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夢で会いましょう


「す、すいません。取り乱してしまって」


部屋に入って暫く沈黙した後、彼女はそう切り出した。

この手の仕事をしていれば『お上品』なネタには事欠かない。

真面目に反応していてはキリが無いのが現実だと思っていたが

どうやら、そういう会話にはまだ慣れていないようだった。


「いや……気にしないでくれ。こちらこそ失礼だった」


報酬を払って何も判りませんでした、では支払い損にしかならない。

結果を出してもらうなら相手に合わせる事は当然だ。


「外した方が良ければ、そうするが」

「あ、いえ。ここに居てくれた方が助かります。イメージを捕らえやすいので」

「そんなものか。では、頼む」

「はい」


彼女がベッドの上に端末を置き、そこに手をかざす。

その瞬間、明らかに部屋の空気が変わった事がわかった。

寒い、とでも言うべきだろうか。身体を風が通り抜けてゆくようだ。


「……間違いなく霊的アストラルな力が作用しています。

 今、所有者のイメージを……ッ!?」


明らかに空気が変わった。身体を通り抜けていく風が強まり、

室内だというのに横殴りの暴風雨の中にいるようだ。

そして俺の見間違いでなければ、彼女の手が弾かれ、その瞬間、火花が飛んだ。


「大丈夫か?」


彼女の手と端末の両方を心配する。こういう傷は治るのに時間がかかる。

俺の持つ治癒能力も、こういったオカルトじみた力にかかると人並みだ。


過去の記憶が蘇る。

あの小男の店で、退魔の力があるというナイフで手を切った際、

普段なら30秒とかからず傷が治るのに、関知まで1週間はかかった。

店主は本物であることが確認できて喜んでいた。俺にとっては教訓となった。

俺は、オカルト(こういうもの)にも怯えなくてはならない、と。


「強力な障壁を張られてました」

「それはよく判らないが……手のことだ。何とも無いのか?」

「えっ、はい。大丈夫……うん。火傷も無さそうです」

「ならいい。他にわかったことを教えてくれ」


そう言いながら端末の動作確認をするが、特に異常は無い。

最初こそ静電気のようなものを帯びている感触があったが、すぐ消えた。


「まず、相手は霊的アストラルな要素で囲まれた場所にいます。

 都市の中と見て間違いないでしょう。また、今まで聞いた話を考えると

 相手も私のような霊的能力を持っています。それも強力な」

「そう思う根拠は」

「先ほどの障壁を超えるのは、かなり大変なんです。あの状態で連絡するなんて

 私からすると相当な無理難題ですよ。声を電話に飛ばしただけなのも頷けます。

 夢ならいいですが、特定の人に声だけ、という制約でようやく連絡したはずです」


そこから、いかに障壁の構造が複雑で堅牢であるかの説明が始まった。

次にファイヤーウォールの構造への応用や障壁の主への考察が始まり、

かなり長くなりそうだったので強引に話を切り上げる。


「かなり難しい話で、なおかつ主観ばかり入っているが、大変なのは理解した」

「判ってません。ここからが本番なんですよ!なにせあの構造……」

「……なあ、俺が依頼人クライアントだって忘れてないか?」

「えっ……あっ……ごめんなさい。つい」


我に返って恥ずかしそうにする彼女を見て

俺はようやく料金が安い理由を理解できた。

彼女はこういう世界で商売をする事に慣れていないのだ。

外見からしても学生か、卒業間もない年齢だろう。

所々の所作が、あまりにも無防備過ぎる。


「まあいい。で、何故俺が選ばれているんだ」

「さっきから思っていたんですけど、貴方に高い素質があるからだと思います」

 受け手の方に素質があれば、その分だけ楽ですから」

「光栄だ」


とても嬉しそうに素質を語る彼女の表情と裏腹に、俺の心中は複雑だった。

実は俺は狼人間なんだ、と打ち明けたらどんな顔をするだろう。

案外、真面目に信じてくれるかもしれない。信じた瞬間に、逃げるだろうが。


「……結局のところ、俺には次の連絡を待つしかないのか?」

「いえ、会えると思います」

「どうやって?場所も判らない上に、連絡先も判らないのに」

「それを調べたんです。ただ、今のままでは連絡し辛いので……」


ぽんぽん、とベッドを叩いて、彼女はこう言った。


「夢で、会いましょう」

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