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113 薬師の弟子 蘇生の秘薬


 びゅっ、ばっ、ががががっ!!


 キーウィと猫耳美女の攻防を後目に、僕は頭を押さえてふらついているリーリスさんに駆け寄った。


「リーリスさん、大丈夫デスか!? 今、薬を……」


 と、僕がエシル姐さんから貰った薬を取り出す。


「レイニー、これ……!」


 すると、リーリスさんはその薬を見るなり、蓋を開け、確認するようにニオイを嗅いだ。


「間違いないっス、これ、あにさんの薬っス!! ……これなら、アイツ、助けられるかもしれないっス!!」


 そう言って、リーリスさんが指さすのは倒れ伏すスオウさんの姿。

 なんですと!?


「レイニーの足を切った後に薄めて飲ませていたのもこの薬なんスよ!」


 そうだったんだ!?

 それは期待が持てる!


「俺はこのくらいなら全然大丈夫だから、アイツに……これを! 半分は傷口に直接かけて、残りは飲ませるんス!」


「わ、わかりマシた!!」


 シェーダさんの攻撃を頭に一発喰らってしまってふらついているリーリスさんに代わり、僕はスオウさんに向かって飛ぶ。


「先生……お願い、死なないで……」「うぅっ……こんなの嫌ぁぁぁ!!」「うわーーん、せんせぇぇぇぇ!」


 スオウさんに縋り付いて泣きじゃくる少女達。

 僕は急いで変身を解くとポーチからエシル姐さんに貰った薬を取り出す……が、彼女たちが邪魔だ。


「どいてくだサイ!! このお薬があれば、スオウさんを助けられるかもしれないんデス!」


「そもそもッ……貴女達が先生をこんな目に……!」


「まって、でも、先生が助かるなら!!」


「そうよ、先ずは治療だわ!!」


 怒りをあらわにする女の子有り、そんな彼女を止める少女有り。

 しかし、「助かるかもしれない」との希望の光(ことば)は、彼女達にとって抗いづらい魅力だったらしく、僕が近寄れるように、周りの人混みが開く。


 スオウさんのいつも隠れている右目を見れば、そこにリーリスさんの矢が突き刺さっている。

 うわ……こ、これ……もし脳まで貫通してたら……


 元の世界で、ボウガンの矢を脳に貫通させてしまったけど助かった人、というアンビリーバボな激レアケースがテレビで放送されていたけど……

あれは、レアすぎるから、番組になるのであって、普通はお陀仏なのだ。


「この矢、真っ直ぐ引き抜けマスか?」


 僕の問いかけに、顔色を真っ白にして首を振る少女達。

 ですよね……


「リーリスさんッ!!」


 僕は、オズヌさんに守られて何とか立ち上がったリーリスさんに向かって叫んだ。


「この矢、この傷の真上方向垂直に【引き寄せ】て引き抜いてもらえないデスか!?」


「了解っス!……【引き寄せ】真上垂直・俺の矢!」


 ずこぽっ……


 正確に真上に引き抜かれた矢の先端部分は血まみれな球体になっていて……

 おそらく、矢じりに引っかかって眼球が引き抜かれちゃったに違いない。


 少女達も「ひっ」とか「きゃっ」とか言って、きつく目を閉じたり、顔を背けたりしている。


 僕は、急いでスオウさんの傷口に薬を注ぎ込む。

 

 まぶたの傷が見る見るうちにふさがって行く……その奥は、流石に血が濃くてよく分からない。

 だが、存分に薬を潰れた眼球の中に注ぎ込んだから、残りの半分をスオウさんの口の中に……あれ……上手く口を開いてくれない。

 上唇と下唇を開くように引っ張っても、ダメだ。

 く……僕の身体がもっと大きくて……せめて、普通の女の子サイズだったらなぁ……!

 僕が、周りに居る女の子に声をかけようとした時だった。


「貸して……いただけるかしら?」


 わぁ!? シェ、シェーダさん!?


 突然耳元で聞こえた声に、思わずビクゥッ! と体を揺らす。


 まだ彼女の放つオーラは、人を許す雰囲気ではないけれど、それでも治療を行っている僕を叩き殺す意思は無いらしい。

 オズヌさんとも和解……とはいかなくても、休戦協定が結ばれているようだ。

 僕と目が合ったもふもふのキーウィさんが「大丈夫だ」と言わんばかりに頷く。


「あの、この薬……スオウさんに飲ませたいんデス」


「ええ……分かりましたわ」


 薬を受け取ったシェーダさんは、一切の迷いなく、その薬をガっとあおった。

 そして、そのまま、スオウさんを愛おしそうに抱きしめ、口移しで薬を飲ませて行く。


 お、おぅ……

 今の僕には、できない方法だ。


「今、先生の喉が……」「……動いた?」「うそ……ほ、ほんとに??」

「先生、先生!」「お願い、起きて、せんせぇ……」


 少女達は思い思いに、彼の手を握ったり、身体をさすったり、蘇生を促そうと必死だ。


「……っう……」


「「「先生っ!!」」」


 そんな思いに答えるように、スオウさんの口から、小さなうめき声が零れ落ちた。

 そして、徐々に胸の呼吸が大きくなり、ゆるゆるといつもの深い青色の左目に光が灯る。


「え……みんな? ……な、んで??」


「うわあああああぁぁぁぁぁぁぁんっ!!!」「だって、先生の結界が、急に消えたからぁぁぁ」「よかったよぉぉ!!」「ぜんぜぇぇぇぇ!!」「心配しましたのよっ!!」


「え? えっ?? み、みんな??」


 口々に喜びの声を上げ、スオウさんに抱きつき始める女の子の群れ。

 あ……これ、助かってすぐ死にかけるヤツだ……

 リア充め、爆発しろ。とツッコんでおくのがセオリーだろうか。

 

 その時、リーリスさんの不思議そうな声が耳に飛び込んで来た。


「あれ……これ、何っスか?」


 手元に矢を引き寄せたリーリスさんが、鏃に突き刺さっている球体を不思議そうに弄っている。

 見れば、紫色の……宝石?


 【鑑定】

 名前:特殊結界の古代魔法遺物アーティファクト

 状態:破損

 効果:なし


 えっ……!?


 まさか、スオウさんって、普段から義眼のかわりに魔道具を使っていたの!?

 片目を隠しているのは単に中二病的なファッションだとばかり思ってたよ……!

 あれえー??

 でも、あの盗み聞きしていた時は、どっかに保管されてるのを、貴族が来るから移動させておけ~、みたいなこと言ってなかった?

 でもまぁ、この魔道具のおかげで、想像よりは傷が浅かったようだし、どうやら、大脳の方にたいした損害が無かったみたいだ。

 

 その時、遠くから「おーい」と僕たちに呼びかけるような声が響く。


「あ、ポポムゥ達っス!」

 

 遠くに見える人影に手を振るリーリスさん。

 あれ? ティキさんが、何か調教士っぽいくちゃくちゃの男性を抱えてるような?

 目を凝らした瞬間、ティキさんと目が合う。

 彼女がいたずらっ子のように微笑んだ瞬間【千里眼】の能力が掻き消えた。


 そっか、もう【千里眼】は、使わなくても大丈夫だもんね。


「皆さん、ご無事みたいデス」


「よかったっスね、レイニー、これでお家に帰れるっス!」




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