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命綱の配給が途絶えてからは
「今まで・・・・・
誰にも話したことはありません
親しい人にだって 親しい人だからこそ
よけいに話せないことだってありますよね・・・。」
そう言ってその方は話し始めた。
「夫が・・・・・
終戦の二年前に戦死してからは
乳飲み子と二人で暮らしていたのですが
そんな女子どもだけの家にいろんな男たちが
さして用も無いのにことあるごとに訪ねて来ては
厭らしい眼をして私にいい寄って臭い息を吐きなが
なぁいいだろう おめえも淋しいんだろうって
耳元で囁くんです・・・。」
「もちろん・・・・・
私の方にはそんな気など
一切無いものですから拒んでいました・・・
でも 僅かでも配給があった戦中はまだしも
命綱の配給が途絶えた戦後は・・・。」