レポート79 新章開幕!
タイトル、あらすじ、変えました。
だいぶん、ケレンが入ってます。
風が淀んでいる。
川原である。水は濁っており、草は荒れ放題に伸びていた。
鴨が数羽、水に浮いている。その近くに、魚が潜んでいるようだが、影しか見えない。その大きな黒い影は、不気味にうねっている。なにやら、魔物の手先のように見えた。
「ユメオ、見て、あれを」
フラ隊員が、陽の傾いた西の空を指差した。1羽の白鷺が飛んでいる。が、どうも普通の鷺じゃない。口になにかを銜え、首を狂ったように動かしながら羽ばたいていた。
「銜えてるの、なんだと思う?」
フラの精悍な眉が、不安そうに顰められた。フラはただの女じゃない。元モンスターで、妖術使いでもある。その彼女の頬が、脅えのせいか蒼白くなっていた。
「なんだろう。魚にしては、大きいようだけど」
「たぶん、子犬よ」
「子犬? 鷺が犬を食うか?」
「モンスターよ、きっと。近づいてきたら、マシンガンで撃つわ」
ぼくはチラッと、後ろのペンペン隊員を見た。銃砲店で買い揃えた銃器は、ペンペンのお腹の、究極のモフモフの中に収めてある。
ペンペンの肩では、白猫の「ひるね」が、眠そうな目をして坐っていた。
「ニャアニャア」
ペンペンのモフモフから、白猫の仔たちの啼く声が聞こえた。あの中で、銃が暴発しなければよいが。
「ユメオ隊長」
人面隊員が、低い声で言った。人面隊員は、首から下が人間で、首から上が錦鯉の、バイオ実験で生まれた生物である。しかしぼくたちの誰よりも、知識や経験が豊富なようだった。その頼りにしている人面隊員が、なにかを警戒しているように声を潜めるのだった。
「今日はこれ以上進まないほうがいい。川下のほうから、魔物の匂いがしてくる」
「本当か?」
「ああ。暗くなったら危ない。一晩中火を焚いて、交代で眠ることにしよう」
「火か。アドバイ隊員、出せるか?」
「もちろんじゃ。久しぶりに、肉虫団子も出してやろう」
アドバイ爺ーーアドバイ隊員は、不思議な術を使える仙人である。食料でも水でも火でも、手品師が空中から鳩を出すように出してくれる。旅のパーティーには、欠かせない存在だ。
ぼくたちは、川原で焚き火をし、夕食をとった。
「わたしとアドバイ隊員が、先に寝よう。0時になったら交代だ」
人面隊員がテキパキと決め、アドバイ隊員とともにゴロリと横になった。
「ああやって寝てくれると、なんだか安心してきたわ。わたしちょっと、ペンペンのために魚を獲ってみる」
フラ隊員がそう言って、川を覗き込んだ。暗くなったので見づらいが、なにかが蠢いているのはわかる。
「やめときな。食べられる魚かどうかわからない。ペンペンもひるねも、たっぶり肉虫団子を食べたしな」
「でもやっぱり、魚を食べたいと思うわ」
フラはじっと、水面を見つめた。そして、まるで川の水に心を奪われてしまったかのように、いつまでもそうしていた。
「……どうした、フラ?」
横顔を覗き込んで、ハッとした。フラの両目は、完全に白目になっていた。
「おい、どうした! 人面隊員、アドバイ爺、起きてくれ! フラがおかしい!」
返事がないので振り向くと、2人とも深いイビキをかいて昏睡していた。
「くそっ! 魔物に化かされたか。おい、不死怨! なんとかならんか?」
パーティーには、目に見えないメンバーの、不死怨がいる。こいつは、人を化かして死に誘い込む力を持っていたが、魔物に対しても同じ力を持つかはわからなかった。
すると突然、風が巻き起こり、焚き火を一瞬で消した。
「あ……あ……」
恐怖で全身が硬直したぼくの目の前で、水中から真っ黒な人間が現れ、フラの手を握るとあっという間に川に引きずり込んだ。
PV4572
LV45
レベル45で魔境探検に乗り出したのは、ちと早計だったか……
次回は、ここに至るまでのストーリー紹介にします。




