ってるんですか?そんなおふざけを神々にやらせるつもりですか?」
「なんだよ。冗談に決まってるだろ?相手はうちより偉くて強いからって全部もってかれるのは癪だから、少し頂いた。それだけだろ?」
「小倉君。本当にありがとう。でもね家のことは私が何とかするよ。それにうちの家の呪縛から逃れるチャンスでもあるみたいだしね。」
そう言ってジャケットを小倉から受け取り、着直すと、スマホを取り出して何かを確認する三上。
「だとよ!そんな心配するほどの話じゃないぜ。それに、その時はアンディーンも協力よろしくな!」
「え!抗争を仲裁する第三勢力ってことかしら?それなら後で裏切るのとか無しだからね!」
「ああ、大丈夫だ。ウチのボスは死なないし、息子もいないからその展開は用意できっこないよ。」
「なら安心ね。そしたら、ネット通販の方はお願いね!私はPart2を見ないとだから!」
妖精はそそくさと奥にある部屋に消えると、今度は映画鑑賞に勤しむようだ。残された男達はこれ以上の要件は無いため、撤収を決める。
「アンディーンは忙しいみたいだから、帰るけど、お前ら別々に送り届けないといけないのかぁ。面倒だが、一人づつ戻すぞ。そうでないと、時間が進んじまうからな。どうする?どっちから帰る?」
黒猫の問いに対して小倉は
「なら、先生を先に。先生は今議会の予定ですよね?」
「ああ。よく知ってるな!しかし、小倉君も公務の予定があるんじゃないか?」
「いえ、市長は少々の遅れは許されるんです。前の来客者が長引くことは日常的なことなので。」
政治家スマイルを併用して言う小倉に対して微笑む三上。
「なら安心だね。頑張って、小倉市長。」
激励の握手と、抱擁をすると、三上は黒猫と共に消えてしまう。
5分程一人で佇んでいると、黒猫が戻ってくる。
「おう。待たせたな。市長さま。」
「少し時間を?」
「なんだ?お前は急がなくていいのか?おれの力でも、縮小できる時間幅は限界があるぞ?」
「大丈夫です。今日は来庁者の予定も議会もない。それにデスクでの公務は最悪秘書に任せても問題ないので。」
「ほほう。さすが、悪徳政治家はやることが違いますな。」
「茶化さないでください。現実問題として、どうなんです?三上悟はオオクニヌシノカミの力は得られない。そうすれば、三上家の弱体化は進む。これで、奴らの地盤を乗っとれれば、私は選挙基盤を県単位で手に入れられる。そうすれば、あなたの言ってた選挙区からでなくても済む。まさに、正々堂々と後継として、国政進出ってわけです。」
「そう簡単にはいかない。言ったろ?お前の願望はちょいと難しい。この国のトップを取るにはそれ相応の段階が必要だ。三上家は初代当主から家の繁栄を願ってきた。その力は今も続いてる。減少していっても、完全に消えるわけじゃない。それに、三上家のバックについてる組織を味方につける分離工作も進行中だ。あまり功を焦るな。」
「あなた達は、悠久の時を生きる。だが、私には限界がある。血の贖いによる障害はいつ訪れるかもわからない。そんな中で焦るな。と言われても無理なことだと思いますが?」
「わかってる。努力するよ。まあ、三上家の政治家としての繁栄は終わっても、別の形にすればいい。それなら、矛盾しないからな。まあ、期待して待っててくれ。次の補選は候補者になる準備は出来てるんだろ?」
「ええ。任期が切れるタイミングですし、党からの要請も受けました。」
「予定通りだ。おめでとう国会議員の小倉先生。」
黒猫からの祝福の言葉に靡くこともなく、目を瞑り、息を吐く小倉。
「もちろん、この後もあなたからの仕事は受けないといけないのですよね?」
「ん?それはお前次第だろ?トップを取るのか、刑務所暮らしを満喫するのか。二つに一つだ。」
右手を差し出す黒猫に小倉は手を取ると、
洞窟から消えて行った。
第11章 終わりました!
例によって個人的感想。
アンディーンは水の精霊で英語圏での呼び名で、ドイツではウンディーネと言います。
ウンディーネの語源はラテン語で「波」のundaからきているそうです。
この妖精を題材とした小説があり、その内容から物語に取り入れてみました。
ちなみにフリードリヒ・フーケという今で言うドイツ(プロイセン)の作家さんの作品です。
(完全な余談ですが、フリードリヒ・ハインリヒ・カール・ド・ラ・モッテが本名なようです。)
完全にちょこっと豆情報でした。
次章はカケル達のお話に戻って、船に乗って旅に出ます!
お楽しみに!




