108/215
水羊羹が食べたいと言って
「あいつとは・・・・・
戦地に配属になってから
ずっと一緒の隊で行動を共にしていた
気の合う戦友でした・・・。」
「そんなあいつが・・・・・
酷く暑い戦場で機関銃で腹を撃たれて
千人針のチョッキの赤い玉結びの糸よりも
よっぽど赤い血を腹からドクドク流しながら
『水羊羹が食べたい』と最期にそう言って
息を引き取ったんです・・・。」
「だから・・・・・
日本に戻って来れてから私は
あの酷く暑いあの戦場で死んで逝った
少しでもあいつの供養になればとそう思って
うちの仏壇に水羊羹を欠かしたことはありません・・・
でも どうしても私は未だに水羊羹だけは
どうしても食べる気がしないんです・・・。」
そう言ってその方はふっと笑った。