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今は誰に何を聞かれたって
その人は・・・・・
それこそそこらじゅうに聞こえるくらいの大きな声で
戦時中の暮らしを僕に話してくれた・・・。
「当時は・・・・・
ほんと息苦しかったよ
いつもヒソヒソ声で話しててさ・・・
『国防婦人会』っていうのがあったんだけど
憲兵を後ろ盾にしていつも威張ってる嫌な奴らでさ
奴らと奴らの誰だかはわからない手下連中が見張ってて
それこそどこかでいつも聞き耳を立てているんだよ
だからさ 銭湯の中でした女同士の冗談ですら
憲兵にチクられて特高に連れてかれた者を
あたしは何人も知ってるよ・・・。」
「なんだかんだといっても・・・・・
周りを気にして声を潜めることもなく
誰に何を聞かれたって命を取られるわけでもなく
自由になんでも言える今の時代はほんといい時代だよ・・・。」
そう言ってその人は声高に笑った。