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それこそ跡形もなく灰に
「夫は・・・・・
骨壺の中に入って
わたしの元へと帰って来ました・・・。」
「そして・・・・・
葬儀など出来る時代ではなかったけれど
それでもお悔やみを言いに来てくれた人たちが
そんな人たちが帰ってわたし一人っきりになると
軽い やたらと軽いそんな骨壺のその中から
〝カラン〟って凄く乾いたさみしげ音が
そんな音がしたんです・・・。」
「その後・・・・・
夫の入っているというその骨壺を
納骨が出来る日まで家に大事に置いておいたら
そうしたら3月10日の空襲で家ごと骨壺は焼けて
それこそ跡形もなく それこそ灰になってしまいました
なにが入っていたんでしょうね あの骨壺の中には・・・。」
その方はさみしげな薄い笑み浮かべて
僕にそんな話しをした。