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きゅんきゅんハニー  作者: 松宮星
少女の旅立ち
12/236

伝説の黄金弓

 ねむぅぅぅ〜〜

 あくびが止まらない。

 ベッドに入っても目が冴えちゃって、明け方まで眠れなかったのよね……魔王戦のことを考えたり、昔の事を思い出したりしてたもんだから。


 朝食を食べたら、よけいに眠くなった。


 今日も、けっこうハードな予定だってのに。


 もうすぐ仲間候補を連れて、お師匠様が移動魔法で帰って来る。運よく萌えられたら、十人目の仲間だ。

 その後は、デュラフォア園に移動して、マルタンと合流、悪霊退治の助手をやらされる……これからずっと、あの僧侶と一緒なのかと思うと……憂鬱。


 ああ、でも、跳ぶのは仲間が揃ってからか。

 盗賊ギルドに仁義を通しに行ったリュカと付き添いのドロ様、旅のお役立ちアイテムを用意しているルネさん。みんなもじきにオランジュ邸に着くはず。


 悪霊退治が終わったら、この世界でアタシがやる事はとりあえず一段落する。

 一週間お世話になったオランジュ伯爵家とも、今日でお別れ。


 早ければ今日にも、アタシは幻想世界へ旅立つのだ。



「幻想世界とは、文字通りの世界と思えばよろしいでしょう。巨人、小人、獣人、鳥人、ドラゴン等々、この世界には存在しない種族が多く、特性として外見が美しく、魔力が高く、さながら幻想文学の……」

 今日もテオドール先生は、絶好調だ。

 教鞭を片手にテーブルの周りを行ったり来たり、『幻想世界についての知識に欠ける、不勉強な人達』を教え導こうとしてくださっている。

「かような幻想的生物が生まれた背景には、我々の世界とは異なり全ての生物が魔力或いは魔法資性を有しており、大気にまで魔力が充満し……」

……テーブルにつっぷして寝たい……


 旅の支度は終わっていた。アンヌおばあさんの所へ『お世話になりました』のご挨拶に行くのは、お師匠様が帰ってから。

 なので、やる事のないアタシ達は、出発の時までアタシの部屋でのんびりしてたのだ。まあ、クロードは魔術師学校の教科書をテーブルに広げて、お勉強してたけど。

 なにげなくアランが『幻想世界とはどんな所なのでしょう?』と、学者先生に聞いたが為に、こんな事に……

 いらないわよ、説明なんか。アタシは知ってるわよ〜


「文化はもちろん言語も、この世界のものとは異なります。しかし、勇者様とその仲間になった全員には、神様から自動翻訳機能が贈られておりますから、さほど不自由は感じないと思います」

「言葉が通じるのですか?」

 アランの問いに、テオ先生が頷く。

「言語が翻訳され合い、互いに母国語のように聞こえるのです。その恩恵は、全ての『言葉』に有効です。文字とて、例外ではありません」

「では、異世界の文字も読めるのですか。それは、便利ですね」

 アランが少し首を傾げる。

「しかし、水や食べ物は? この世界の人間には毒となりませんか?」

「なりません。幻想世界には、九十六代目勇者であらせられたシメオン様をはじめ四人の勇者様が赴かれており、みなさま、ご滞在中はあちらの食事を摂取なさっておられました。あちらの人間が『食事』としているものならば、食しても何ら問題はないのです」


 隣の幼馴染は、すっかり目がお留守。教科書から顔をあげ、ふんふんとかへーとか感心している。

 こっそり聞いてみた。

「お勉強しなくていいの?」

「うん、いいんだ。読み直してるだけだもん」

 へ? もう読み終わったの? 中等部の教科書九教科三年分を読破?

