163/215
アジュンマの話し XXXVIII
その若い兵隊さんは・・・・・
いつもアタシのところに来ても
アタシのことを一度も抱くこともなく
内地に残してきた幼なじみの彼女のことを
まるでノロケ話でもするようにして
いつもアタシに嬉しそうに
話してさ・・・。
ある日のこと・・・・・
そんな弟みたいな若い兵隊さんに
「ねぇ戦うのは怖くないの?」ってそう訊いてみたら
そしたら・・・。
「怖いよ・・・・・
ショウベンちびるくらいにいつも怖いよ
でも それでも戦わないと生き残れやしないから
俺は生きてあいつの元に帰らないといけないから・・・」
歯を強く食いしばるようにしてそんな固い信念を口にした
あの若い兵隊さんも出撃したまま戦場から戻って来なかった・・・。
そんな話しをしたアジュンマの眼は涙で潤んでいた。