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11、お忍びで下街へ

ようやく50話です!(●︎´▽︎`●︎)

  お忍び街探索の為に門へ行くと、男装をしたビエラが待っていた。

  オレンジ色の髪は一纏めにされ、ズボンを履き帯剣をしている。



「男装……ですか?」


「一般的に女性はワンピースかスカートとされていますが、流石にそれでは身動きが取りずらいので冒険者のていで行こうかと。お嬢様は……平民の男装をなさっているのですね?」


「その方が自由が効くと思ったのです。それに誘拐の心配も減るでしょう?」


「賢明ですね」



  この国に限らず、大抵の国で男装はズボン女性はワンピースやスカートというスタイルだ。

  例外的に女性がズボンを履くのは、騎士服の時と剣を扱う冒険者や傭兵ぐらい。

  そのため、ビエラは私服ではなく冒険者のふりをして付いてくる事にしたようだ。



「流石ビエラ、ここまでズボン姿が映える女性も少ないでしょう。とても格好いいです」


「そう……ですか?ありがとうございます」



  ビエラは照れながら目線をあらぬ方向に向け、礼を述べた。

  背けた顔も耳も赤くなっているのが丸わかりだ。



(褒められ慣れていないのね。ビエラ、可愛いところもあるじゃない)



「ビエラ、今日は私一人で行動しようと思うのです」


「おひとりで?護衛しなくてはならないのですが……」


「距離を置いてこっそり付いてきて護衛するならいいですわ。どうしても近くで張り付いて護ると言うなら付いてこないでくださいませ」


「…………わかりました。せっかくのお忍びですものね?距離を置いて護衛させていただきます」



  リリアと違いあっさりと引いてくれたビエラに若干戸惑いつつ、信じてくれているという事かなと少し嬉しくなりながら私は礼を言った。



「ありがとう、ビエラ。護衛よろしくお願いしますね」


「かしこまりましたお嬢様」


「あっ……ダメですビエラ。私は今、令嬢ではありません。お忍びがバレないようにする為にも偽名を……そうですねフィルと呼んでください」


「フィル様ですね」


「フィル!様はいりません。私……いや、僕も外ではビエラさんと呼びますね」


「そん……いえ、お忍びですからね。わかりましたフィル」


 ****


  門番をしている騎士に軽く挨拶をして門の外へ出る。


  どこも土魔法で作られた真っ白な家々が綺麗に並んでいる。

  けれど、とても寂しげに見える。



(路上にはゴミや雑草が無いどころか、草木も見当たらないわ……。人も出歩いていないし、なんだかゴーストタウンみたいな感じ……)



  公爵家の前を彷徨くなど間違いなく不審者扱いされるだろうし、そもそもレストルーチェ領地街の坂上、貴族街では馬車移動が基本だ。


  あくまで貴族街の道路は、馬車を走りやすく各家の区画をしっかり分けるためのものでしかなく、閑散としている。

  歩いて街を移動する貴族など居ないのだから人の気がなく、閑散とした道になるのは仕方のない事だ。



(邸を出る際、人目に付かないのは楽でいいですね。こんな所を歩き回っていたらあやしまれますわね。違和感の無いように速やかに下街に入らなくては!)



  私は、どうせ馬車しか通らないのだからと足に軽く身体強化をかけて少し早足で下街へ移動した。


  下街に着くと、あまりの様変わりに私は目を奪われた。


  わかりやすく区切られた石の通り道、所々にある水を撒かれたばかりのキラキラとした花壇や青々とした木々。


  上街の貴族の家々の白さだけで、人の気もなく閑散とした貴族街とは全く違う。


  下街は様々な色で溢れ人々が楽しげな声を上げながら、石造りの道を行き交っている。

  通りに並ぶ数々の店も先程見た貴族街のただ白い外見と違って私を楽しませる。


  宝飾店は、金細工で飾られた品のある外造り。

  布屋は、色とりどりの塗装がされた洒落た外観。

  鍛治、武器防具屋などは、質素堅実な石造りの外観で、雑貨屋は、壁に硝子を入れて品物と店内がよく見えるようになっている。


  私は、道を歩きながら右へ左へと視線をめぐらせて街を楽しんだ。



「すごい!とても素敵!行き交う人達も楽しそうで、どの店も個性を出していて魅力的だわっ……とと、男装してるんだった。魅力的だっ!よし」



  私はしばらく、どの店に入るわけでもなくひたすら街を歩き続けながら雰囲気を楽しんだ。



 ****


  私は大通りをひと通り回り、さらに二周回って雰囲気を味わう事に満足してから、ずっと気になっていた通りに足を向けた。



「ここから先は、また静かなんだ」



  街の途中から石畳の道ではなく土剥き出しの道になっており、そこから先は明らかに道行く人々の服がボロボロだ。

  多少のほつれや服の端が破けるくらい気にしないのだろう。

  皆、随分と着古している様子がみてとれた。



(というより……新品のものを来ている人なんて居ない。それどころか、みんな色の着いていない生成の服を着ているわ……)



  私が事前に調べた通りなら、恐らくこの先は狩人や農民、兵士などの商人以外の平民の暮らす地区。

  いわゆる下層平民の住まいのある地区だ。


  私は、何か買いたいものがあって街へ来たわけではない、街の雰囲気そのものを感じたくて来たのだ。

  その街の雰囲気の中には、平民住居区も含まれる。



  私は、石畳から土の足元に変わる変わり目を見るのに視線を下げ、自分の履いているズボンに目がついた。



(裕福な商家の者が平民居住区へ踏み入る事は無いか……。生成のボロを着ている人しかいない所に、色鮮やかな新品の服を来た人間が入り込むのはさすがに目立ちすぎるわね)



  今の私の格好で、その地区に行くのは流石に浮くだろうと思い、行きたいのは山々だったが、渋々大通りの方へと引き返そうと考えた。



(やっぱり自由に動き回るには、平民らしい服が必要ね……何とか用意出来ないかしら?)



  大通りの方へ振り向くと、心配そうに私を道行く人の間から見ているビエラが居た。



(……誰もビエラに違和感を感じないみたい。ビエラだって貴族なのに……。冒険者の振りをしているから?冒険者の服……冒険者なら、貴族街にも商店街にも出歩く。平民居住区へだって依頼があればいくらでも……)



  そこまで考えて私は、冒険者の服が……いや、冒険者そのものになりたいと思った。



(冒険者になれば、何処にでも行ける!剣も魔法も活用して活躍出来る!これ以上に私のしたいものなんてあるかしら?!)



  私は、逸る気持ちのまま、街を探索する時に見かけた冒険者ギルドへと走った。

続きを読みたい、応援したいと

思っていただけましたら

ブックマーク、評価★★★★★のほど

よろしくお願いします(´∀`*)

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