「昨日、馬車の中でも頑張ったから。それに、」

 クロードがにっこりととても嬉しそうに笑い、小声でアタシに囁く。内緒だよ、って感じ。

「あのね、ボクがうんうんうなって勉強してたらね、テオドールさんが教科書をパラパラとめくって、ここを押さえておけばいいってババーッと要点だけ線を引いてくれたんだ」

 へー 意外と親切。

「効率悪い勉強を横でされると、イライラするんだってー」

 あ、そ……そーいう理由。

「おかげで課題クリアー♪ さすが、先生だよね。テオドールさん」

……テオのこと怖がってたくせに。てか、嫌味言われて落ち込んでたのに。もう懐いたのか。

 アタシはテオに教わるのは嫌だな……一つ質問したら、あれこれ十ぐらい余計なことを説明してきそうなんだもん。


「歴代勇者様達が幻想世界を訪れた理由は、各々異なります。シメオン様は託宣ゆえでした。《汝の友愛が、魔王を滅ぼすであろう。天駆ける竜を求め、一つとなりし心を刃として振るうべし》。これがシメオン様がいただいた託宣でした」

 む?

 思わず聞いてしまった。

「なんで、知ってるの?」

「歴代勇者様の託宣は、魔王戦後に全て世に公開されますから」

 知っていて当然でしょ? って顔でテオがメガネをかけ直す。いや、でも、普通の人は暗記までしないと思う。

「初代様の託宣から順にお聞かせしましょうか?」

 との申し出は、丁重にお断りした。


「しかし、竜騎士とは……」

 兄さまが眉をしかめる。

「あの男、そんな武闘派には見えんが……」


「現在のお姿から想像し難いでしょうが、竜騎士でいらっしゃいました。白銀の鎧をまとい、岩石魔人(ゴーレム)すら一突きで砕く白銀のランスをふるい、新雪のように美しい白竜と共に天駆ける、雄々しい方だったのです」

 テオがうっとりと虚空を見つめる……

 勇者おたく、め。


「すげー かっけぇー」

 クロードが無邪気に笑う。

「でも、今は竜騎士じゃないんでしょ? その白竜は幻想世界に還ったの? 向こうに行ったら、会えるのかな?」


「無理」

 テオよりも先にアタシが答えた。

「魔王戦で、死んじゃったから」


「え?」

 クロードが目を丸める。

「……どーして?」


「知らない。お師匠様と白竜が、どんな戦いをして、どうして白竜が殺されたのかは知らないの。勇者の書には、そこまで書いてなかったから」


 クロードがテオを見る。テオは静かにかぶりを振った。

「歴代魔王戦の詳細は公とされておりません。勇者物語として人口に膾炙しているものにしても、魔王戦に関しては創作が多い。信頼に足る資料はたいへん少ないのです」


「しかし、勇者の書には記されてるのでしょう?」

 裸戦士のアランが、顎の下に手をあて首をひねる。

「ジャンヌ様は歴代の書をご覧になっておられます。真実をご存じなのでは?」


 アタシは肩をすくめた。

「それも、無理。勇者の書はぜぇ〜んぶ、魔王城に乗り込む前で終わってるもん」

「え?」

「魔王戦を記した書は一冊もないの」


「魔王を倒した後に勇者様は、賢者に就任するか、異世界へと渡られます。いずれの道を選ぶにしろ、魔王を倒せば『勇者』としてこの世界に存在できなくなるのです。『勇者の書』は勇者しか記せません。賢者となってから追記しようとしても、書が受け付けず、文字をはじくのだと聞いています」

 なるほど、とアランが納得する。


 お師匠様の書を読んだから知っている。

 アタシ達の世界では、ドラゴンは遥か昔に滅びている。託宣を受けたお師匠様は、ドラゴンが生きている世界……幻想世界を訪れた。

 お師匠様の目から見た幻想世界、ドラゴンたち、相棒となったマルヴィナ。共に修行に励んだ日々。お師匠様とマルヴィナが心を通わせ合い、互いをかけがえのない相手と思ったことも……アタシは知っている。


「ジャンヌぅぅ……」


 うわっ!

