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第92話 最終話

~それから~


 その日プラネタリア王国の城内は朝から(あわただ)しかった。


「姫様!今日は晴れの日なので、お淑やかにしてください!」

「うふふ、だって、今日は私が主役なんでしょ?今日はー私のー8歳のお誕生日ですもの♪」

「そうでございますよ!皆さんがお祝いに来てくださいますから、レディらしく振舞ってください」

「そんなの無理ー♪身体がウキウキして止まらないんだもーん♪」

「あっ!姫様!!前を・・・!」

「きゃぁ!!」

「おっと。どうした、リトルプリンセス?」

「お父ちゃま!!えへへ、今日は私のお誕生日なのよ☆嬉しくってじっとしてられないの」

「ははは、そうか。お転婆なトコはお母さんソックリだな」


 小さな姫君は立派なマントを羽織った威風堂々とした黒髪の若き王とぶつかりそうになった後に、ひょいっと抱き上げられ、きゃっきゃっとはしゃいでいる。


「コホン。聞き捨てならない台詞を聞いてしまったわ」

「うわっ!やべぇ!聞かれちまったか!逃げろー、リラ!」

「わー!オコリンボオニが来たわー!」


 リラと呼ばれた小さな姫君は父王と一緒に廊下を駆け出した。


「ちょっと!!あーぁ。今日はフェリクス君が来るのになぁー。フェリクス君は大人しい子が好きって言ってたなぁー」

「えっ!うそぉ!リラはいい子よ!悪い子はお父ちゃまよ?」

「あっ!リラ、裏切り者!」

「はいはい、だから大人しくプリンセスらしくしてね、髪の毛がボサボサじゃないの。結ってあげるからこっち来なさい」

「はーい」


 母親譲りのふわふわの癖っ毛でラベンダー色のリラの髪の毛を慣れた手つきでクシでといて結っていく様を感慨深く眺めている二人のベテラン傍仕えの姿があった。


「あのジゼル様も立派な母親になられて・・・」

「ボニーさんだってもう6歳になるお子さんいらっしゃるじゃないですか」

「ユミルもようやく来年お嫁に行けるものね」

「本当にあっという間でしたねぇ・・・。あ、馬車の音がしましたね。お嬢さ・・・じゃなかった王妃様、姫様、アンジュ様が見えられたみたいですよ」

「わかったわ。ほらリラも一緒にお迎えしましょう」


 ・・・そうなのだ。あれから私はプレアデスと愛を育んでこうして二人の愛の結晶、リラを産んだのだ。

 乙女ゲームとBLに夢中だった私が国王の妻となる日が来るなんて前世の私に想像出来たかしら?


 リラの手を引いてプレアデスと共に城の入り口までアンジュを迎えに向かった。


「ジゼル、お久しぶりです。リラ様、お誕生日おめでとうございます。フェリクス、リラ様におめでとうって言えるかな?」

「リラ様、えっと、お誕生日おめでとうございます」

「あ、ありがとう、フェリクス」

「きゃぁぁぁ!可愛い!天使が天使を産んだのね!」

「・・・お久しぶりです、プレアデス陛下、ジゼル様。リラ様」

「久しぶり、フェルナンド!皆元気そうで何よりね」


 アンジェが愛情を込めて育てた種は、半年後に花が咲きそしてその花が散った後に実をつけた。

 その実は一晩で大きく育ち、なんと中からフェルナンドが出てきたという、実に桃太郎もビックリな展開であった。

 

 フェルナンドは種から育てられている間にアンジュから与えられた愛情をちゃんと記憶しており、後日体裁を整えてからアンジュに交際を申し込んだ。

 アンジュはそれを受け入れ、やがて婚約・結婚して5年前にフェリクス君を出産した。


 フェリクス君はアンジュとフェルナンドが本当の愛を手に入れたという証なのだ。本当に天使が天使を産んだと言っても過言ではないくらい可愛らしい花の様な男の子なのだ。

 そして、私の娘リアはそんな3歳年下のフェリクス君にメロメロである。


「ジゼル様、シャルドン夫妻がお見えになりました」

「王妃様、ルークス夫妻もお見えになられましたよ」

「まぁ、丁度いいタイミングね」

「ジゼルー!元気だった?久しぶりね」

「アマルシスも今来たのか!ジゼル、来たよ」

「アマルシス、アンジェロいらっしゃい。カミーユ様もルシアン様もわざわざありがとうございます」


 私が隣国のシュテルン王家に嫁いでからは皆とは 本当に時々しか会えなくなってしまったが、こうして何かのイベントは必ず参加してくれるのだ。


「アシュレイ君もいらっしゃい。楽しんでいってね」

「はい、王妃様。今日はお招き頂きましてありがとうございます。リラ様、本日はおめでとうございます。素晴らしい1年になります様に心よりお祈り申し上げます」

「ありがとう・・・、アシュレイ様・・・」


 この、利発そうなお子さんはアマルシスとカミーユ様の息子のアシュレイ君で、もう10歳になる。アシュレイ君は物腰が柔らかく、カミーユ様譲りの女性に対しての絶妙な会話スキルで既に同世代の女の子達は愚かそのお母様方までもを虜にしているそうだ。

