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第61話

 何とアマルシスはライバルキャラの絵を描いてくれていた。しかもカラーだ。くっ・・・。私のライバルの絵とはいえ、カシス先生の生原画っ・・・!!ふつくしひ(美しい)・・・!

 っていうか、この少女は!私は描かれた少女を見て衝撃を受けた。


「ちょっと!これアンジュじゃない?あれ?でもこっちのが少しキツい顔してる・・・?」


 金色のストレートの髪に青い瞳のその少女は目が少しつり目気味なのを除けばアンジュそのものであった。え・・・?どういう事?アマルシスはライバルはアンジュではないと言っていたけども。


「その子はアンジェロ。アンジュの双子の姉よ」

「えっ!?双子・・・?アンジュが双子?」

「えぇ。だから本来ならばプレアデスをめぐって、アンジュとアンジェロの姉妹対決になるのだけどね。サポキャラのアナタがプレアデスルートを進んだ場合はどうなるかはわからないから、彼女がプレアデスに依存してアナタと対立するのか、アンジュの想い人に依存してアンジュと対立するのか・・・は何とも言えない所ね」


 ・・・アンジュと血の繋がった家族が出てくるなんて!アンジュの出生の秘密がプレアデスルートで解き明かされるのね。え、じゃぁアンジュがプレアデスと結ばれるエンディングがトゥルーエンドって事?うっそ、これは胸熱!さすがアドアン!全キャラ攻略まで飽きずにプレイ出来る粋な演出ね・・・・・・。


 チックショウ!!!


 トゥルーエンドも見てない癖に、何がサポキャラか!死ねばいいのに!ってもう1回死んでたわ。てか、そんな重要なシナリオをやらずして死んだなんて、私、悔しすぎて死んでも死にきれないわ!!(泣)


「ジゼル、気持ちはわかるけど落ち着いて?全部口に出てるわよ」

「う・・・。だって、全てを攻略していない私はサポキャラを名乗る資格が無いのにも関わらずドヤ顔ででアンジュにアドバイスしようとしてたのよ?」


 アマルシスはたぎる私の肩をポンと叩いて落ち着かせ、こう私に言った。


「アナタは身を(もっ)てアドアンを楽しめばいいのよ」

「へ?身を・・・以て・・・?」

「そうよ。せっかくラスボスのプレアデスとのフラグが立ってるんだから、この世界に生まれ落ちた今こそ、前世でプレイ出来なかったシナリオを回収すべく、アドアンを疑似体験するべきよ」

「そうか!アマルシス頭いいわね!!そっかぁ。体験型アドアンかぁ・・・」


 てか、ラスボスて。そりゃぁ最後に攻略するキャラだけども。あぁ、ある意味で俺様魔王みたいな人だからあながち間違ってはいないか。しかし、私の人生なのに卒業まではやはりシナリオをなぞっていくのだろうか?まぁ、それはそれで楽しそうだからいいんだけどね。


「あぁ、そうなるとライバルキャラについて話すのはネタバレになるから辞めておいた方がいいかしら?」


 アマルシスが小首を傾げて呟いた。


「いや、ネタバレ上等よ!お願いします!教えてください〜!気になって気になって夜も眠れなくなる〜!」

「ふふ。じゃぁサラッとだけ。アンジュの生家ヴァルスティン子爵家では女の子の双子が産まれると先祖の代から、家族の誰かに必ず大きな不幸が起こっていた為、女の子の双子は忌み嫌われているの。なのに今の代に女の子の双子が産まれてしまった。で、両親は最初に産まれた方を残し、後から産まれた方を教会の前に置いてきた。この子がアンジュよ」

「え、ちょっと待って。アンジュが後から産まれたのなら、アンジュがお姉ちゃんじゃないの?」

「この時代では先に生まれた方がお姉ちゃんなのよ」

「へぇ〜。何十年も前の日本みたいね」


 アンジュの産まれた家は、貴族だったんだね。アンジュはこの事実を知った時、肉親に会いたいと思うかしら・・・。私は、アンジュの出生の秘密を本人よりも先に知ってしまって何とも言えない気持ちになってしまった。