 びっくりした!

 なんで、泣いてるのよ、あんた!

 そんなボロボロ涙をこぼして。


「ボク、がんばるからね。ジャンヌもジョゼもみんなも、誰も死なせないように……がんばるから……死んじゃイヤだよ」

「クロード……」

「魔王に勝って……異世界に行っちゃうのも、イヤだよ? ジャンヌが、また、いなくなっちゃったら、ボクは……もう……」


……っとに、もう、バカ。


「どこにも行かないわよ、バカね」

 幼馴染のおでこを指ではじいた。

「魔王に勝って、アタシは賢者になるわ。不老不死の賢者になるの。永遠の十六歳よ」

 まあ、永遠は嘘だけど。次の賢者希望者が現れるまでだけど。


「そのままの姿であろうとも、老婆になろうとも……たとえ、他の何かに変わろうとも、ジャンヌはジャンヌだ。俺は永遠におまえを愛する……」

 ちょ! 兄さま!

 すりすりと顎をアタシの頭に押しつけないで! ちょっと痛い!


 背もたれの後ろに立っている兄さまは、椅子ごとアタシをハグしてる。

 頭の上が重い……

 文句を言ってやろうかと思った時、ゆらぎを感じた。

 アタシの斜め後ろの宙が、キラキラと光り出している。

 移動魔法だ!

「お師匠様!」

 帰って来たんだ! 仲間候補の人を連れて!


 お迎えしなきゃ。


 椅子から立ちあがった。

「っく!」

 兄さまが顎の下を押さえて、身をかがめる。

 あ。

「ごめんなさい、兄さま」

 謝ってはおいた。だけど、半分以上、自業自得よ。アタシの頭の上に顎をのせてるのが悪い。


「おかえりなさい、お師匠様!」

 長い白銀の髪に、白銀のローブ。天に架かる月のような美貌。

「今、戻った」

 穏やかな声を聞いてホッとした。お師匠様と離れてたのは、たった一晩なのに……正直、ちょっと寂しかった。


 よくよく見ると、お師匠様の斜め後ろに二人立っていた。

 一人は、ジュネさんだ。

 今日は女装してないっぽい。腰まであるお美しいおぐしを総髪(ポニーテール)にまとめてて、これはこれでステキ。

 けれども、今日の装いはよく見えなかった。

 男の人を抱きかかえていたから……


 その人を目にした途端、アタシは……


 胸がキュンとした。


 いやぁん……

 な、なに、これ?

 どーして、その人そんな格好で、ジュネさんにお姫様だっこされてるわけ?


「この子が、エドモン。あたしの幼馴染の、スイートハートよ。可愛いでしょ?」


 スイートハート……


 そ、それって……


 ジュネさんが艶やかに微笑み、腕の中の男性に顔を近づけていって……

 頬にチュッチュと……



 きゃぁぁぁーーーーー



 胸がキュンキュンキュンキュンとした!



 心の中でリンゴ〜ンと鐘が鳴る。

 欠けていたものが、ほんの少し埋まっていく、あの感覚がした。


《あと九十〜 おっけぇ?》

 と、内側から神様の声がした。



 だめよ、だめ! アタシの目の前で、そんな!


 男同士で!

 乙女には刺激が強すぎるわ!

 と、と、と、と……ときめいちゃう……


「っ! ぅぅぅ!」

 ジュネさんの腕の中の人が抵抗する。けど、綺麗なおねえさんみたいにしか見えないけど、ジュネさんは意外と力持ちみたい。

 あぶなげなく、暴れる男を抱っこしている。


 まあ……抵抗するったって、体を揺さぶって、首を左右に振ってるぐらいだけど。

 全身ぐるぐる巻きってほどじゃないけど、手は後ろ手に、足は左右がぴったりと重なるように腿・膝・足首に縄がかけられている。

 そして衣服の上は腰から上半身にかけて、綺麗な綾のような縛り方がされていて……


 ジュネさんは獲物を得た猫のように微笑んで……

 暴れる人に、何度も何度も愛しそうに頬を寄せて……


「だめだ、ジャンヌ! 清純なおまえには刺激が強すぎる! 見ちゃいかん!」

 などと言って兄さまはアタシの目をふさごうとした。

 チッ。

 当然、腹に肘鉄をいれて追っ払った。

 邪魔しないで、兄さま! 世紀の瞬間を見逃したら、どうしてくれるのよ!


