表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Stellacce Twinkle  作者: 橿原るり
第二幕 リマク国編
PR
27/95

第7話 一方の野郎達

 ガルニエがリマク国に来た。今日はお休みということなのでぼく(プレンツ)とフレンとニニギさんと街に行くことになった。団長達はキエリスさんとどこかに飛んで行った。おそらく首都の中心街だろう。


 転移の魔法ならひとっ飛びかもしれないけど、こっちは徒歩だ。なのでガルニエの近く街を歩いた。

 ここだって首都は首都なのだろうけど末端にあるからそんなに賑わってない。けど、落ち着いていていい街だ。サンリスタニアとはまた違う街の風景を楽しんだ。たまに馬と羊が合体したような動物を連れて街の人が歩いている。あと結構パン屋さんを見た。


「この地は乾燥しているな。湿度はムラクモの敵だからな。ムラクモにとって良い土地だ」

「確かに乾燥してますね〜」

 謎の言葉ムラクモという言葉を気にしないフレン。

「ニニギさん、たまにムラクモムラクモって言ってますけど何ですかそれ」

「プレンツは知らなかったか。これのことだよ」


腰に巻いた劇の殺陣で使う刀を指差した。直刀で鞘に収まっている。ゴテゴテと装飾が付いている。この剣ムラクモという銘なのか。


「ニニギさんが持ったものは全部ムラクモになるんだぜ」

持ったものはムラクモになる?

「お!またリャマだ。ここはリャマばっかりだな」

「うむ。つぶらな瞳が可愛らしい。しかし気をつけよ。奴らは気に入らない人間には唾を吐く」

「え、そうなんですか。なんか臭そうですね。」

「ああ、かなり臭い」

 ニニギさんの動物小話が始まってしまった。この人は動物が好きなようで話し始めると終わらない。見るのも飼うのも食べるのも好きだと言っていた。歪んだ愛を感じる。


 ニニギさんの剣術はこの団で1番だ。他にも腕が立つ人はいるけどこの人は別格だ。アヴェラルさんはニニギさんより何倍も身体が大きい。剣術もとてもキレがあって如何にも並ぶものなしといった感じだけどニニギさんには敵わない。殺陣に関してはニニギさんがリーダーとして演技指導を行っている。

 そういえばこの人が魔法を使っているところを見たことがない。剣術だけでこの団に買われたのかもしれない。


 しかし、倉庫にムラクモは他にもいっぱい置いてあった。確かに地下倉庫はジメジメしているかもしれないけど、所詮は劇で使う小道具だ。厳重に管理されているわけでもないしそんなに湿度とかを気にするほどの剣なのだろうか。


「リャマやアルパカは牛のように反芻しない動物だ。しかし胃が3つもあってな」

 まだ話し続けている。フレンは『はえー』『そうなんですね!』『うんこの場所決まってるんですか!』と相槌が適当になってきた。

「そうそう、牛の胃といえば2人はチーズの作り方を知っているかな?」

「チーズ!ほらあそこのパン屋さん!食べる場所がありますよ!きっとチーズが乗ってるパンもありますよ!行きましょう!ニニギさん!フレン!」


 小休憩を無理矢理ねじ込んだ。この人、服装が他の団員と違うのもあってか雰囲気も全然違う。大人なんて言葉では言い表せない落ち着きようだ。例えるなら波立たない水面のよう。


 その割にはスイッチが入ると話し続けている。なかなか掴めない人だ。いつも目をつぶっているし。目を瞑っているのにリャマだかアルパカかわかっているのだろうか。ニニギさんがリャマと言っているだけで実は全然違う可能性がある。やはりあのモコモコ具合は羊。

ウマヒツジなのでは?

パンを買う時に店主の人に聞いてみた。


「あの白いモコモコした馬ってなんですか?ウマヒツジですか?」

「あれ?あれはリャマだよ」

リャマだった。疑ってすみません。



「うむ。この国もパンが美味い。麦が良いものなのだろう」

「あーサンリスタニアのパンも美味しかったですしね!」

 コーンとチーズが入ったパンが有名らしいので3人で買って食べてみた。コーンが甘くて、チーズは少し塩気がある。香ばしく焼き上がったパンの匂いを嗅ぎながらだとより美味しく感じた。

