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あなたは生きなさい
「おもては・・・・・
米兵でもういっぱいだ・・・」って
壕の入口まで行って見てきた人がそう言うと
壕の中はそれこそもうパニックになって
〝もう助からないから皆で自決しよう〟
という事になって・・・。
「楽に死ねるから・・・・・
手榴弾なんかよりも注射の方が楽に死ねるから」と
衛生兵だったその若い男の人がそう言って
皆の腕に針を刺してまわったんです
でも 私の番がきたとき・・・。
「あなたは生きなさい・・・・・
米兵も子どものあなたにはなにもしないから
大丈夫だからあなたは生きなさい・・・」って
やさしい笑顔でその人が私の耳元で囁いて
私の腕には針を刺さなかったんです・・・
だから今の私がこうしているのは
全部あの人のお陰です・・・。