 ジュネさんは、神の采配を感じさせるような美貌の持ち主だ。

 けれども、腕の中の男の人は……

 普通?

 てか、顔がよく見えない。前髪が長すぎて両目が隠れてるし、口には細い布で猿ぐつわを噛まされてるから。

 けど、髪は無造作に伸ばした感じでボサボサ。服装も普通。チュニックにズボン。もっさりした感じで、あかぬけない。

 一言で言えば、地味。人がいっぱい居たら、間違いなく周りに埋もれるタイプ。


 なのに、スイートハートなの?


 これは、きっと……

 英雄世界出身の十六代目の女勇者(せんぱい)が絶賛していた、アレ……

 イケメン×平凡ってカップリング?

 普通の男の人がイケメンに溺愛されて困っちゃう〜 って、あのパターン?


 はぅぅ……


 た、たしかに、こ、これは、萌える、かも……


 お二人の関係は……?

 ただの幼馴染の……一言では……終わらない、もっと深い……


「百一代目様」

 知らない声がして、びっくりする。


 アタシの前に、おじいちゃんが居た。

 羽根付き帽子、チュニックにズボンにブーツ。左手にまばゆい黄金の弓を持ち、背には矢筒を背負っている。狩人だ。左利きなのか、右の腰にナイフを差している。

「愚孫を仲間にお選びいただき、誠にありがとうございます」

 髪も顎髭も真っ白。だけど、皺の刻まれた肌は日に焼けているし、背筋はしゃきんと伸びている。

 武人って感じ。

 目つきも、鷹のように鋭い……


「これでようやく……」


 うぉ!


 おじいちゃんの目に涙が!


 きりっとした表情のまま、目に涙をためている。


「ご恩をお返しできます。感無量にございます」


 え?


 おじいちゃんが、アタシに対し恭しく頭を下げる。

「失礼いたしました、名乗っておりませんでしたな。セザールと申します」


 ん?

 セザール?

 って……


「セザール様?」

 学者様が身を乗り出してくる。

「では、九十八代目様の旅に同行なさった、狩人のセザール様……ご本人ですね?」

 平民相手に、『様』付けしてるし……。


「さようにございます」

『魔王退治に参加した一人』を目の当たりにし、テオが興奮を露わにする。勇者おたく、め。


 九十八代目カンタン先輩の勇者の書には、黄金弓の使い手セザールについての描写もあった。

 黄金弓は、とある狩人一族に伝わる神聖武器。その一族からは六十五代目勇者も輩出されていて、セザールは六十五代目の直の子孫だった。

 けれども、少しおっちょこちょいで、狩人のくせに前に出過ぎ。彼の無謀さで、PTは何度か危機に陥っていた。

 それでも、なにくそ! と頑張るところが、カンタン先輩からも仲間達からも愛されていた。確か、PTメンバーの最年少だったはず……

 アタシの心の内などお見通しなのだろう、お師匠様が横から淡々と教えてくれる。

「既に四十年が過ぎている。当時十代だったセザールも、年月にふさわしい老いを経たのだ」


 お師匠様のすみれ色の瞳は、九十八代目の仲間だった老人へと向いていた。

 勇者カンタンの師でもあった、お師匠様。今も二十代の外見のまま。若くて、とても綺麗だ……


 横でジタバタチュッチュしてる二人も気になるけど、このおじいちゃんがあのセザールならきちんと挨拶しなきゃ。

「はじめまして、百一代目勇者ジャンヌです。偉大な狩人に、お会いできて嬉しいです」


 テオも、ちゃっかり挨拶をする。

「学者としてジャンヌ様の仲間となりました、テオドールです。黄金弓の使い手に、お目にかかれて光栄です。魔王戦の後にご勇退なさったと伝え聞いておりましたが、現役でいらっしゃったのですね」

