84話 王の病 中編
活動報告ちょこちょこ書いています。
多くの兵に敬礼をされながら城へ入った3人は真直ぐに王の部屋へと向かった。このところ体調がすぐれず、玉座ではなく自室で過ごされて居る事が多いのだとか。
王室へ向かう城の中には、庭園や中庭があり回廊の端には今にも動き出しそうな程精な十二支の彫刻が飾られていた。庭園を抜けると真っ赤な絨毯が敷き詰められた床に、驚くほど高い天井。壁一面にある美しいステンドグラスの窓どれもおとぎの国に出てくるような風景だった。エレナはともかく、レイラも城にはしょっちゅう出入りしている様で、美しい装飾には見向きもしなかった。
部屋の入り口には番兵は2人立っており、エレナとレイラを見て敬礼した。
「叔父様はお部屋にいらっしゃるかしら?いらっしゃればお目通り願いたいのですわ」
エレナは番兵に尋ねた。
「これはこれはエレナ様、ご無沙汰しております。しばしお待ちください」
番兵が扉をノックして部屋へ入ろうとすると
「あ、それと、わたくしの友人をお連れしましたの、一緒にお目通りしても良いかもお聞きくださる?」
「は、かしこまりました」
暫くすると番兵が部屋から出てきて、「どうぞお入りください」敬礼をし、扉を開いた。
王はベッドの中で横たわっていた。傍には侍女が2人立っており、こちら、と言うよりもティアの動きに目を光らせていた。いくら姪の招待客とは言えいつ何時命を狙われてもおかしくない立場の人にとって、得体の知れない人物は信用できないものである。
エレナはティアに少し離れた所で待つようにと指示をし、レイラと一緒に王に近寄った。ティアは中腰になりその場で待機した。
「叔父様、お体の具合は如何ですか?」
エレナの言葉を聞いて、王は侍女2人に支えられ上体を起こした。
何とか笑顔をつくっているものの、相当身体が痛いらしく、時折苦悶様表情を浮かべていた。
医師によると、この国で出回っている薬の中に特効薬はなく、食事療法しか治療法はないらしい。 この国の鎮痛薬も効き目が悪く、床に臥せる以外痛みを和らげる方法は無かったのだ。
「エレナ、久しいの。足の関節や、身体の節々が痛くての。なかなか床からでるのも辛い状況じゃ」
前回来た時にはまだ玉座に座っておられたのに、なんともおいたわしい姿に…
「ところで、友人と言うのはその娘か?」
王は部屋の入り口近くで中腰になり首を垂れているティアに目を向けた。
「そうです。彼女が持っている鎮痛薬を叔父様に使って頂こうと連れてまいりましたの」
「そうか。そのもの近こう寄れ、其方はどういったものじゃ?」
下げていた首をゆっくり上げ、ティアは口を開いた。
「初めまして国王陛下。お目通し頂きありがとうございます。私は、トピカの村から参りましたプリーステスのティアと申すものです」
長く美しい黒髪で目鼻立ちの整った少女が、物応じもせずに王をしっかりと見つめていた。少し間を置いて、少女は話を続けた。
「国王陛下の体調に関してのお噂と、薬剤不足の話はトピカの村に迄届いております。国王陛下の身を案じる者から依頼され、薬を持って参りました次第であります」
王はエレナの方を向き「この娘のいう事は本当か?」と尋ねた。
「はい、叔父様。実は縁と言うのは不思議なもので、丁度、娘のレイラが怪我をしたところから始まりますの」
そう言うと、エレナはマサト達と出会った経緯を細かく話し、薬と魔法の効果も説明した。
「そうか。其方の薬でレイラの痛みが取れて仲良くなったのか。信じて飲んでみる事にするが、予もこの国を治める者だ。勧められて直ぐに飲むわけにはいかぬのだ」
「勿論、お立場を存じております。そこでお願いがございます。薬杯を2つお貸し頂けないでしょうか。私が先ず飲んでお見せいたしますのでその後に国王陛下がお飲みいただければと思います」
「差し出がましいようですが、国王陛下」
そう言って侍女の1人が緊張の面持ちで口を開いた。
「私もお毒見をさせて頂いてもよろしいでしょうか。薬杯を3つ用意して、先ずティア殿に、次に私にそして時間を少し待った後に国王陛下がお飲みください。命を懸けて暗殺に来るものも居るかもしれません。それに、ティア殿がすでに解毒を行っている可能性も否定できません。ぜひとも私も毒見役にお使いください」
「エレナ様のご紹介のご友人に対して、この様な疑い誠に申し訳なく思いますが、国王陛下を守る為ご了承いただきたく存じます。この薬の効果が真実であったなら、私の命をもって償いといたします」
毒が盛られていても、毒が盛られていなくとも命を懸ける覚悟がある。前者は王を守るための強い意志。後者はエレナとティアに恥をかかせてしまった償いの意志。ティアはその芯の強さに感服した。
「ティア殿、私は侍女のラナでございます。あなた様の御好意に反する無礼を承知でお願いいたします。何卒ご理解ください」
王の侍女とは言え、何という毅然たる姿勢。ここで断ると毒が入っていると疑われても仕方がない。それが彼女の戦略。その背景にあるのは絶対的な王への忠誠心だ。
「ラナ様のおっしゃる事は御もっともで御座います。私の配慮が足りず、申し訳なく思います。きっと、私もラナ様の立場なら同じ提案をさせて頂いていたでしょう。是非、薬杯を3つご用意下さい」
ラナの顔が少しだけ穏やかになり、薬杯が3つ用意された。
まずは、ティアが薬杯の薬を飲み干し、次にラナも杯の薬を飲み干した。
10分程経過した後、2人の様子を見ながら王も薬杯を口に運んだ




