第5章 ③ 仲間とナマズと?
第5章 ③ 仲間とナマズと?
「まったく。相変わらずのマッドラボだな。」
「そう?先輩達の爆竹実験や、銅と過酸化水素との化合による爆発実験。粉塵爆発実験よりは安全だとおもうけど。」
いや、爆発系多いな。そもそもよく事故になってないなと感心する。まさか、揉み消してるわけでは‥ないと思うが、一瞬不安が脳裏をよぎる。
「まあ‥そうかもな。で、本題だ。」
放課後の空き教室の椅子に座り、対面になって話し始める。
「はい、なんですか?」
「ツトメのことなんだが‥」
「ああ!あれね!凄いよね!ほら見て!」
彼女の右の薬指に小さなラピスラズリが付いた指輪が見える。紺碧色の小さな石ではあるが、その存在感は普段授業を受けていれば、先生方に否が応でも目に留まるはずの代物だ。
「これ凄いよね。ルナ君が教えてくれたんだけど、これつけてても普通の人には見えないんだって!」
嬉しそうに右手の指輪を見せてくるヒカルに、粒さにラピスラズリを観察すると、石に映りこんだ自分が吸い込まれそうなほどの不思議な力を感じる。
「あ、そうなんだ。って、それはいいよ!何でお前がツトメに参加してんだよ!てか、ルナって誰だよ!」
「えっと、どこから説明すればいいんだろ。まず、サクヤビメ様と仲良くなったじゃん?そしたら、あなたも一緒に参加するといいわ、って言われて契約した。でこれを貰ったわけ。」
何とも軽い感じ、かつ、中間省略し過ぎてないか?そんなヒカルの回答に自分は頭を抱える。
「おいマジか。わかってんのか?危険な目にあうかもしれないんだぞ!それに、わざわざツトメに参加する理由がないだろ!」
「え?理由?理由ねぇ、無いこともない!」
「じゃあ言ってみろよ!」
と言われると言いづらいらしく、口籠る。そうかと思えば
「決定事項なので撤回、返却には応じられません!」
断固として交渉に応じるつもりはない。との頑固な性格をここで遺憾なく発揮する。
「そしたらもう交渉決裂でいいわけだな?」
その言葉に不安を感じたのか一瞬躊躇いを見せたが、頭を振って迷いを振り払い、無言で「うんうん!」と頷く。
「はぁ、まあいいや。困ったらうちのばあちゃんにでも相談してくれや。まあ‥もちろん俺にも。ばあちゃんなら、札も作ってくれるし、そもそもこういうのは、ばあちゃんの専門だしな。」
どうせダメと言っても聞かないやつだ。無理やり説得するのは得策ではないことはよくわかっている。これも誰かの策略ならそいつはとんだ策士に違いない。
「ほんと!やったね!ね!ルナ!」
そう言ってヒカルは不思議な事に何もないはずの教室の床へと視線をやる。
視線の先を追うと、いつの間にかいないはずの存在が見える。ごっつい体にウルトラマリンブルー色の鼻を持ち、銀と灰色の毛並みをした犬、いや狼がそこに伏せているのが確かに見える。正確には霊体化しているようなので、やんわりとした輪郭ではあるものの間違いない。
「ええっと、その方は神使か何か?」
「ああ!紹介するの忘れてたね。彼女は神使のルナちゃん!色々わからないだろうから、ってサクヤビメ様が紹介してくれて、パートナーとして付いて貰ってるの!」
まず、その大きさに驚かされる。体高はヒカルと同じくらいか、それを越える大きさだ。体長なら優に超える。
「あなたが、カケルですか。ヒカルからは話を聞いています。私の役目はヒカルの守護とお目付け役です。サクヤビメ様からはあなたも余裕があれば、助けるように言われております。」
起き上がると飛びかかって来られそうで怖い。加えて冷静な口調で、淡々と話すルナだが、少しこちらを睨んでいる気もするのは気のせいだろうか。
それに、余裕があれば!助けてくれるらしい。何ともありがたいんだか、ありがたくないんだか。
「そうですか、それは心強い。是非ヒカルを助けてやってください。お願いします。」
「ええ、お願いされなくても私の仕事ですから。」
と言うと、今度は脳内に直接話しかけてくる。
「ヒカルは個人的にも好きな人間です。ですから、カケル。あまり他の女には目移りしないことです。私はあなたを見ていました。そしていつも見ていると思ってもらって構いません。あまり度が過ぎると、頸動脈に噛み付いて本当に三途の川を渡る事になることは‥心に留めておいてください。これは忠告です。」
何とも不気味な忠告を残し消えてしまった。いや‥これって、明白な殺人予告では?自分は男子的不可抗力による衝動さえも無くさなければ、あの世行きらしい。
あれは重力の仕業だよ!決して故意犯ではありません!自分は無実を主張します!だから誰か霊体と闘える弁護士呼んで‥以上監獄日記。
霊体は消えたのに、まだ血の気が引く思いがするのは気のせいではない。殺気は常に感じる。と言うかバリバリ監視されてる!
