レポート22 門番の言うことにゃ
「リアルタイム☆ファンタジー」というものを書きながら、読書歴を振り返ってみると、童話やSFやホラーを除いたファンタジー作品は、
「冒険者たち ガンバと15ひきの仲間」斎藤惇夫
「ウォーターシップ・ダウンのうさぎたち」リチャード・アダムス
「ゲイルズバーグの春を愛す」ジャック・フィニィ
の3冊くらいしか読んでいない気がします。
この中では特に、ジャック・フィニィの短編集が好きです。この作品集のことを思い浮かべるだけで、顔がほころんできます。
若い読者は、フィニィを読んでどんな感想を持つのだろう? というのも、気になるところです。
「余計なことを言わないでくれ。ぼくは伝説の、無双の勇者なんだ。この山は絶対に越えてみせる」
ちらっとフラを見た。すると、堂々と勇者宣言をしたこのぼくではなく、まだケツの青いガキ門番の顔をジーッと見ていた。
「フラ。きみもあきらめる気はないだろ?」
「え……ええ、もちろんそうよ」
心ここにあらずという返事だ。この浮気性の、ネクロマンサー(ネクスト・ロマンサー:すぐ次のロマンスに奔る人のこと)め!
「そう言って、何万、いや、何百万人が死んだことか。この山が特別だってこと、みんな学ぼうとしないんだ」
「いったいどこが、特別なんじゃね?」
「この山は意志を持ってる……生きているんだ」
プーッとぼくは噴き出した。
「山が生きてるって? じゃあどっかに脳みそがあって、心もあるのかな? ハッ! そんな都市伝説みたいなこと言って、冒険のジャマするってことは、さてはこの山、お宝が隠されてるんだな」
「知ってるの?」
ガキ門番が驚いたように言った。どうやら当てずっぽうが、ホントに当たったようだ。
「あるんだな、お宝」
「そういう噂はある。でもそれは、人間が決して触れてはいけない宝で、それを得ようとしたものには必ず死が訪れる。そう言い伝えられているんだ」
「面白い。得ようじゃないの」
「やめましょうよ。安全に山を越えたらいいじゃない」
「こんなガキの脅かしに、ビビることないよ。ぼくは勇者だ。フラは黙ってついてこい」
「生きている山……人間が触れてはいけない宝……うーん、実に心をそそられるのお。ぜひこの謎を解いてみたいものじゃ」
「あれれ、おれ止めようとしたのに、逆効果だったみたい」
「じゃあな。ぼくらで見事お宝をゲットして、生きて向こう側に降りるから。おチビさんは、そうやって門番をつづけてな」
「待って。責任とって、おれも行くよ」
「はあ?」
まったく近ごろのガキは、なにを言い出すかわからない。
「小学校の遠足じゃないんですけどー。冒険の旅に子どもがいたら、足手まといでしかありまっしぇーん」
「おれ14だぜ。おれの村じゃ、結婚できる年齢なんだ。おれ、お姉さんみたいな人と結婚したいな」
「…………」
「てんてんてんじゃないよ! このマセガキって言って、ひっぱたいてやれ!」
「かわいい子ね。ぜひお供して」
「そうじゃな。なにも知らんわしらだけで行くより、地元の若者の案内があったほうが良い」
「なんだよ、フラもアドバイ爺も。さっきそこで会ったばっかりのガキを、そんな簡単にパーティーに入れちまうのかよ!」
ホーカミ、ガ、アラワレタ!
ホーカミ、ハ、ムレ、デ、オソッテキタ。
ユメオ、ガ、タオサレタ!
「そこに生えてる薬草を食べて!」
門番の知恵で、ユメオは命拾いした。
「メンメラメー」
フラ、ノ、ヨウジュツ。
「ガォー!」
ホーカミ、ニ、ヨウジュツ、ハ、キカナカッタ。
「ホーカミは水に弱いんだ!」
「聖水!」
門番の知恵で、アドバイ爺が聖水を浴びせた。
「キューン」
ホーカミ、ノ、ムレ、ヲ、タオシタ!
新鮮な肉を手に入れた!
「ありがとう、門番くん! これからもわたしたちを助けてね.。お、ね、が、い」
フラの媚びを含んだ声を聞きながら、ぼくは今に見ていろと思い、傷口にせっせと薬草をすり込んだ。
PV518
LV5
あ、レベル5か。ようやくですね。
*モンスター事典
「ホーカミ」
アンダースン&ディクスンのSF〈ホーカシリーズ〉の短編集『くたばれスネイクス!』に収録されている短編「ホーカミの群れ」より名前を拝借。
このホーカシリーズ、ほのぼのユーモアのSFシリーズとしては、代表格だと思います。読めばきっと好きになりますよー。