 そんな女の子達のアイドル、アシュレイ君だが今の所リラどころか全く女の子に興味が無さそうなので将来が楽しみだ。絶対ますます美少年に育つだろうし、ドュフフ・・・。いけない、ヨダレが・・・。


 リラも久しぶりにアシュレイ君に会ったが、ちゃんとレディとして扱ってくれたのでときめいているみたい。

 思考が私に良く似ているので、あの顔はきっと「2人の殿方の間で揺れる罪な私、私の為に争わないで」とか思ってるんだろうなぁ。

 そして年頃になってから勘違いだったという現実に気付く、と。我が子ながら将来起こりそうな事が今から手に取るようにわかるわ・・・。


 ともあれ、リラは今日のパーティーの主役である。国をあげての盛大なパーティーなのだ。今日ばかりは私もあまりガミガミ叱らない様にしなくては。


 今日、アルド様は奥様が産後の肥立ちが悪いとの事で欠席。アルド様は意外にも気の強い姉さん女房を(めと)って、押され気味になりつつも幸せそうである。エリク様も今をときめく売れっ子芸術家となり、海外での個展の為欠席・・・大人になった私達はなかなか全員集まる事が出来ない。


 あ、そうそう。なんとスティードはお父さんのパン屋を継がず、この城のお抱えパン職人となり、住み込みで毎日焼き立てパンを提供してくれている。そして何を隠そうスティードは来年結婚するというユミルの結婚相手である。人の縁はどこに繋がっているかわからないものね。



 こうして皆思い思いに幸せな日々を過ごしているのである。そしてー


「コホン。今日はリラの誕生日に加え、もう一つめでたい話があるんだ」


 プレアデスが皆に向かって仰々しく口を開いた。


「俺のカミさんの腹の中に新しい家族が居るんだ」


 プレアデスの発言を聞いた皆が驚き喜んでくれ、口々にお祝いの言葉をくれた。リラを産んでから実に8年。歳の差が開いてしまったが、皆で協力して子育てをしたいと思う。


「ふふ、アンジェロのとこももうすぐ産まれるのよね?うちの子と同い年になるわ。楽しみね」

「そ、そうなのか?それは楽しみだ・・・」


 アンジェロは大きなお腹をさすりながらルシアン様と顔を見合わせて幸せそうに笑った。


「あ、あの、私も今お腹に・・・」

「実はうちもなんだよね、ねー。アマルシス」

「ええ。4ヶ月に入ったとこよ」

「ちょっ、凄くない?二人ともおめでとう!うわぁぁぁ!これから出産ラッシュね。私達のこどもがまた同級生になるのね!!」


 アンジュがおずおずと言い出したら、カミーユ様とアマルシスも続いて発表したのだ。私は素直に驚きと感想を述べた。


「もー!今日は私が主役なのにー!!」

「リラ様、僕達はあっちで遊びましょう。母様達今日皆に会えるのを本当に楽しみにしていたので。さぁ、フェリクス君も一緒に遊ぼう?」

「あ、アシュレイ様・・・!なんて優しいのかしら・・・。フェリクス君、行きましょ?」

「う、うん」


 アシュレイ君がリラとフェリクス君を連れて、こども部屋に向かって行った。その後をボニーが追い、付いていくまでを私達は暖かい目で見守っていた。


 

 アドレ・アン・アンジュ。それはゲームの中の世界の様でいて全く違う別の世界であった。今思い返せばこの世界は私達に愛とはなんぞや?って事を教えてくれたのかもしれない。


 リラがもう少し大きくなったら、私が・・・いえ、私達が体験した少し不思議な話をしようと思う。


 

 それまでもう少しだけ、あと、少しだけ名残惜しく私達の心の中に大事にしまっておこう。

ここまでお読みくださいまして、ありがとうございましたm(_ _)m


 これにて完結となります(・ω・、)ホロリ

お付き合いくださいまして本当にありがとうございました。


 また、次回作でお会いしましょう゜*.。.*゜*.。.*゜*.。.*゜*.。.*゜


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