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アジュンマの話し XXXVII
アジュンマが・・・・・
キムチを壺の中から取りだすのにいつも使っている
変色して少し黒ずんだそんな銀の箸を
僕がなにげに見ていたら・・・。
これはね・・・・・
華北にいたときにね
休みの日に一緒に街に行った兵隊さんが
アタシがこの銀の箸を見てたら買ってくれたの・・・
嬉しかったな 銀の箸を持つのなんて初めてだったから
朝鮮では昔から王族などの高貴な人たちは毒殺を恐れて
毒に反応して色が変わり毒消しの効果もあるとされる
銀の箸を使ってたんだよ・・・。
だから・・・・・
アタシが口にする筈だった毒を
この銀の箸が代わりに吸い取ってくれてこんなに黒ずんで・・・
その箸を贈ってくれた兵隊さんのことを想いだしたのか
笑顔でそんな話しをするアジュンマのその顔は
恋する乙女の顔をしていた・・・。