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うちの亭主は薄情者
「薄情者・・・・・
ほんとうちの亭主は薄情者だよ
だってさぁおにいちゃんちょっと聞いてよ
あたしがこんなに今でも想ってるんだからさ
幽霊になってでも戻って来てくれたって
いいじゃない ねぇ そう思わない
そう思うでしょ・・・。」
「いくら・・・・・
南方の島で死んだっていったってさぁ
そこはそれ身体があるわけじゃないんだから
魂だけなんだからさ 身軽なんだからさぁ
空を飛んで海を渡ってくればいいのに
なのにほんとにねぇ 薄情者だよ
うちの亭主はさぁ・・・。」
あれは丁度今頃の時期のこと・・・・・
その人はそんなどうしようもない愚痴話しを
ガーゼのハンカチを固く握りしめながら
僕を相手に延々と話し続けた・・・。