第3話 煌めく夜に向けて
中間管理職4人で手を繋いでキエリスの転移の魔法で中心街まで飛んできた。
血の魔法である転移の魔法はマークした場所、視界内でキエリスが触れるもの、またはキエリスが目標とした立体範囲を入れ替える能力。
視界外も技術的には可能だけど、危ないからやらないようにしているらしい。見えないところがどうなってるかわからないからね。とはいえガルニエ内など見知った場所ならやってるみたいだけど。
うちの団が誇る可愛い可愛いキエリス副団長は団に入ってから魔力量がかなり増えたけど、転移の魔法は消費の激しいから私も手伝ってる。
血の魔法はキエリスという鍵がなれば発動できない。逆に鍵があれば背中を押してあげられる、といった具合。
平地の場合、空気が透き通っていれば視界内は大体4〜5キロほど。なので平地移動するときは4キロ程をリズム良く転移していく。キエリスがバテてきたり転移する距離が落ち始めたら休憩、といった具合で目的地付近まで進む。
リマク国は山あり丘ありな土地なのでもっと効率よく移動できた。なんでかって?高いところにいると遠くまで見えるでしょ?
「あーーー疲れたーーーー」
両腕を大きく伸ばした後に脱力しているキエリス。飛ぶ距離が長いとその分一度に消耗する魔力量も増えるから実力を着々とつけ始めているキエリス嬢でもかなりキツいようだ。
「お疲れ様キエリス。いつも助かってるよ」
「ステラッチェ団長は相変わらず涼しい顔してますね!」
嫌味みたいに聞こえてしまったかな。
「いやぁキエリス副団長様のお力に少しだけご助力しているだけですので」
嫌味確定になっちゃったな。
「まーたそんなこと言って〜結構被ってくれてるのはわかってるんですからね!」
魔法は使えば使うほど精度と身体に宿る魔力量が増えていく。キエリスの成長のために少しずつ助ける魔力量を減らしていっているのだ。
「フェリックス、キエリスとどこかで休んでて。私とルミオは行政機関の場所を探して色々手続きしてるから」
「ああ、了解したよ、団長。キエリス、お疲れ。ちょっと街を散策してカフェにでも入ろう」
「デート?」
「不可抗力だけどね」
じとーとフェリックスを舐め見るキエリス。
「全く。もっと気の使ったことが言えないのフェリックス〜。こーんなに可愛い女の子と一緒にカフェに行けるんだからもっと浮ついたりしてよ」
相変わらず誰にでもぷいぷい言わしている。
そんなキエリスをフェリックスは軽くあしらいながら。
「はいはい。キエリスとカフェだなんて心踊るよ。じゃ団長、ルミオさん、そうだな、大体3時ごろになったらあそこに見える塔の近くにいるからそこで待ち合わせをしましょう」
「ちょっと軽く流さないで!」
フェリックスはキエリスよりもずっと歳も精神年齢も大人だ。それにフェリックスはいつも癖のある演奏家達をなだめ、おだてて手綱を取るオケ隊の指揮者。面倒見の良さと今まで踏んできた人間関係の修羅場の数が違う。金髪碧眼で三十路の音楽の王子様はビジュアルに負けない精神を持つ真の大人なのだ。うんうん、フェリックスを団に迎えた過去の私、グッジョブ。
キエリスにピーピーと言われながら歩く2人を見送って近くのお店に行政機関の場所を聞いた。
街に見える家や建物は石を積み上げたものだった。ただの石ではない。レンガのように石の表面を削ったもので積み上げられているから乱雑さ、というよりは丁寧な感じに見えた。あと接着剤として土を使っているところもある。屋根は茅葺き屋根のようなものや木でできているもの、ちょっと大きい建物なんかは屋根も石でできている。
ガルニエの周りはあまり木がなくサボテンなど乾燥地帯に生えている植物が多かった。とはいえ街の中心は木も生えてるけど木材は貴重なのかもしれない。
役場はそれなりに立派でやはり石でできた建物だった。
リマク国からの公演の依頼だったので、案外すんなり手続きは終わった。
しかしながら、団員の入国手続きやこの国でのお金の換金、ガルニエをもっと中心部に移動できるか、チケットの販売を委託できるか、著名な音楽隊の検討、などなどを話し合った。
決まりきらなかった、検討事項はルミオに任せる。必要な部分だけ私が関与したり相談の場に出る、いつもの形だ。
魔法劇団だからって全てがキラキラしていないのだ。本当に大変なんだ色々……




