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英霊なんかじゃなくていいから
「あなたの夫は・・・・・
名誉の戦死をされたのだから
そして 英霊となられたのだから
あなたも英霊の妻として恥じぬように
葬儀の際もその後も決して泣いては
涙は見せたりしてはいけません・・・
国防婦人会の方々からきつく
きつくそう言われて・・・。」
「戦争が終わるまでは・・・・・
人前で泣くことなど許されませんでした
だからあの頃は いつも・・・。」
「なんで・・・・・
英霊になんてならないで
生きて帰って来てくれなかったの・・・
わたしは一人になるといつも声を殺して
いつもいつもいつも一人で泣いていました。」
その方は誰に憚ることもなくそう言ったけど
それでも目頭をそっと押さえた・・・。