貴女の顔は憶えている
これまでのあらすじと登場人物。
主人公ユウコ:実は人間ではない種族。見た目はスレンダーな超絶美少女(自称)近距離~遠距離までオールラウンダーで戦える冒険者。普段は弓による遊撃とPTの支援回復を担当する。ソロ行動中や身内PT行動時にのみ本気を出す事にしている。
ルーク♂:ユウコに助けられた少年(元は夢破れた中年男)主人公に救済されてから日々欠かさぬ鍛錬により、現在は周囲に一目置かれる優秀な盾戦士タンクとなる
少女ミーナ♀:推定5歳の元孤児で主人公の養女(義理の娘)となる。とある事がきっかけで、自身に眠る聖女の力が一部覚醒したが女神様との誓約により周囲には内緒にしている
魔猫ブルーアイ♀:主人公の眷属。とても高貴な外見と物腰だが、実は世話焼きなお姉さん気質。少女ミーナの護衛&情報収集担当(最初の街カカロッティ担当)
魔鼠モッチー♂:主人公の眷属その2。可愛い見た目とは異なる中身は武闘派の脳筋。PT行動では斥候を担当し情報収集も担当している(王都担当)
魔狼アスカ♀:眷属その3。主人公に忠誠を誓うワンコ。職は魔法使い&PTの知恵袋担当(知識は豊富だが一部言動や行動が残念)この物語の残念娘担当。
魔龍人の鴉♀&カルシファー♂:眷属その4と5。元々は真龍族の夫婦だったが、とある事件によりカルシファーが瀕死となった。
そして主人公に命を助けられた際、共に主人公の眷族と化し復活。
妻の鴉【カラス】は槍と武技、魔法も使えるアタッカー。ドラゴン形態ではメンバーを乗せて飛行が可能。異形化したカルシファーを救う為に、自身の命さえも捧げその復活の代償により自身の能力が一度は極限まで失われたが、同時に夫と共に主人公の眷属と化した結果存在としての格が上がり大幅パワーアップを果たした。
カルシファーは復活の代償として幼龍化し戦闘では戦力外になったが、周りの者たちには非常に喜ばれる事になり、以後は周囲に慣れ親しまれる結果となった。癒しペット枠担当であり、生前の記憶や能力がほぼ喪失状態であるが存在としての格はパワーアップ。眷属としての意思疎通は可能。キュイキュイ鳴く。可愛い。
枢機卿:世俗の垢に塗れた悪徳聖職者。女神教では偉い立場で、主人公PTを自身の為に都合良く利用しようと画策するが、神託によりそれを見越した教皇の手により阻まれる。
老司祭:教皇様直属のお使い人。教皇様の元教育担当の恩師であり彼女の良き理解者。
教皇:女神教の教皇様。教団で一番の権力者であり人格者。彼女の目が光っている間は教会内部の人間の腐敗化は最小限に抑えられている。ここ最近になって初めて、主人公に関連した神託を女神様から直々に頂けるようになり教皇大歓喜。また実際の対話により主人公の事も気に入り以後は協力を惜しまない事を約束する。見た目は非常に愛らしい初老の女性で、主人公が大好きだった前世のお婆ちゃん(故人)に雰囲気が似ている為に主人公からの好感度が爆上がりした結果、色々とヤバイ物(非売品)をプレゼントされ愛用する事により不老長寿状態となり、結果として女神教を良い方向に長い間導き続ける。またその功績により魂の神格化が起こり死後は女神の使途化が確定した。
「……視界が青い……これは空か。我は今空を飛んでいるのか……。そして……何処か懐かしい景色だ」
今となってはとても懐かしい故郷の景色だった。そして次々と浮かんでは消えていく様々な景色や同胞達の姿……そして一目で自分の心を奪われた彼女の眩しいくらいの笑顔。かつて過ごした懐かしく安らぎの日々が走馬灯の様に流れていく。
「そうだ……。そして謎の仮面男の手によって理性を完全に無くした我は、見るも悍ましい化け物となってしまったのだ……そして戦い……。最後は愛しい女に看取られながら死んだのだったな」
