第28話 ちょっとした休憩時間
小休憩中、観客席にいたぼくは舞台に向かった。
「オレーナさん、さっきステラッチェ団長が帰ってきました」
「そうなんですか!?今はどこに!?」
「先ほどルミオさんに捕まってました」
「かかりそうな感じでした?」
「かかるんじゃないですかね」
「そうですか……」
わかりやすくがっかりしている。
毎日会っているんだしそんなに気を落とさなくても。
「オレーナさんにこの調子でお願いすると言ってました」
「本当!?そんなぁわたしなんて〜ステラッチェ団長様には足元にも及ばないのに〜」
今度は体をクネクネし始めた。
この人は、とてもわかりやすい。
オレーナさん本人は謙遜しているけど、かなりできる人だ。一番ステラッチェ団長のスタイルに近い。ステラッチェ団長ができるような魔法は大体できる。出力や精度は団長に劣るけどそれでも大抵は再現できている。
他の人は特定の、例えば水の魔法を極めていて、水だけはステラッチェ団長にも届く技術を持っている。けど、オレーナさんは魔法の種類に関係なく繰り出せる。これはかなりすごいことだ。
だからこそ、魔法の演出は団長がいない時はオレーナさんが先導している。
「はぁ。ステラッチェ団長様が空を駆けるところ見てみたかったなぁ。きっと湖畔に佇んでいた白鳥が大空に浮かぶ雲と一体になるように優雅に可憐に天翔けて行ったんでしょうね……」
ステラッチェ団長が好きすぎるのがたまにキズだ。
舞台袖にいたリーホワさんと目が合った。
「ふっ」
え!何!?鼻で笑われたぞ!
ぼくのことを笑ったんだよな。いやなんで。
相変わらず仕草ひとつひとつが妙に気品がある。ただ背筋が真っ直ぐというだけではない。歩く速度や流し目の視線などちょっとした動作の全てがバランス良い。
何言ってるんだぼく。
一方的にいじられてるだけでリーホワさんとまともに話したことはない気がする。ステラッチェ団長や他の人の話を聞いてもかなり位の高い人なんだろうな。なんでそんな人がこの団にいるだろう。この団に来て1ヶ月ほど経ったけどまだまだ知らないことばかりだ。
舞台袖の反対側にフレンもいる。どうやら台本を見ている。邪魔しないで観客席の方に戻るか。
そうそう、ティカが来てるんだった。食堂にいるんだっけ?午前の稽古が終わったら寄り道せずに向かおうかな。
バサバサと何かが飛び立った音がした。
「嬉しそうですね。」
「そうですか?」
「ええ。なにやらニヤニヤしていたり」
「え!?」
「図星ですね」
「そ、そんなことないですよソフスさん」
いつの間にかぼくの頭の上に立っていたソフスさん。いやさすがに気づいていたけども。
ソフスさんは亜人さんだ。腕は鳥のように大きな翼になっている。フクロウの亜人だと言っていた。たまに色んな人の頭の上や肩に乗っている。ソフスさんはとても軽いので重量は気にならないけど、最初はびっくりした。
最初といっても頭の上に乗られたのはこの国に着いてからぐらいだったけど。
「ふむ。何やら複雑な事情が」
「ないですよ。そろそろ再開するんじゃないですか?」
「むぅ、またの機会にしましょうか」
他人にわかるほど顔ニヤついていたのかな。それともソフスさんが鋭いだけかな。
今度はボテボテと歩く音がする。
「なになにプレンツどうかしたの〜?」
「どうもしませんよ」
「図星らしいですよ」
「なに〜ズボシ〜だと〜?ズボシってなに?」
「図星というのはですね」
つるんとした黒と白の肌模様がかなり特徴的なサッフィさん。足を揃えると魚の尾鰭のようになる。
確かシャチ?の亜人さん。目の周りは白いけど顔は真っ黒。首から下の方は白。髪の毛生えていなくて帽子をかぶっている。
話し方は結構幼いけど身体はそれなりに女性の身体だ。
「え〜!やっぱり嬉しいことあったんだ!プレンツ〜何があったの〜?ボクにも教えてよ〜」
「何にもないです!ほらそろそろ始まりますよ!じゃぼくはあっち行くで!」
ちょっと高くジャンプしてそのまま観客席の方まで滑空して逃げた。
この団に入ってから滑空技術が少し上がった。舞台上の空気に魔力がかなり満ちているのもあるけど、今までは上から下に行くことしかできなかったが、ちょっとだけ上昇もできるようになった。ぼくもそれなりに成長している。
「そんな強引に話を切り上げないでも。やはり図星ですね」
そうだソフスさんが頭に乗ったままだった……。




