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炎が川の中まで追いかけて来て
「みんな・・・・・
川に飛び込んだんだよ
水の中に逃げ延びれば大丈夫だって
炎もそこまでは追って来ないって
誰もがみんなそう思って
だから私も・・・。」
「B29から・・・・・
雨みたいに降ってきた焼夷弾で
街はもうそれこそどこもかしこも火の海になって
どこに逃げても熱風が竜巻のように渦を巻いていて
生き延びる為に川に飛び込もうとしたら
そしたら関東大震災を知っている
おじいちゃんが怒鳴ったの
『駄目だ』って・・・。」
「炎って・・・・・
水の上でも燃え続けるんだよ
だから川に飛び込んだ人たちも大勢・・・。」
そう言ってその人は顔を伏せた。