気がつくとそこは… ~集合!~
夜会の会場は完全封鎖され、事前に準備が整っていた鑑定と言う建前の尋問部屋に、一人ずつ誘導されて行っている。
妖しくない人間が一番悪事を働いている可能性もあるため、10歳に満たない令息、令嬢も例外とされない。
(夜会に児童が参加って、いくらゲームの世界だからって、あり得ないでしょ。妖しすぎる。)
過去の栄光や現在の役職等に関係無く、一切の情けもなく、鑑定と取り調べは進んでいった。
そんな状況下で、この件に最も貢献したということで、4名が一つの部屋に集められていた。
この後国王直々にお言葉があるとのことだったけれど、国王の血縁者にも魅了魔法の被害者がいて、国王なのに取り調べから外れることができないようだ。
イシュメル・セス・ガルトブレイス王太子こと、私、杏蒔荏、17歳。
前世は17歳の女子高生。
エロイーズ・パーカー侯爵令嬢こと、焔寿、16歳。
前世は16歳の男子高生。
セレニア・マヤ・ガルトブレイス王女、18歳。
めっさ強そうなイケてる中年男性こと、ライアン・オルティス、?歳。
明らかに焔寿と杏蒔荏に反応した2人に、私は日本語で話しかけてみる。
『あなたたちは、誰ですか?』
『『杏蒔荏、カッコよくなったね!!』』
刹那確信した。
『お父さん、お母さん。』
『父さん、母さん。』
『『で?どっちがどっちなの?』』
『リリィを愛していたけど、心は女のコ寄りだったの。第二の人生がこんなに綺麗でかっこいい女性だなんて・・・しあわせ~。』
『幼い容姿が嫌だったの。子持ちなのに中学生に間違われることすらあったのよ!それが、こんなにイケてる大人になれるなんて・・』
『『おっさんじゃん。』』
『ライアンはまだ19歳です!!』
『『・・今度は老けすぎだろ。』』
因みに、それぞれの容姿は、この応接室の続きの間の鏡で確認済み。
『性別は逆転しちゃったけど、ライアンはセレニアの婚約者候補の公爵令息だから、この世界でも結婚できるわね。』
『この世界でも、しあわせにしてあげます。』
そしてイチャイチャし始める2人。
((なにを見せられているんだ?))
『ねーちゃんはいいなぁ、かっこいい王子様じゃん。もともと男っぽかったからあんま違和感ないんじゃねぇの?俺なんて、いくら可愛いくても女だぜ?どうしろってんだよ!』
『違和感ありまくりよ!私のDカップが無くなったのよ!!』
『・・最初に出てくるのがそれなら、ねーちゃんは大丈夫だよ。父さんも母さんも、もともとがああだったからなぁ。俺、本当にどうすんの?下手に高位貴族だから絶対嫁に出されるだろうし、男と夫婦なんて・・無いわ~。』
『じゃあ、このまま私と結婚すれば?』
『それこそ、無いわ!!』
『物は考え様よ?私と結婚するってことは、白い結婚ってことよ?』
『なんだよ、その白い結婚って。』
『日本風に言えば、籍だけ入れた仮面夫婦?』
『『孫は抱かせなさい!!』』
『『いやいやいや。この世界では親子じゃねーし(ないし)!』』
その後の取り調べで、エリカ・ジュリアン男爵令嬢は存在しないことが分かった。
ジュリアン男爵に子はいたが、まだ2歳と4歳だった。
ゲームの舞台はガルトブレイス王国だったけれど、ゲームの裏設定なのか、ピンク女の魅了魔法で滅んでしまった国も複数あったことが分かった。
ホラーゲームの主人公がいなくなったことで、この世界は剣と魔法のファンタジーな異世界になった。
お父さんとお母さんは無事婚約し、前世以上にイチャイチャしている。
私と焔寿は、性別逆転を受け入れられないまま、お互いの身を守るために、婚約関係を維持している。
そして、王族、高位貴族であるのに、知識は前世日本の高校生のものしかないということがバレて、初等科レベルから毎日みっちり勉強させられている。
近い将来、杏蒔荏は王位継承権を放棄して、焔寿は貴族籍を抜けて、この国から逃げ出す計画を立てているところだ。
― Fin ―
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【 おまけ 】
「俺の名前、エロイーズ・パーカーって、エロい馬鹿みたいじゃん。」
「この子は、なんて罰当たりなことを言うの!エロイーズは健康で広い視野を持つ立派な人間に育って欲しいって意味を込めて付けたのよ!パーカーは王家の番人と認められた初代パーカー侯爵が陛下から賜った家名よ!もう一度初等科の勉強からやり直してきなさい!!それから、自分のことを俺って言わない!!」
焔寿は修道院に放り込まれ、外面だけは立派な侯爵令嬢になった。