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姉はオンリーさんでした
その方は・・・・・
車椅子に乗せたその高齢の女性のことを
「私の姉です」と僕に紹介してから・・・。
「戦後・・・・・
姉は〝オンリーさん〟でした・・・
働き手の男がいなかった私の家では
戦後直ぐに姉が米軍将校の日本人妻となって
病弱な母とまだ幼かった私のことを
養ってくれていたんです・・・。」
「姉は今・・・・・
認知症がかなり進行して
自分が誰なのかさえもうわからないのに
なのにオンリーさんだった頃の記憶を
時折り思いだしては泣くんですよ
そんな そんな哀しい記憶こそ
忘れてくれたらいいのに・・・。」
そう言ってその方は
涙ぐんだ。