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モブキャラとして無難にやり過ごしたい  作者: 天原 重音
新しい変化 西暦3147年12月

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219/220

交流会が終わって

 交流会が終わったから軌道衛星基地に帰る……とはならない。

 他所の支部長七名は五十メートル走で足腰を痛めた。それを理由に『迎えに来た各支部の副支部長』の指示で、学長と教官は共に支部長とチャーター機に乗せられて先に帰還した。

 現在、日本支部長は会議室で他所の副支部長七名と軽い会議を行っている。サイは『真面そうな連中の顔が見られそうだ』と大林少佐と一緒に参加している。


 残された自分達は一階の待機場でのんびりと過ごしていた。

 予想していたウザ絡みは無い。絡みそうな人達は複合障害物競走で精根尽きて、各支部の副支部長が乗って来たチャーター機に乗り込みダウンしている。

 各支部の訓練学校の学長と教官は訓練生を残して、支部長と一緒に帰ってしまったのでいない。学長と教官でいるのは如月学長と武藤教官だけだ。

 そんな状態なので、待機場はまったりとした空気に包まれていた。

 

 日本支部の『大人組』は自動販売機で飲み物を各自購入し、テーブルを囲んで飲んでいる。

 そう、『大人組』はである。


『……』

 自分は何故か、他支部の訓練生と同じテーブルに座っている。同じテーブルについている訓練生の男子は誰一人として口を開かない。自分の左右に座っているロシア支部とドイツ支部の訓練生男子は、将官級の人の前で緊張しているみたいで何も言わない。その後ろにいる各支部の将官級の人達は顔を見合わせている。

 どうしてこうなったのかと言うと、ロシア支部の提案だった。

 散々な結果で終わった交流会だが、訓練生の間だけでも少し交流を持たせよう……と言う事である。

 だが、いざテーブルについても誰も口を開こうとしない。不満げな顔で視線を逸らしている。そんな中で、自分は買ったカップジュースを少量ずつ飲んでいる。

 自己紹介すら無く、重い沈黙が下りるだけだ。

 見かねた提案元のロシア支部の将官が『自己紹介だけでもしないか?』と何度も話題を振るが、男子の殆どがむすっとした顔で黙っている。

 ……移動しても良いかな? ジュースはもう飲み終わるし。

 カップを捨てる事を言い訳にして、自分は席を立った。呆れた視線を将官級の方々から貰ったけど、ゴミの放置は良くないので何も言われなかった。

 カップを自動販売機横のゴミ箱に捨てて、新しい飲み物を購入する。

 戻る道中で、松永大佐と如月学長に捕まった。『訓練生間で行う交流はどうなのか?』と聞かれたけど、『皆黙っているので何も無い』と答える。他に言いようは無い。

 色々と察した如月学長と一緒に席に戻ると、胡乱な視線を貰った。そんな中でも如月学長は臆さずに、にこやかにロシア支部の将官に話しかける。

「やぁ、ロシア支部。会話が無いのなら、ウチの生徒は戻しても良いかな?」

「キサラギか。来ていきなり何を言い出すのかと思えば……」

「だってそうだろう? こっちも軌道衛星基地に戻ってからの行動について、あれこれと指示を出さなくちゃいけないし、学校に報告もしなくてならない。何も進まないのなら、時間の無駄だ」

「……それを言われると」 

「良し、戻るぞ」

 如月学長は言いたい事を言うなり、自分の手を引いた。背後で何か聞こえたけど、小さかったので無視した。

 日本支部には協調性が無いのかと言われそうだが、会話無くして関係を築く事は出来ない。会話が成り立たない以上、いても時間の無駄と判断されるのは仕方が無い。

 ……やっぱり、日本支部の訓練学校の男子だけが変わっているだけなんだね。女子の成績が良いと、普通はこうなるんだな。

 日本支部の大人組がいるテーブルまでの道中にそんな事を思った。

 身体能力がものを言う実力主義の現場だと、男性の方の人数は多い。女性で荒事を得意とする人は少ないので、人数は少ない。

 他所の支部の訓練生の男女比率は知らないが、やっぱり、男子の方が多いのか?

