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この苗字は自分でつけました
三つぐらいのときに・・・・・
中国残留日本人孤児となったその女性は
自分の苗字も名前も誕生日もそして日本語も
なにも覚えていなくて・・・。
カタコトの日本語で・・・・・
「この にほんのみょうじは じぶんでつけました
そして たんじょうびは にほんにきたひにしました」
パサついてほつれた長い前髪をかきあげながら
そんなことを話してくれたあの女性のことを
僕は今でも時折り思いだして
そして・・・。
逢えたのだろうか・・・・・
ずっと探していた親族には逢えたのだろうか・・・
日中共同調査により日本人孤児と確認されたというだけで
なに一つ自分のことを証明する物など一切無くても
それでも逢いたいと強く願うその思いが通じて
神様は奇跡を起こしてくれたのだろうか・・・
そのことが今でも気になる・・・。