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-75- 何ごともない日

 岩岸署管轄の浜波交番は今日も何ごともない日が続いていた。何ごともない日というのは交番にとっては腕の見せようがないイライラする日なのかといえば実はそうではなく、世の中が安穏あんのんと動いているのだから、実に素晴らしい日なのである。

 この日、表の公務はもう一人の巡査、帆先ほさきが受け持っていた。

「なんか、大変なことになってきましたね、船頭せんどうさん」

 昼の弁当を食べながら奥の休憩所にあるテレビをつけた若い巡査の舟漕ふなこぎは老練な船頭にポツリとつぶやいた。テレビにはテロ関係のニュースが映し出されていた。

こわい怖い…。くわばら、くわばら…」

 船頭は美味うまそうに食後の熱い茶をフゥ~フゥ~とすすりながら祈るように言った。

「この手の事件は捕らえるだけでは解決しませんからね」

「まあ、そうだな。このあたりは当分、関係ないだろうが…」

「当分ですか? ずう~~っとでしょ?」

「そうあって欲しいが、集団的自衛権だしな…」

「嫌だ、嫌だ…」

 船頭に感化されたのか、舟漕も祈るように言った。

「じゃあ、そろそろもどろうか。帆先君は昼がまだだからな…」

「はい…」

「それにしても、何ごともない日、というのは有難い…」

「♪何でもないようなことがぁ~♪ ですね?」

 舟漕が急に歌いだした。 

「おお! 若いのに古いの知っとるな。♪幸せだったと思う~♪にならず、♪幸せにぃ思う~♪時代ならいいんだが…」

 船頭も歌って返し、意味有りげに言った。


               完

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