45 薬屋の弟子 変態紳士とパーティーを組む
「リーリスさん、オズヌさん、分かりマシた! 皮膚死病の予防薬なら作れマス」
「ほ、本当か?」
「ハイ、サクラ竜の中で竜種痘に感染しているヤツから予防薬の原料が取れマス! そのサクラ竜が住んでいる所ってどのあたりデスかね?」
「兄貴、予防薬の原材料を持ってきたら、街に入れて貰えるっスか?」
「ああ。それなら、明らかに皮膚死病に感染していなければ、問題ないぞ。『冒険者ギルド』にも緊急クエストを出させて貰うから、その材料の詳細を教えてくれないか?」
「ハイ、えーと『竜種痘』に罹っているサクラ竜の膿疱に含まれる『膿』や『かさぶた』デス!」
「そうか……何か、その……お前さんが薬の原料だと言い出すモノは……変なものが多いな……」
オズヌさんが気の毒そうな目で僕を見ると、しみじみと呟いた。
そこは仕方ないんじゃないかなっ!?
「しかし、サクラ竜の住処になっているのは、ウォーレンから少し西に入った『ラーラの森』の中だ。お前さん達二人だけだと、あの辺りの森は少し危険だぞ。レイニーは問題外だし、リーリスだって本来は後衛タイプだろう?」
え? リーリスさん、剣もかなり使えるじゃん?
しかし、聞けば、対ヒトならまだしも、対モンスターとなるとエルフ族自体が、前衛にはキツイのだとか。
「話は聞きましたぞぉぉぉぉッ!!!」
「「「うわぁっ!?」」」
全裸亀甲縛りの変態が、草むらから飛び出した!!
「うわぁ!」「変態が出たぞ!!」「マスクのない奴らは避難しろっ!!」「感染の可能性があるぞ!!」
兵士さん達がパッとダリスの方へ向かって駆け出す。
「ろ、ロレンさんっスか?」
「何で、また服を脱いじゃったんデスかっ!!」
着とけ、着とけ!!
「いえ、この服、リーリス殿にお借りしたままでは悪いと思い、返しに来たのですが……」
「……いや、良いっスよ、あげるっスよ……その服」
あ……リーリスさんが、なんか珍しくげっそりと疲れた顔してる……
「んんん! それより、聞きましたぞ! こう見えてワタクシ、前衛タイプ!! 特に耐性には色んな意味で自信がありますぞ!! 色んな意味で!!」
色んな意味をそんなに強調しないでください。
「そもそも、ワタクシは、多くのダメージや毒、病、呪いなどを味わい、耐性を増やすのが人生の目的ッ!! すでに複数の毒や打撃、精神攻撃等にはかなりの耐性がありますぞ!! 最終的にこの身体がお役に立てるならッ! 是非とも、その薬の材料を取りに行くのに一緒につれて行って欲しいのですぞ!」
どげしゃっ!!!
ロレンさんが、言葉を紡ぎ終わった瞬間、大型キーウィ形状オズヌさんの恐竜のような足からのハイキックが変態紳士に炸裂。
「へぶぉぉぉッ!!」
恍惚の笑顔で吹っ飛ぶロレンさん。
数バウンドして、立ち上がると、直ぐに匍匐前進のような感じでカサカサと凄い速度でオズヌさんの足元に駆け寄る。
「と、突然のご褒美ありがとうございますッ! 旦那様ッ! ハァハァ! お、お礼に、おみ足を舐めさせていただいてもよろしいですかな!?」
「いや、舐めるな。舐めるな。しかし……全裸にその雑なラッピングだけで俺の蹴りを喰らってもすぐに立ち上がれるとは……確かに、耐久力は高いようだな」
全裸に雑なラッピングって……言い得て妙だ。
「兄貴の蹴りをモロに……ロレンさん、スゴいっスね! それなら、是非とも前衛はお願いしたいっスね!」
「「「……ただし、服は着」」」「ろ!」「て欲しいっス」「てくだサイ!」
見事に三人の見解が一致した。
結局、僕とリーリスさんとロレンさんの三人は、皮膚死病の予防薬となる、竜種痘に感染しているサクラ竜を探すことになった。
まずは、手始めに、オズヌさん達と別れて向かったのは、エシル姐さんが、トリレタで指定してくれた場所だ。
ちょうど、エシル姐さんらしき女性が、大きな荷物を置き、街の中へ戻って行くところだ。
かなり遠いから、聞こえないかな? と、思ったけど、リーリスさんが「姐さん、ありがとっスー!」と叫んだら、右手を上げてくれたので、何とか聞こえたみたいだ。
彼女の姿が遠く、街の方へ消えてから、僕たちは、その荷物に近付きキャンプ用品を回収した。
しかし、数日は宿泊が必要なキャンプ道具一式にしては量が、少ない。
今、リーリスさんが持っている肩掛けカバンとさほど変わらない大きさだ。
「これは、『時空袋』っスよ。普通の袋の数十倍は入るんスよ~?」
そして、入れた物の重さはほとんど感じない程になるのだそうだ。
スゲー……そんなスゴい物が元の世界に有ったら、流通が変わるぞ。
ちなみにこれも、魔道具の一種で、リーリスさんの持っている物の中でも、一、二を争う高価な品なのだとか。
「ほほう? 立派な物ですな。大体、この『時空袋』を所持できるかどうかが、冒険者にとっては駆け出しと中堅の境で、大きな『時空袋』を持てるのが、一流の証なのですぞ!!」
「へー……そうなんデスね」
「さらにいいますと、この魔道具、持っているだけで、年間でいくらか資産税のようなものを冒険者ギルドに納めなければならないのですぞ! それが、この大きさですからな! リーリス殿は一流の冒険者なのですな!」
それはすごいな。
持ってるだけで税金がかかるなんて、元の世界だと、車とか家クラスじゃん。
「にゃはは~、いや、俺はそんなに凄くないっス。実はこれ、兄さんから借りてる物なんスよ~。」
兄さんって、あのエシル姐さんの旦那様なんだよね。
何か……もう、その事実だけで凄い人なイメージが……
「……あ、姐さん、ヘッド・ランタンにトイレの魔道具まで入れてくれたんスね。あと、レイニーにって武器も入ってるっすよ。」
おお!?
リーリスさんが取り出してくれたのは小さな3つの薬壺。
こちら、投げつけるとその衝撃で炸裂して内部の薬をまき散らす手榴弾のような使い方ができるアイテムだ。
流石『暴虐のエシル・ソフィ』直伝の魔薬だぜ……
僕でも扱いやすいように小型化されているので、数は3個しかないけど、そこそこ威力があるから気を付けて使えと指導を受けてますよ。
「ありがとうございマス。」
受け取った薬壺は、今回、ウェストポーチのようなカバンを腰につけてきたので、そちらにねじ込む。
あ、一旦、昼間に取った初秋の食材は、腰のポーチから取り出し、リーリスさんへと渡してありますよ。
「……とりあえず、今日は、ロレンさんのキャンプを回収して、進めるだけ『ラーラの森』の方に進むっス!」
「はーい!」
「かしこまりましたぞ! あ、そうだ、お二人とも……少し良いですかな?」