「従来のシナリオ通りなら、アンジュとアンジェロが初めて出会うのはプレアデスのお母様に招かれたお茶会の時ね」

「えっ!私も夏にお招き頂いているわ。まさかその時に・・・?」

「その可能性が濃厚ね。んー、後は彼女がアナタとどうしてライバルになるか?よね。アンジュがプレアデスルートを進んだ場合だけに当てはまる事柄だからアナタには当てはまらないし・・・。でも」

「でも?(ゴクリッ)」

「アンジュの親友であり、サポキャラという垣根を越えたアナタが主人公代理として参入した事により、既にプレアデスルートの主人公が“ジゼル”でエントリーされた以上、もしかしたらプレアデスとは全く関係のない所で、アンジュ&ジゼル対アンジェラっていう対立が生じるかもしれない」

「既に私がお茶会に招かれてる以上、私とアンジェロが出会ってしまうのは不可避よね」

「まぁ、良くも悪くも今後のジゼル次第で内容も結末も変わるかもしれないわね」


 アマルシスはそこまで言うと、すっかり冷めてしまった紅茶を一気に飲み干した。

 私がプレアデスと一緒の道を歩む限り、アンジュがアンジェロと出会う事になるかもしれない。それは良い事なのか、悪い事なのか。私がお茶会を欠席しプレアデスと距離を置き、今後アンジュがプレアデスを好きにならなければその可能性は低くなる。・・・やっぱりサポキャラなのに主人公を差し置いて攻略対象者に恋をしてしまった事は間違いだったのかもしれない。でも、私は・・・。

 

「ジゼル、なんか変な事考えてない?そもそもだけど、偶然にも前世が日本人だったアナタ達が出逢って恋に落ちるって事、本当に凄い事だと思うわ。しかも命日が一緒とか(笑)それに、アンジュとアンジェロだって衝突はするけどそんなに悪い事ばかりじゃないんだから」

「う・・・。アンジュが嫌な思いをしたり、悲しい思いとかしたりするのはヤだなぁって思って」

「アナタがプレアデスルートを選ばなかったとしても、どこかで二人は出会ってしまうかもしれないからね?だってアンジェロは自分とアンジュが双子の姉妹だって事を知っているんだから」

「えっ!?そうなの?」

「えぇ。向こうからアンジュに接触しようと思えば接触出来るのよ。だからアナタはアンジュの為にプレアデスを諦めよう、とかつまらない事を考えないで、プレアデスと一緒に幸せになる為にしなきゃいけない事を考えなさいよ」

「アマルシス・・・。うん。ありがとう。やっぱりアマルシスに相談して良かったぁ!ふぅ。良くも悪くも夏以降に何かが起こる!・・・かもしれないって事ね」


 私はアマルシスに、アナタは自分の思う通りにやればいいのだと、背中を押された気がした。出会って間もないけど私と同じ前世が日本人のアマルシス。アマルシスは私にとって唯一日本の話もアドアンの話も出来る唯一の存在である。だから、私の考えている事もなんとなくわかるんだそうだ。ありがたい。


 私、プレアデスの事諦めなくていいんだよね?プレアデスの事、好きなままでいいんだよね?


「そうね。夏と言えば夏コミ・・・。もうあのコミケの独特な熱気と雰囲気を感じる事が出来ないのが残念だけど、あの気持ちを忘れない様に私は絵を、BLをを書き続けるわ!!」

「その意気よ、アマルシス!私に手伝える事ならなんでも言って頂戴!ベタ塗りとか消しゴムかけとかなら私にも出来るから!」

「ありがとう、ジゼル!そうね、締切日を決めて日々マンネリにならない様に適度に修羅場を体験して自分を追いたてれば、いい作品(もの)が出来そうな気がするわ!」


 おっとぉ。アマルシスはストイックに自分を追い込んで作品を生み出すタイプだったか。アマルシスの目にメラメラと闘志を燃やす炎が灯った・・・様な気がする。ならば、私はアマルシスが身体を壊さない様にバックアップせねば。コミケの話から話が逸れて、最早ライバルキャラの事をすっかり忘れて二人でめくるめく妄想話に花を咲かせてこの日の作戦会議は終了した。


 明日、私はこのアンジュに関わる重大な秘密をうっかりと本人にバラす事が無い様に願うばかりである。

ここまでお読みくださいまして、ありがとうございました┏○ ペコリ

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