ミイラ姫
「……一体どうなってるんだよ」
王国に着くやいなや、まずは王様に会うために城へと向かった。
そこですんなり通ってこれを見せれば学校へどうぞ〜ってなると思ってたのに。
ピラピラと一枚の封筒を振る。
それは、父からもらった紹介状であり、王様に渡せば事情が通るということらしい。
「いざ行ってみれば、門の前で衛兵に通せんぼってそりゃないぜ」
仕方がないので、街を練り歩いてみている。
王国と聞いていたから、華やかなところを想像していたが、天下の往来ですら人は少なく、通った人の表情は暗かった。
まぁ、戦争中だしこんなものなのか。
それにしたって色々あるだろうになぁ。
「とりあえず、どうすれば王様に会えるのか情報収集からだな……まさか、忍び込む訳にもいかないし」
とはいえ、街ゆく人たちにいきなり声をかけるというのもハードルが高い。
店に入ろうにも、金がない。
これは詰んだか?
いやいや、何か手があるはずだ。
続けて街を歩いていると、信号機のようなものを見つける。
色は緑である。 この世界の知識はないが、緑は通ってよしでいいんだろう。
横断歩道を堂々と渡っていく。
すると、馬車が走ってくる。
あはは、案の定、轢かれた。
「おっ、おい。 大丈夫か? あんた。 ダメじゃねえか。 青信号で渡っちゃ」
俺は、立ち上がりながら、服についた誇りを払う。
「いててっ。 しまったなぁ。 この国じゃ、青信号が止まれなのか……おっちゃんごめんよ。 馬も怪我はない?」
「え? あ、いや。 こっちは大丈夫なんだが……お前、傷とかは……」
「ん? あぁ、俺は大丈夫。 そうだ。 王様に会いたいんだけど、なんか方法ないかな?」
「へ? 王様にって言ったって。 今は無理だろう。 どうも姫様に、不幸が祟ったらしく、今は誰とも会いたがらないって噂だ」
「ほほう。 それはいいことを聞いた。 で? その不幸とは」
もしその不幸を解決できたら、話はトントン拍子に進むぞ。
これはいい出だしなのでは。
「…………あくまで噂なんだが、呪いの装備って知ってるか?」
「呪いの装備っていうと、装備すると外せなくなるって言う?」
「あぁ、それがどうも顔にまとわりついているらしい。 命に別状はないが、呪いが強力らしく、外せないでいるんだと」
「ふぅん。 それが本当なら、すごい簡単な話だな」
「簡単って、呪いの装備だぞ? ウチの国の大賢者様でも外せないでいるらしいし」
「ん? 大丈夫だろ。 俺も、呪いの装備外したことあるし」
「なっなに? お前みたいなガキがそんな訳ないだろう。 それに、あくまで噂に過ぎないからな。 あんまり信じすぎるなよ?」
「うん。 分かったよ。 ありがとうおっちゃん。 もう次は人を轢くなよー」
「いや、お前が信号を守れって話だよっ!!」
俺は、親切なおっちゃんに手を振り、再び城を目指して歩き出した。
それにしてもお腹が空いたな。
道中には、いくつも店やバナーが出ており、飲食店も多く並んでいた。
いい店なのだろう。 美味しそうなものを売っている店も少なくはなく、時折足を止めさせられる。
「金さえあればなぁ。 姫さま救った暁には王様から貰えたりしないかな」
可能性はある。
さっさと姫の呪いを解き、紹介状を叩き渡してやろうか。
ふと、一件もめている店がある。
フードを被った者が、店主と口論をしていた。
「なぁ。 あんた、注文しないなら帰ってくれないか」
「い、いや。 それは……その」
それは、透き通るような綺麗な声だった。
女か?
よしよし、ちょっと助けてやりますか。
そんな、助平心を丸出しで、俺は近づいていく。
「店主よ。 客に向かってその態度はないだろう……君、金はあるのか?」
「えっ……あ、あぁ。 無論だ。 だが、どうすれば」
注文がうまくできないのだろう。
まぁ、よくあることだ。 特に、コミュ障には。
なんでだろうか、ちょっと胸が痛んだ。
「なにが食べたいの?」
「えっと、あれを」
彼女は串焼きを指差した。
たしかに、美味しそうだ。
「店主、串焼きを一つくれないか?」
「えっと、いや。 二つ……ほしい」
なんだこの女。 食いしん坊かな?
よく食べる女は好きだ。
「はいよ。 料金を」
店主がそう言うと、女は財布のような布から銅貨を2枚取り出した。
銅貨と引き換えに串焼きが二本渡される。
「良かったな。 買えて。 それじゃあ」
「いや、待て。 その……ありがとう。 これは
礼だ」
女は、串焼きを一つこちらに差し出してくる。
喉から手が出るほど欲しいが……
「いいのか?」
「あぁ。 君のおかげで私は助かった。 ほんとうにありがたく思っているんだ」
「そうか……分かった。 頂こう」
串焼きを受け取ると、2人でそれを口に運び、顔を見合わせる。
「美味しい」 「美味いな」
2人で同じ発言をした後、笑いがこぼれた。
風が吹き、フードがとれる。
「あっ」
「その顔……」
女の顔には、包帯が巻かれていた。
悪しき魔力を感じる、そんな包帯であった。
「こっ、これは」
「奇抜なファッションだな」
「え? 奇抜な……ファッション?」
「あぁ。 だいぶ、いいセンスしてるぞ」
「ぷく。 ふふふふっ」
女は笑った。
「へぇ。 可愛いな」
「えっ!?」
「あ、ごめん」
なんとなく。 頬を赤らめているんだろうなと思った。
女の後ろに兵士があらわれる。
「……抵抗はしないよ。 じゃあね。 君の名前聞いてもいい?」
「レムナント……レムって呼んでくれ」
「私の名前は……」
「いいよ。 またすぐに会える」
兵士達が、女をエスコートする。
一部の兵士が、こちらにヤイバを向けた。
「レムは、私を助けてくれたの。 無礼は許さないよ」
女の一言で、ヤイバを収めた。
女は、城に向けて歩いていく。
「今夜、だな。 流石にすぐってわけにはいかないだろうし」
俺は、城へと見送り、残った串焼きを食べ尽くした。




