学校 寮 そして、同室者はっ……
「その頼みとはなんだ?」
「中は見ていないのか……ほらっ」
王より、文書が手渡される。
俺は、すぐ中を見てみる。
「いや、これは」
「そうだろう。 読めないはずだ」
中には見たことのない文字が書かれていた。
いや、文字と呼んでもいいのかさえ怪しい。
規則性もすぐには見つからない。
もしかしたら文字じゃないのかもしれないな。
「暗号……なのか?」
「確かに、右下の勇印を見れば本人との証明になるが……この暗号を用いるほど、信頼の足るものはないな」
「中は……なんて書いているんだ」
俺は、文書を王に返して、問うた。
「レム。 お前さんを学校に通わせること。 お前さんの素性を隠してやること。 金庫に預けている金銭は全てお前さんに譲渡すること。 後は……」
「後は?」
親は、額の傷をさすりながら、聞いた。
「人としての常識がないから、気をつけろと」
「父さん……バカにしやがって」
「確かにと思う部分もあるがのう」
確かに……だと!?
「ど、どこがだ? 何かおかしなところがあったか?」
「壁を破壊し、兵士を倒しながら侵入し、姫の呪いを無理矢理……これのどこに常識人の要素がある?」
「面目次第もございません」
「よろしい。 だが、それについては謁見を断り続けたワシにも非があるからのう。 不問と致そう」
「よかった。 でもよ、警備が甘すぎるんじゃない? こんな子どもに簡単に侵入を許すなんて」
「それはお前さんがおかしいんじゃろ……そうじゃ、賢者よ」
「はい? なんでしょう」
横に立つ偉そうな男の人が受け答える。
この人が大賢者なのかな?
「お前でも解けなかったあの呪い。 解いた瞬間を見たな。 あれはどうなのか解説してもらえるか?」
「あれは……いえ、まずはレムくん。 どうやって解いたのか聞いてもいいですか?」
へ? 俺に聞くの? 理論とかちょっとわからないけどなぁ。
「あれは、自分の魔力と呪いを接続して、腕力と魔力で、呪いと綱引きをする……感覚かな」
「……なるほど、それは面白いイメージですね」
大賢者が一言間をついた後、言葉を続けた。
「あれは、一言で言ってしまえば、ゴリ押しです」
「ゴリ押しじゃと? そんなことが可能なのか?」
王が聞くと、大賢者は続けて答える。
「えぇ。 理論上は。 腕力で無理矢理、呪いの包帯と皮膚の間に隙間を作り、そこに魔力を挟むことで肉体へのダメージを抑える。 後は、引っ張れば先ほどの通りに」
「ほほう。 理論上は……か。 じゃが、レムくんはそれを実際に行ったようじゃが?」
「理論上、というのは、呪いを引き離す腕力を持ち、それと同時に呪いの効果を遮断するだけの魔力を持っている。 そしてさらに、激痛を肩代わりしても耐え切れる精神力を持つ人間がこの世に何人いるのか……ということですから」
「さすがは……勇者の子というわけか」
「いえ、勇者の子だからこそ……ありえない点が出てくるのです」
「どういうことじゃ?」
「勇者アルカイオスは、魔法の適正がないです。 その勇者の子が、これほどの魔力適正を得るには、一体妻にどんな人を迎えているのでしょうか」
「じゃが、その遺伝理論は完全ではないんじゃろう」
「たしかに、突然変異……ということもありますね。 しかし、私はレムくん。 君に興味が湧きました」
「ええと。 興味……ですか?」
「何を引いているんです? あっ! 私、妻がいるのでホモじゃないですよ?」
「あ、なーんだ。 よかった」
「最低でもバイセクシャルですね」
「ちょっと近寄らないで貰えますか?」
「冗談を間に受けないでください」
大賢者でも、冗談って言うんだな。
おもしろーい。
「さて、今日はもう遅い、今夜は城で休んでいくといい。 食事も出そう」
「 ほんとうに? よかった、実は飢え死にしそうで」
