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ボルシチの中のその肉の塊は
その人とは・・・・・
精神科病院の白一色の面会室で
看護助手の立ち合いのもとで話しを伺った・・・。
「私が・・・・・
シベリアに抑留されていたときのことです
いつからかボルシチの中に脂身の無い筋張った
なんだか得体の知れない今まで食べたことのない
そんな肉の塊がゴロゴロと入るようになったんです・・・
そしてその肉を食べているところを見てロシアの奴らが
いつもなんだか我々を蔑むような薄笑いをしているんです・・・
やがてその肉の塊の正体がなんなのかわかったんです
その肉の塊が日本人の同士の死肉だってことが
ボルシチの中に肉が入るようになってから
日本人の埋葬をしていないんです・・・。」
その人がそこまで話すと・・・。
「気にしないで・・・・・
どうせまたいつもの妄想だから・・・。」
そう言ってその看護助手の方は鼻で笑った。