レポート30 祝! 書籍化!!(夢の話)
や、やりました。
つ、つ、ついに。
こ、こ、こ、これもひとえにみなさまの、
う、う、う、う、う……
かまくらは、みんなで協力してできるだけ大きく作り、5人揃って横になった。
「アドバイ爺の出してくれた寝袋、超あったかーい」
フラが寝袋から首だけ出して言うと、ガルは前足でピースサインをつくり、
「ホーカミの仲間が見張ってくれてるから、モンスターの心配はしないで寝ていいガルよ」
ぼくは横になったとたん、慣れない雪山登山で疲れたせいか、すぐに眠りに落ちた。
夢を見た。
この「リアルタイム☆ファンタジー」が、書籍化される夢だ。
「ユメオ先生、ぜひ我が社で」
「え……」
ついにこの日が来た。天はぼくを、見捨てなかった。
担当編集者の権田林恵梨香女史(以下:ゴン)が、スーツケースに札束を詰めてやってきた。
「先生をほかの社にとられたら、わたしは首を吊ります。1億円で、是が非でも我が社の専属作家になってください」
「いいだろう」
「巨匠に訊く、のインタビューをしてもよろしいでしょうか?」
「始めたまえ」
ゴン:この空前絶後の名作は、前人未到のマイルストーンなわけですが、千年後の読者を意識されたのでしょうか?
ユメオ:(権田林女史の上唇と下唇が開いて、赤い口の中が見えるのを注視しながら)そうだよ。
ゴン:そんなことが、どうして人間にできるのですか?
ユメオ:(権田林女史の唇に、縦に細かい皺があるのを見逃さず)天才にはそれが許されてる。
ゴン:結婚のご予定は?
ユメオ:(権田林女史の顔の産毛を、無双スコープで拡大して観察し)ファンの手前、言えないね。
ゴン:どうしてそんなに、ファン想いなのですか?
ユメオ:(権田林女史の耳の穴が見えるように、さり気なく椅子の位置を変えながら)ぼくのファンは、全人類だ。ぼくは人類を幸福にするために、小説を書いている。
ゴン:あなたは、神ですか?
ユメオ:(権田林女史の鼻の穴が見え、さすがにこれは見すぎだとガバッと席を立ち)やめてくれ! わたしも一人の人間だ!
ゴン:失礼いたしました。ところで初版ですが、1千万部では不足でしょうか?
ユメオ:(気を鎮めて、再び鼻の穴の奥を目を細めて覗き込み)再版が間に合えばね。
ゴン:全印刷所をフル稼働させます。
ユメオ:(フル稼働という言葉に、理由もなく昂ってきた気持ちをなんとか抑えつけ)ははは、全印刷所を、フ、フル稼働か。
ゴン:フル稼働です。
ユメオ:(権田林女史の唇と、口の中と、産毛と、耳の穴と鼻の穴の残像に、心臓が痛むほど苦しめられ)インタビューは、もういいかね?
ゴン:なにか、お気に障ったでしょうか?
ユメオ:(お気に障ったというセリフが、連想に連想を呼んで、もはやいたたまれなくなり)少しでも、執筆したいんだ。
ゴン:ああ、大変お邪魔いたしました。先生の更新が遅れたら、わたしは十億読者に恨まれます。本日は、どうもありがとうございました。
ユメオ:どうも。
担当編集者が帰った。その座っていた椅子は、まだ女史の温もりを残しているだろうかと、じっと座面に目を凝らしていたときに目が醒めた。
「ユメオ殿」
アドバイ爺の声に、寝袋ごとビクッと跳ねた。
「それにしても、今回は内容がないのお」
ぼくは一言もなく、うなだれた。
PV662
LV6
今回のレポートは、とくにどの作品というわけでもないのですが、筒井康隆先生っぽくなったなと感じる。
とはいえ、ぼくが思うに、プロであれアマチュアであれ、現代の日本人作家で筒井康隆先生の影響を受けていない人などいないのである。
だから、似てしまってもよろしい。