「そうか、それはいかんな。 腕によりをかけさせよう。 君、彼を客間に案内して、食事を持って来させなさい」
「はい!!」
俺は、客間に案内をされた。
そこは、とても広く、ベッドから机から何まで大きな家具が揃っていた。
食事は机の上に並べられ、一つ一つが豪勢で美味しかった。
腹も膨れたところで俺はベッドに横になる。
明日より学校か。
学校……ね。 あまり良い思い出はないな。
でも、正直楽しみかもな。
あ、眠くなって……き、た。
……zZZ。
ーーちゅんちゅん。
朝日が目に差し込んでくる。
久しぶりのふかふかなベッドに、沈むように寝ていたようだ。
寝覚めはバッチリで、とても気分がいい。
机には、朝食が並べられていた。
朝食を済ませ、玉座の間に行くと王はそこで待っていた。
「おはよう。 もてなしはどうだったかね」
「最高だよ。 特に夜食のカニなんて美味しかった」
「はっはっは。 それはいい。 それでは、ほら、これを受け取ってもらえるかな」
手渡されたのは、金貨一枚とカギが一つ。
「これは?」
「カギは金庫を開けるのに必要なものだ。 金貨は、ワシからの選別といったところかの」
ふーむ。 金貨一枚か。
しけてるな。 まぁ、こう見えても戦時中だし仕方ないのかもな。
「それで、本題に入ってもらえるかな?」
「学校についてじゃな? それについては手配したから一週間後に行われる試験を受けて貰えばいい。 お前さんなら簡単に受かるじゃろう。 それで、どこから通うのかって話じゃが」
「ん? どこか家を探すか……寮とかないの?」
「寮もあるのじゃが……城に部屋もある。 ここに住むと言うのもあるぞ」
城からね。
「そこまで世話になるのも悪いし、同級生に城から通ってるのを見られるのも嫌だからな。 遠慮しておくよ」
「そうか、それは残念じゃ。 なら、これを渡しておこうかのう」
手渡されたのは、地図とカギだった。
「これは? 寮の場所とその部屋の鍵ってところか?」
「そういうことじゃ。 まぁ、何か困ったことがあればいつでも相談にのるからのう。 その時、ここを尋ねるといい」
「分かった。 何から何までありがとうな」
「礼には及ばん」
「あのさ、最後にローラに挨拶をしたいんだけど」
「あの子は朝に弱いからのう……まぁ、心配せんでもすぐに会うことになるじゃろう」
「そうか? 分かった。 それじゃあ」
俺が手を振ると、王や、側近たちも振り返してくれた。
まずは、寮を探すか。
地図の通りに進んでいくと、すぐにそれらしい建物は見つけることができた。
地図に手書きで、寮は複数人で一部屋であるから、嫌じゃったら城に部屋を用意するからのうって書いてあるのを見つけた。
賑やかそうで、それはそれでありだな。
部屋の番号は、102号室。
カギを差し込むが手応えはなかった。
空いているのか。
俺はノックをする。
「はーい。 ちょっと待っててくださいね」
中から人の声が聞こえ、ドアが開かれた。
「えっと、どちら様ですか?」
そこに立っていたのは、可愛らしい女の子だった。
「あれ? ここの部屋に住むことになったレムって言うんだけど……もしかして、男女共用?」
「え? あぁ。 僕、男だよ。 よく間違えられるんだー。 ナギサって言うんだ。 よろしくねレムくん」
男……だと。
俺の生活は、波乱が待ってそうだ。
「あぁ、よろしく」
手を差し出されたので、握手を交わす。
華奢な手を握ると、優しい力で握り返された。
「話には聞いてるよ。 常識がないから教えてほしいだっけ? この国のことぐらいなら色々説明するね」
「ありがとう。 すごく助かる。 とりあえず街を案内してくれるか?」
「うん!! 家具も揃えないとだからね。 適当に、荷物置いたら行こっか」
俺は、自分のベッドを確保し、荷物を降ろした。
そして、準備をして、2人で街へと向かった。




