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アジュンマの話し XXVI
死ぬことを・・・・・
幾ら覚悟しているからとはいっても
それでも拭い切れない死への恐怖心を
軍隊の中にあって唯一口にできる場所が
それがある意味で慰安所だったから・・・。
「怖くて・・・・・
怖くて怖くて怖くて
どうしようもねえんだよ・・・
いつ前線に行けって言われるか
いつ死んでこいって命令されるのか
どうしようもねえくらいにもう怖くってよ
情けねえよなぁ 見てくれよこの手を
震えが止まんねえんだ・・・。」
慰安所に来て・・・・・
アタシの身体に縋りつくようにして
ブルブル震えながら嗚咽を漏らす兵隊さんが
そんな兵隊さんが何十人もいたんだよと言って
アジュンマはなんとも深い溜息を吐いた・・・。