 考えても分からないものについて考えてもしょうがないので、今は忘れよう。

 日本支部大人組がいるテーブルに戻り、ツクヨミに戻ってからの予定について色々と教えて貰う。

 当面の間は書類仕事になるが、月初に入れられた『年末の予定』を考えると、前倒しで仕事を片付けた方が良さそうだ。支部長にお願いして来月にルピナス帝国に行く事を考えるとバタバタしそうだ。ルピナス帝国に一人で行くか、誰かを連れて行くかを決めるのはまだ先で良い。

 目先の予定である年末の面倒事は、支部長や松永大佐抜きでどうにかしなくてはならない。これについて、優先的に考えよう。


 大体の事が話し終わった頃、大林少佐がやって来た。

 支部長が参加していた会議が終わったらしい。サイは支部長と一緒に先にチャーター機に乗っているそうだ。

 チャーター機に乗り込んでから大林少佐が知らせに来たって事は、会議で何か起きたのかもしれない。

 疑問は有るが、ツクヨミに帰る時間だ。自分は大人組と一緒に待機場を出てチャーター機へ移動した。

 チャーター機に乗ってツクヨミへ帰る途中、サイから会議で起きた事を教えて貰った。


 

 会議は軽い挨拶と、フランス副支部長から日本支部へ『フランス支部長が意図的にルール通知を行わなかった事』への謝罪から始まった。

 会議の大半は、各支部の状況の報告と、来月半ばに月面基地で行われる定例会議での内容に関する打ち合わせで終わった。

 打ち合わせと言っても、日本支部が保有しているアゲラタムと敵勢力の情報の開示依頼だった。

 アゲラタムの情報開示は先月で期限が切れている。支部長級が会議を開き、話し合って決めれば情報は得られた状態だった。にも拘らず、会議すら開かれないまま期限は切れた。

 副支部長からの要請で情報を開示しては、『政治屋の支部長が図に乗る』事を理由に支部長は拒んだ。

 敵勢力に関しては、情報が纏まっていない事を理由に拒んだ。十月の末日に行われた会議で開示した以上の情報は会議で言わないと、支部長は言ったらしい。

 ドイツ副支部長がルピナス帝国との接触方法について、しつこく質問を重ねたらしい。

 これに関して支部長は『支部の内部状況を、会っても良いと思わせる状態にしなくてはならない』と言って、隣にサイがいる事に関しては黙っていた。

 

「尻拭いだけをやって来ていたからか、真面そうかと思ってたのに余裕の無い奴ばかりだった」

 サイは副支部長級を見て、そう判断した。

 この判断に、自分は『政治屋のフォローは大変だろうな』としか思わなかった。


 イタリア副支部長を始めに『具体的にどうすれば良いのか』と質問が重なり、支部長が疲れ果てている様子を見たサイは変装を解いて身分を明かし、各副支部長に一つずつ質問を返した。

「この質問に返答出来ない内は、接触しても良いとは思えない。十点満点中、二・九以上の点が取れるように組織の正常化と強化に励むんだな」

 サイにルピナス帝国が付けた点数を明かされて凹み、切り捨てられた各副支部長は項垂れた。

 各副支部長が何も言わなくなったところで、会議は強制終了となった。

 

 

「サイ、変装を解いたの!?」

「解いたぜ。暫くの間は静かだろうな」

「バンダじゃ致命傷を負いそうだから帰らせたのに、サイが抉ってどうするのよ?」

「アレで立ち直れないようじゃ、今後接触する価値無しと見做せば良い。言い方はキツイかもしれないが、これくらいで立ち直れないようでは困る」

「それはそうだけどさ、大丈夫かな?」

 バンダを帰らせて代わりにサイを連れて来たのに、これでは交代させた意味が無い。

 語られなかったが、サイの事だから、他にも他所の副支部長に向かってキツイ事を言っていそうだ。

 

 

 締まらない形で終わった交流会は、七名の副支部長の心にダメージを与えて終わった。

 日本支部にとっては良い結果で終わったけど、今後の他支部の動向が気になる。

 個人的には、交流会は今後も行われるのかが気になる。次の交流会に日本支部が参加するとは限らないんだけどね。

 

 ツクヨミ経由で訓練学校に向かった如月学長と武藤教官は、次の交流会が開催された時に備えて準備すると言っていた。

 どんな準備をするのかは知らないが、困った事にならないと良いな。


 セタリアには、サイ経由で『首位独走のままで終わった』と連絡を入れて貰い、おまけを確約して貰った。

 おまけが確定したので、次は年末に向けての準備期間となる。

 本音を言うと、行きたくない。

 でも、支部長が言うには『自分と話がしたい』と言う人がいるそうなので、行かねばならない。

 ツクヨミに戻った自分は慌ただしく仕事を前倒しで終わらせた。


 そして、十二月の下旬。

 大林少佐と二人で、ツクヨミから地球に降りた。 

 

投稿が滞ってすみません。

三月中に交流会編を終わらせる事が出来て良かったです。

今月中旬頃に料理中に指先を怪我して、キーボード入力を行うと痛むので、ちょっと苦労しました。今は治ったので大丈夫です。


次回年末編です。

遂に主人公があの人に会います。

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