さっきの早川先生のこともバレバレのようだ。
しかし、ヒカルはとんでもないやつを引き当てたなと聳動させられる。
「あれ?消えちゃった。もうお休みか。ルナちゃん可愛いんだよね。毛なんてさ、もさもさしてて、あったかくて、一緒に寝るにはちょうどいいんだよね。」
お前は神使をなんだと思ってんだ。お前は猛獣ハンターなのか?抱き枕にするなんて完全に手名付けてるじゃないか。どうやったらそんな風に彼らと仲良くなるのか教えてほしいくらいだ。マルなんて今頃家で何やってんだかわかりゃしない。以上羨望。
「はぁ、お前はもののけ、の姫か?そのうち仮面つけて、小刀で戦ったりしないよな?」
「え?何それ?仮面つけて欲しいの?」
「いや、冗談だ。ヒカルは普通でいてくれ。」
「ふぅーん。まあ、いいけど。で?話はそれだけじゃないんでしょ?」
「ああ、もしヒカルがツトメをやるんなら‥一緒にやらないか?っていう話だ。」
ジーっと自分を覗き込むヒカルに思わず目線を逸らす。ヒカルに覗き込まれると心内まで見透かされそうで怖いのだ。
「ふむ。まあ、いいでしょう!どのみちそうするつもりだったし。カケルもこの前のことでわかったでしょ。みんながいた方が何でもできるってさ。」
「ああ‥そうだな。ほんとそう思うよ。ちなみにさ、その、ISNの勾玉はどこで手に入れたんだ?」
「勾玉?ああ、それならマル君が巫女さんの衣装と一緒にくれたよ。なんでもワープするのに便利だからって。」
あいつ。最初から巻き込むつもりだったんだな。ちくしょう。あいつ、元から勾玉を複数貰ってたのか。
全く気づかなかった。
「そうだったのか。それなら納得。」
「まあ、そういうことだ、納得したか?カケル!」
タイミングを見計らって来たかのように教室の窓をすり抜けて霊体のマルが現れる。
「おい!最初っからヒカルを巻き込む気だったな!」
「おいおい、せっかく出向いてやったのに、そんな怒るなよ。まあ、言ってなくて悪かったな。でもツトメに参加する事になるとまでは思ってなかったし、これは結構予想外の事態なんだ。ツトメは神との契約が必要だろ。そんなあっさりと契約してくれる神なんていないはずが‥」
「と思いきや、意外とあっさり契約してくれる親切な神様もいるんだね!」
あっけらかんと言うヒカルだが、実際そんな事態が何件もあるとは思えない。そう言うヒカルはイレギュラーな存在であることは間違いない。
「はぁ。で、わざわざここに来たのは何か意味があるんだろ?」
霊体化してるマルを引きずり下ろそうとしたがやはり霊体では掴めないようだ。
「おっと、そうだった。次の神様を決めたぞ!次の神様は…」




