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第15章 ⑥ 神と人

第15章 ⑥ 神と人


「なんですか?ここでやり合う気ですか?人生の先輩に対しての礼儀がなってないと思いますが。」


宮田さんは血を拭い、拳を作ると、霊力によって拳の周りに電気が滞留しているのがわかる。


「ちょっと!勝手に戦い始めないでください!おい!倉橋!お前も危ねぇじゃないか!右肩掠ったような気がするぞ!」


「気のせいです。本気で当てるんなら既にあの人の頭は無くなってる。君の肩もね。」


「はぁ。なら攻撃はやめてくれますか。脅しでそんなものをいちいち放たれたんでは、こちらもそれ相応の反撃をせざるを得ないので。」


拳の霊力を解除した宮田さんは、両手を上げて降参の様子を見せる。


「そうですね。私も別にやりたくてこんな事をしてるわけじゃない。ただ、始まりの書。あの原本がここにあるんですよね?それを頂きたい。こともあろうにあれをうちの会長が望んでいるのです。私はいらないって言ったんですがね。それでも支援者の言うことは聞かないわけにはいかないじゃないですか。」


始まりの書?なんのことか全くわからないが重要な物なのだろうか。聞きたくても話を差し挟む余裕がない。


「わかりました。あの本なら言ってくれればそんな強行しなくても、そのうち渡してあげたんですけどね。」


「早くお願いします。私も予定がありますので。」


宮田さんは両手を上げたまま、建物に戻ると、5分程で中庭に戻ってきた。


「これですかね。お望みの物は。」


片手を上げたまま持って来た本は、赤い背表紙で、何が書いてあるのかさっぱりわからない。見たこともない文字だ。それを受け取ると、


「ありがとうございます。では私はこれで。最後に、中森、君が参加するのは勝手だ、彼女のためにやるのもいいだろう。但し、思いを忘れるな。」


そう言い残すと、倉橋は風を巻き上げ、姿が見えなくなるとそのまま消えてしまう。


「まったく。せっかくお二人に会って話して頂こうと思って招待したのに、こんなではね。どうします?追いかけて話します?」


「ええ!てか宮田さんが呼んだんですか!」


「まあ、本当のところ、あの本の話も一緒にしたかったんですよ。」


「そうなんですね。でもやめておいて正解だと思います。言っても話聞かなそうだったし。」


「それもそうですね、私には説得や根回しは不向きです。」


「あ!あと、さっきのお願いですけど、貴方方のためにツトメをやることはできません。だけど、自分は自分の考えでやらせてもらいます。その結果、ツトメを終わらせる方向になったなら喜んでください。」


「わかりました。それで私は結構です。上司には適当に嘘をついて誤魔化しておきますから、鉢合わせたらその場に合わせてください。それと、これを。」


自分の返答に宮田さんは微笑むと、さっきは持っていなかったカバンから先程倉橋に渡した同じ本を渡してくる。


「こ、これは?さっきのと見た目同じですけど。」


「見た目は一緒なんですよ。会長さんは原本にこだわっているみたいでしたが、原本なんてないんですよ、この世には。この世界の始まりの書は全てコピーですからね。それに中身は見た人によって中身が変わるんです。面白いですよね。」


「すいません、色々わからないんですが、この本、始まりの書って言いましたっけ?何かツトメとかに関係する本なんですか?」


「ええ、その通りです。始まりの書。別名真理の書とも言う人もいる。他にも希望の書とも。色んな名前があること自体、中身が異なることの証左なんですがね。」


「んーん。その始まりの書ってのは人によって何が書いてあるんです?今開いても真っ白なページだけで何も書いてないですけど。」


ペラペラとめくってみても、特に何も書かれていない。これでは分厚い自由帳みたいなものだ。表紙に花の写真があれば、完璧だが。実際には表面はヒエログリフ(象形文字)で表題らしきものが刻印されている。


裏は?と思って裏表紙を見ると、五芒星の紋様が刻まれている。


「その書物は、真理の扉を開くのに必要なんです。内容はおおよそは真理についての答えや、始まりの大地からの軌跡だと思われます。結局、真理の世界に入っても、その書物に答えが示せなければ、真理の扉の鍵を手に入れることができない。」


「つまり、鍵ってことは、いわゆる暗証番号が出てくるんですかね?0412とか?」


「フフッ、そんな四桁の暗証番号で開くのなら苦労しませんけどね。ちなみにその数字は?」


「あ!これは誕生日です。覚え方はおいしースイーツです。」


「そうですか‥まあ、覚え方はそれぞれでいいと思いますけど‥。とにかく、全ての課題をクリアして五つの証を手に入れても、最終的に選ばれるのはこの本に出てくる答えが重要になる。その答え次第で鍵になるのか、はたまたただの本のままなのか。」


「さっき倉橋はこんなの意味ないみたいなこと言ってましたけど。」


「確かに、原本がこの世に存在しない限り、一番古いものにこだわっていても仕方ないとの考えでしょう。それについては私も同感です。何しろ原本は、真理の門番が所有しているものです。これらは全てコピー。さっき渡したのは一番古いコピーです。

そうは言っても、盗まれたら困るからこんな所に置かせて貰ってるんですけどね。本当にアペフチには感謝です。」


「ならその会長さんは何でそんなにこだわってたんですか?」


「さっきのがコピーの中ではオリジナルだからです。全ての始まりの書はあの本から始まった。それ故のこだわりでしょう。まあ、結果は同じですけど。」


「そうなんですね。まあ、自分は違いとかわからないんで、何でもいいですけど。」


「そう言って頂けるとありがたい。実を言うと、その本一冊あれば、コピーできるんです。少し貸して頂けますか?」


そう言って渡した本を再び受け取り、右手にもつ。そして霊力を込めると、左手に黄金色の輝きが現れるとそれが形となり、みるみると同じ本が現れてくる。


「どうです?案外簡単でしょ?まあ、本来ならかなりの霊力を必要としますから、簡単ではないのですが。」



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