彼女を守る為に。傷付けない為に。彼女と別れ……人目の付かぬ場所で最期を迎えるつもりだった。だが気が付けば仮面の男が目の前に居て、また我の龍核を貫かれ……。そこから意識は途切れ途切れになった。
「……仮面の男が我に何かをすると、耐えがたい破壊衝動のようなものが膨らみ意識を完全に失ったのだったな。意識のある内に何とか仮面の男に一矢報いたかったが無念だ」
……そして最後は最愛の女に看取られながら死んだのだ。その時に何かを必死に訴えてられていた様な気がしたが、残念ながらもう我には何も聞こえなかったのだ。ああ……きっと彼女は泣いていたのだろう。こんな最後の姿は見せたくなかった。だから彼女を突き放して別れた筈だったのだ。だがやはり我を追いかけて来たのだな。だが余計辛い思いをさせてしまった。申し訳ない気持ちで一杯になる。彼女を幸せにしたかったのだ。ずっと自分の傍に居て欲しかった。やがては子供も作って幸せな家庭を築きたかった。
「……だが最早叶わぬ夢。彼女に看取られながら死ねただけでも本望というものか……」
「「カ……シ……戻……こいっ!」」
最後の瞬間が刻々と迫る中、知らない誰かの声が不意に聞こえた気がした。これは一体何だろうと意識を向けその声に耳を澄ましてみる。
「「っ来い……カルシファー! まだ諦めるなっ! 戻って来い!」」
【【死なないでカルシファー!】】
……この声は!? 意識を謎の声に向けた時に一緒に聞こえてくる死なないでと呼ぶ彼女の声も。
「……死に……たくはない。彼女を置いてこのまま死にたくはない!」
「「そうだ! 死ぬな! 彼女を置いて死ぬな!」」
「だが最早……我の命はすでに尽きてしまった」
「「諦めるな! 俺が何とかする! だからお前は絶対このまま死にたくないって! 彼女を置いて絶対に死にたくない。これからも彼女と幸せになりたいって! それだけを考えて意識を強く持て! 後は俺が何とかしてやる!」」
「……それが本当ならばどれだけ……良い事だろうな」
「「おい待て諦めるな! 俺が助けるって言ってるだろ? いいから強く意識を持つんだ! もう時間が無い! お前このまま死にたくないんだろう?」」
「そうだ……死にたくない。悲しむ彼女を置いては……死ねない」
「「そうだ! もっと強く! 意識を持て! 絶対に死ねない! 死にたくないって!」」
「絶対に死にたくない……彼女を置いて死ねない。もし死なずに済むのであれば他には何もいらぬ」
「「そうだ! もっと強く! 意識を強く! お前は死なない。俺が死なせない! 絶対に!」」
「我は死なぬ! 彼女の為に絶対生き残る! その為ならどんな代償でも支払う!」
「「そうだ! 死なせない! 俺が絶対に救済してやる!」」
【愛しいカルシファーの為なら全てを捧げます!】
……そして不思議な感覚が体に一気に流れ込んで来たのが分かった。それは決して不快な感覚では無い。
とても温かな……。
…………。
……。
「キュイ~!?」
「「おっ! 目を覚ましたみたいだな(ツンツン)」」
『カー君とっても可愛いですぅ~』
『確かに。これは可愛いですね!』
『ちゅっちゅー!』
『ああ……愛しい私のカルシファー! もう絶対に離さない(スリスリ)』
……どうやら自分はカルシファーって言うらしい。それ以外の事は何だかよく分からない。気が付いた時にはすでにこの者達に囲まれてしまっていた。でもどうやら相手は自分の事をよく知っているみたいで不思議。そして繋がりの様なものを感じる。
(ああ……でも……。この人だけは憶えている。自身の事も相手の名前さえ憶えていないけれど)
……それでも。
「キュイー! (愛しい貴女の顔は憶えている)」
コロナ自粛云々など色々ありましたが、今後も不定期にですが加筆修正や続編の更新を再開したいと思います!
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