店内が落ち着いてきたところで店主のおじさんが話しかけてきた。


「君達観光かい?」

「いえ、仕事です!俺たち劇団員なんです!この先に会場があってそこでやるんです!」

フレンが元気よく返答した。

「へぇ劇か。知ってるかい?1ヶ月後にもっと街の中心で大きな祭りがあるんだよ」

「へぇ!そうなんですか!」

「その祭りの中で音楽流しながらみんなで踊るんだ。みんなチームになってどこのチームの踊りがいいかとかストーリーがいいとかやるんだよ」

「ほう、それはまさしく我らがよくやるようなものではないか」

 ぼくらの劇は踊ったりはあまりしてないけど、確かに通じるものがありそうだ。

「でもそしたらあんまりお客さん入らないかもな〜」

「確かに」

お祭りは見てみたいけど、劇をやってもお客さんが来ないのは寂しい。

「そういえばその劇なんか名前あるのかい?」

「ああ、俺たちは……」


何やら大きなものが走る音がした。

それもいくつも。なんだろう。どんどん近づいてくる。

「誰か捕まえてくれ!!!人攫いだ!!!!」

 ニニギさんが一目散に店から出た。フレンと目を合わせたぼくたちも店を出た。


 2匹の馬が馬車を引いてかなりの速さでこちらに近づいてくる。

「おい!!そこどけ!!!轢き飛ばされてえのか!!!」

 仁王立ちして馬車が近づくのを待つニニギさん。そして馬を引く人相の悪い男が叫んだ。腰に掛けていたナタのような刃物を掲げ始めた。


 ニニギさんはムラクモに手を掛けた。軽く握っている。まだ馬車とは距離がある。

「嗚呼、大丈夫だ。任せてくれ。フレン。ふわっと頼む」

 そういうとニニギさんが鞘から剣を少しだけ抜いた。あれ?なんか急に曇ってきたような。


 刃渡は1メートルほどだろうか。ここからあの馬車まではまだ30メートルはある。なのに。馬の手綱は切れて、男の持つナタは砕け散り、馬車は粉々になりながらこちらに吹っ飛んできた。崩壊していく馬車の中から5歳ほど子供達が飛んできた!!!


「ふわっとね。そぉれ!」

 フレンが両手を肩まで上げると風が起こり、子供達を包み込んだ。そしてゆっくり着地させた。


 ポツポツと雨が降り始めた。砂埃が雨により落ち着き始める。

 一体何が起こったんだ?だってまだ剣は届かないはずなのに。


「おお、よしよし。もう怖くないぞ。痛いところは無いか?」

 泣く子供達を抱き宥めるニニギさん。

「怖かったなもう大丈夫だぞみんな〜」

 遠くで先程までこちらに威勢のいい言葉を投げかけていた男は裸になり倒れていた。

「殺していない。裁くのはこの国だ。私は悪事を止めただけ」


 パン屋のおじさんが目玉が飛び出そうになりながら掠れた声でぼくたちに問いかけた。

「あんたたち、何者なんだ……?」

「俺たちはFlying Twinkle Caravan!こういうのがもっと観たいなら是非観にきてくれよな!」

 泣く子供を撫でながらフレンがそう言った。

 いつの間にか小雨が止んでいた。



 何やら風を切る音がする。辺りを見渡すと空から流れ星が楕円を描きながらこちらへ向かってきた。

 そして裸になった人攫いの元に流れ星が落ちてきた。

 流れ星は徐々にその光が剥がれていき、中からぼくより少し背の高い女の子が出てきた。凛とした表情をしている。


「あれ?ティカちゃんだ」

パン屋のおじさんが呟く。

ティカと呼ばれた女の子は人攫い男の腕と足を縛った。


 黒い髪。前髪は真ん中で分けていて長い髪を左右で三つ編みにした女の子だ。何やら独特な色使いをした服を着ている。この国の人は日に焼けた肌をしているけどこの子はもう少し日焼けしているように見えた。


 裸の男を縛り上げて放置したままニニギさんのところまで歩いてきた。

「ありがとうございます!おかげでこの子達が助かりました。見つけたところを逃げられてしまって。そしたらこの辺りに変な雲がかかっているのが見えて飛んできたらみーんな助かってるんですもの!」

「このぐらい大したことではない」

「いやいや!もう巻かれてしまったと思ったんですから!それにしても、これ何したんですか?」

 怯えた馬はどこかに消えて、子供たちが乗っていた馬車も辺りにその残骸が散らばっている。子供達の服に細かい糸がついていた。手や足、それに口元に縄で縛り付けた跡が残っていた。


「本当に大したことはしていない。いつもやっていることをしたまで。あの男を頼んでいいのかな?」

「はい!このあとアイツを警察に連れ出します。他に連れて行かれた子供たちの居場所も吐かせます」

「助かる。ではよろしく頼むお嬢さん。我々はこの地に詳しくないのでな」

気がつけば人だかりができていた。人攫いを止めたとはいえ、事が事だからあまり目立ちたくないのだろう。

「ちょっと!逃げるようにどこか行こうとしないでください!」

ニニギさんの裾を握って立ち去ろうとするニニギさんを止めている。あのティカって女の子やるな。

「是非お礼させてください!そこの赤い髪の人も!あと……そこの人も!」

 

 フレンとぼくを指差しながらティカと呼ばれた女の子はニコっと笑った。

 小雨を降らせた雲はどこかへ消えて笑顔に似合う眩しい太陽の光が彼女を照らしていた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