 いやいやいやとおじいちゃんが左手を振る。

「心意気だけにございます。弓すら引けぬ、おいぼれにございますれば」

 その顔には苦い笑みが浮かんだ。


「……魔王戦で負傷し、セザールは右腕に石化の呪いをかけられたのだ」

 お師匠様が感情のこもらない声で教えてくれる。

「肘から先は石となり、砕けた。魔王戦で、セザールは狩人としての生を終えたのだ」

 そう言われれば……右腕を隠すようにしてたから目がいかなかったけど、右の袖口から手が出てない。隻腕なのか……。


「右腕一本ですんだのは、カンタン様のおかげ……」

 おじいちゃんが瞼を閉ざし、つらそうに唇を噛みしめる。

「なれど、愚生を庇ったが為に、カンタン様は右半身が石化し……魔王戦があのような結末となったのは、全てこのセザールの」

「セザール」

 お師匠様がおじいちゃんの言葉を遮り、静かにかぶりを振る。その話はもういい、と言うかのように。


「カンタン様に救われたこの命……生かせる道は無きものかと思い、指導者としての道を選びました。黄金弓の持ち手にふさわしき男となれるよう、狩人としての知識と技術を愚息に伝授したのですが、あいにく……」

 おじいちゃんが、重い息を吐く。

「九十九代目様の魔王戦争の折は、愚息は十にもならぬ子供で……百代目様の代にはあの不孝者は既に……」

 え?

 既にって……

 亡くなった?

 息子に先立たれちゃったの……?


 おじいちゃんが、カッと目を見開く。

「しかし! ついに! 百一代目様の代でご報恩の機会が! 我が孫が、世を救う勇者様をお助けいたします! どうぞご存分に我が孫エドモンをお使いください!」


 いかめしいおじいちゃんが、顔中をしかめ、わなわなと体を震わせる。その目元に涙をきらめかせながら……


 アタシと出会え、孫が仲間となれた事を、心から喜んでいる……


 四十年の長さは、十六のアタシには想像もつかない。

 その長い長〜い時の間、この人はひたすら恩返しの機会を待っていたのだ。

 弓を引けない体になり、息子に先立たれても、尚……


 本当は、カンタン先輩に恩返しをしたいだろうに……


 九十八代目カンタン先輩は、異世界出身。

 賢者を継がなかったから、魔王戦の後は生まれた世界に還ったのだと思い込んでいたけど……

 さっきの話からすると、先輩は、もしかして……

 魔王戦で……

 ううん、生き延びたんだとしても、右半身石化で異世界に還ったのよね。魔王戦の時は、五十八歳だったし……たぶん、もう亡くなってる。


 胸が痛んだ。


「愚孫ばかりではございませぬ。この老いぼれとて、勇者様の御為とあらば、いかようにも働いてみせましょう。どのような御用であろうと、何なりとお申し付けください。このセザールの命、百一代目ジャンヌ様のものにございます!」



 胸がキュンキュンした。



 心の中でリンゴ〜ンと鐘が鳴る。

 欠けていたものが、ほんの少し埋まっていく、あの感覚がした。


《あと八十九〜 おっけぇ?》

 と、内側から神様の声がした。



「あ」

「あ」

 アタシとお師匠様は、ほぼ同時に声をあげた。


「ジャンヌ、おまえ……」

 お師匠様が、微かに眉をしかめる。

「萌えたのか……?」


 萌えちゃいました……


 サーッと血の気が引いた。

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