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生きる為には農家詣でが当たり前
「戦時中は・・・・・
農家は自分の家で食べる分以外は全て
政府に売り渡す決まりになっていたんだけれども
それでもどこの農家でも米や芋なんかを隠し持っていて
それを配給では足りない町場の人たちがこぞって
違法だってわかっていても買いに行って
飢えをしのいでいたの・・・。」
「そして戦争が終わると・・・・・
物資不足は戦時中よりも更に酷くなって
配給量だけじゃとてもじゃないけど生きてゆけないし
配給が遅れる『遅配』とか配給が取り消される『欠配』が
それこそ頻繁に続くようになって・・・。」
「だから戦後しばらくは・・・・・
生きる為には農家詣でが当たり前に成って
食糧と物々交換してもらう為に私たちが持ち込んだ晴れ着を
農家の女たちが似合いもしないのに普段着なんかにしてて
こっちが破れてつぎはぎだらけのモンペなのに・・・。」
その人は憎々しげにそう言い放った。