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彼女は彼が迎えに来るのを今でも
その方は・・・・・
古い洋館に一人で住んでいた品のいい高齢の女性で
僕と話している間中・・・。
「彼はアメリカ人で・・・・・
彼はアメリカ空軍の大佐で
彼はすごく背が高くてハンサムで
彼はそれはそれは私にすごく優しくって
彼は今仕事の都合でアメリカに戻っているんだけれど
もう直ぐ私のことを迎えに来ることになっているの
そして私もアメリカで彼と暮らすことになるの・・・」
『彼』という言葉を終始笑みを絶やさずに
それこそ何十回も口にしていた・・・。
このあいだ・・・・・
久しぶりにあの洋館の前を通ったら
そしたらそこには今は建売が4軒建っていて
(あの女性が嬉しそうに話していたアメリカ人の彼が
迎えに来てくれたのならばいいんだけれど・・・)
そんなことを僕は思った。