第8章 5話
街の人々がざわめいている。
それはそうだろう。
伝説の勇者とやらが動く気配が無いからだ。
もしかして、見捨てられたのか?
そう呟く奴もいる。
それを町長が必至に否定している。
ただ、準備に時間がかかるだけだと。
どうだか。
「賭けてもいい。洞窟には行かないな」
こういう時、自己保身の為に見捨てる奴なんて捨てるほど見てきた。
その辺りが俺が不良になった原因ともいえるが。
「この近くに洞窟があるって言ってたよね」
うん?
「あぁ、そう言っていたが?」
何を林動は聞いてるんだ?
そんな事、どうでもいいはずだが。
「よし。じゃあ行こう」
え?
「行くって?まさか洞窟へ金の卵を取る為に!?」
「そうよ」
当たり前のように言う。
おいおい。
「まさか、偽物の為に行くってんじゃあねぇだろうな!?」
「そんな訳ないじゃない」
へ?
「それじゃあ」
一体何のために?
「その為に人質にされた人々の為よ」
確かに。
この街の人たちには何の罪もない。
それは確かだが。
「あいつらに無理やりにでも行かせりゃいいのに」
「それが出来たら苦労は無いけどね」
林動の言うとおりだ。
しかし。
「助けた後、自分が本物だって言うのか?」
その証明を明かす時が来たとでも?
「別に。まだこの世界を救って無いのに救世主だなんて言う資格無いよ」
やれやれ。
単なる自己満足って事か。
林動みたいのは、初めて見るタイプだ。
これだけの事をされても、見捨てるって事はしない。
こんなのがまだいるとはな。
もし、こういうタイプが昔から俺の側にいたのなら。
また違った人生になっていたかもな。
いや。
まだ遅くは無いかもしれない。




