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やさしさに飢えていたから
「あの時代には・・・・・
戦後間もないあの時代には
米兵にくっついて得意気になってた
アタシみたいな女がそれこそ
いっぱいいたんだよ・・・。」
「やさしさに・・・・・
やさしさに飢えていたから
コロッと騙されちゃうんだよね
『アイ ラブ ユー』なんて甘い愛の言葉を
耳元でささやかれたりするとさ
アタシみたいなバカな女は
それこそすぐに・・・。」
「でもねぇ・・・・・
きっと何かあったんだよ
アタシのことを迎えに来れない
そんな何かがあったんだよきっと・・・。」
胸のロケットを強く握り締めながら
その人は自分を慰めていた。