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口下手な夫がはじめて
「夫は・・・・・
海軍兵学校卒の職業軍人でした
ですから一緒になったときから軍人の妻として
夫の戦死は覚悟しておりましたが
まさか・・・。」
「夫も・・・・・
当時の男性が皆そうであったように
夫婦となった私に対してさえも口数が非常に少なく
どこか自分の感情を押し殺すような
そんな そんな人でしたが・・・。」
「戦艦陸奥が爆発する前日・・・・・
そして夫が爆死する前日のこと
初めて二人して厳島にお参りをした際に
私の眼を真っ直ぐに見据えて夫が言ってくれたんです
『自分はいつまでも 君といつまでも一緒にいる』
そう 口下手な夫がそう言ってくれたんです
だから私は今でも幸せ者です」と言って
その方は笑った・・・。