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扇風機の風に揺れる袖
その方の右のシャツの袖が・・・・・
首を振る扇風機の微風があたるその度毎に
ユラリユラリと揺れていたことを
僕は今でも時々思いだす・・・。
「どうしても・・・・・
どうしてこの腕を失ってしまったのか
私は未だに思いだすことが出来ないんです
野戦病院のベットの上で意識が戻ると
激痛だけを残して右腕は肩からもう
無くなっていました・・・。」
「今でも時々・・・・・
ご飯を頂こうとするその際に
無意識に右手で箸を持とうとして
そしてその右手がもう無いことに気づいて
私は一人で苦笑いをしたりするんです
右腕を失ってもう何十年も経つのに
ほんと 笑っちゃいますよね・・・。」
そう言ってその方は笑った。