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ご先祖様は守ってくれなかった
「空襲警報が鳴り響いて・・・・・
『防空壕に早く非難しろ』と誰に言われても
『ご先祖様が守ってくれるから大丈夫』と言い張って
お仏壇の前から梃子でも一歩も動かずに
いつも一心不乱にお念仏をあげていた
そんなうちのおばあちゃんは・・・。」
「あの日の空襲で・・・・・
いつも片時も離さずに持ち歩いていた
仏教の経典とご先祖様の名前が記してある過去帳と
ある意味自分の命よりも大切にしていた
ご先祖様のお位牌と一緒に
亡くなったの・・・。」
「あの時わたし・・・・・
いくらどんなに強くお願いしたって
神様も仏様もご先祖様も戦争からは守ってくれない
だったら自分の身は自分で守るしかないんだって
わたしあの時そう自分に言い聞かせたの・・・。」
拳を握り締めてその人はそう言った。